株式投資の損益通算とは?確定申告方法をわかりやすく解説
更新日:2024年11月08日

損益通算をすれば、株式投資における税金を節税できる可能性があります。この記事では損益通算の基本事項および、損益通算で確定申告が必要なケースと確定申告の流れ、損益通算の注意点を解説します。株式投資による資産運用の資金効率を上げたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
損益通算とは?
株式投資で獲得した利益は課税の対象ですが、損益通算をすれば税額を軽減できる可能性があります。節税を実現するには、損益通算の仕組みや確定申告の方法を押さえておくことが重要です。
ここではまず、損益通算の概要と損益通算できる金融商品の組み合わせを確認します。
年間の利益と損失を合算すること
損益通算とは、1年間に発生した利益から損失を差し引き課税所得を減らすことで、所得税の節税ができる制度です。株式投資では、売却益や配当金に20%(2037年までは復興特別所得税が加算されるため20.315%)の税金が課されますが、損益通算することで売却益と売却損が相殺され税額を軽減できます。
たとえば1年間の株式投資で、10万円の利益と4万円の売却損が発生したとしましょう。損益通算をしないときの税額は、2万円(10万円×20%)です。損益通算をすると、税額は1万2,000円((10万円-4万円)×20%)に減ります。
参考)国税庁|No.2250 損益通算
参考)国税庁|株式・配当・利子と税
参考)国税庁|個人の方に係る復興特別所得税のあらまし
株式と損益通算できる金融商品は?
株式投資で発生した損益は、株式投資以外の金融商品の取引で発生した損益とも通算できます。しかし、すべての金融商品で損益通算ができるわけではありません。損益通算できる金融商品の区分けは、以下のとおりです。
| 株式・投資信託・債券 | 先物・オプション・FX |
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株式と損益通算できるのは、投資信託および債券のみです。先物およびオプション、FXで発生した損益は、株式や投資信託、債券への投資で発生した損益とは通算できないことは押さえておきましょう。
損益通算の方法は口座によって異なる
株式を取引する口座には、以下の3つの種類があります。
- 特定口座(源泉徴収あり)
- 特定口座(源泉徴収なし)
- 一般口座
- NISA口座
損益通算の方法は、取引する口座の種類によって異なります。ここではそれぞれの口座の特徴と、損益通算の方法を見ていきましょう。
特定口座(源泉徴収あり)
特定口座(源泉徴収あり)の特徴は、以下のとおりです。
| 項目 | 詳細 |
| 売却益にかかる税金 | 源泉徴収される |
| 配当金や分配金にかかる税金 | 源泉徴収される |
| 同一口座内の損益通算 | 自動で行われる |
| 他口座間での損益通算 | 確定申告が必要 |
| 年間取引報告書 | 発行される |
特定口座(源泉徴収あり)は口座内で発生したすべての利益が源泉徴収されるだけでなく、同一口座内の損益が自動的に通算されます。そのため、納税や確定申告の手間を抑えた資産運用が可能です。
特定口座(源泉徴収なし)
特定口座(源泉徴収なし)の特徴は、以下のとおりです。
| 項目 | 詳細 |
| 売却益にかかる税金 | 源泉徴収されない |
| 配当金や分配金にかかる税金 | 源泉徴収される |
| 同一口座内の損益通算 | 確定申告が必要 |
| 他口座間での損益通算 | 確定申告が必要 |
| 年間取引報告書 | 発行される |
特定口座(源泉徴収なし)で取引している場合、損益通算をするには確定申告が必要です。確定申告の際は年間の取引量や取引額をまとめる必要がありますが、特定口座(源泉徴収なし)では金融機関から「年間取引報告書」が発行されるため、手間を抑えた確定申告ができるでしょう。
一般口座
一般口座の特徴は、以下のとおりです。
| 項目 | 詳細 |
| 売却益にかかる税金 | 源泉徴収されない |
| 配当金や分配金にかかる税金 | 源泉徴収される |
| 同一口座内の損益通算 | 確定申告が必要 |
| 他口座間での損益通算 | 確定申告が必要 |
| 年間取引報告書 | 発行されない |
一般口座で取引をしている場合も、損益通算をするには確定申告が必要です。特定口座と一般口座の大きな違いには、年間取引報告書が発行されない点が挙げられます。
一般口座では年間取引報告書を受け取れないため、自分で取引内容をまとめて計算し申告する必要があります。確定申告の手間や負担が大きいため、一般口座で取引をする方は多くありません。
NISA口座
NISAとは、2014年からスタートした少額投資非課税制度です。NISA口座の取引で得た分配金および配当金、売却益にはもともと税金が課せられません。NISA口座で発生した損失も税務上はないものとされるため、損益通算は不可です。
NISA口座内での取引はもちろん、NISA口座で発生した損失と特定口座や一般口座で得た利益の損益通算もできないことは覚えておきましょう。
損益通算で確定申告が必要な3つのケース
先述のとおり1つの特定口座(源泉徴収あり)内で発生した損益は、確定申告をしなくても自動的に損益通算されます。しかし口座の種類や取引状況等によっては、損益通算にかかる確定申告が必要です。ここでは、損益通算において確定申告をするべき3つのケースを解説します。
1.特定口座(源泉徴収あり)以外の口座で損益通算をする
特定口座(源泉徴収あり)以外の口座で損益通算をするには、同一口座内の取引だとしても確定申告が必要です。そのため投資にかける時間があまりない方や、確定申告の手間や負担をできるだけ抑えたい方は、特定口座(源泉徴収あり)を選びましょう。
2.複数の口座間で損益通算する
複数口座間で損益通算するときは、口座の種類に関わらず確定申告をしなければなりません。たとえば、A証券会社の特定口座(源泉徴収あり)で得た30万円の利益と、B証券会社の特定口座(源泉徴収あり)で発生した10万円の損失を損益通算するには、確定申告が必要です。
複数の口座の取引を損益通算するには、それぞれの年間取引内容をまとめて計算する必要があります。口座数が多くなれば、取引をまとめるだけでも手間がかかります。確定申告の手間を少しでも軽減するには、年間取引報告書が発行される特定口座を選ぶとよいでしょう。
3.損失を翌年以降に繰り越す
その年の損益通算をしても使いきれなかった損失があるときは、確定申告により損失を翌年以降に繰り越せます。これを、繰越控除といいます。
たとえば、ある年の株式投資から得た利益が50万円で、発生した損失が70万円だったとしましょう。この場合、損益通算により利益を相殺しても、20万円(70万円-50万円)分の損失が残ります。この20万円を翌年以降に繰り越せる制度が、繰越控除です。
繰越控除をするには、確定申告が必要です。繰越控除は損失が発生した年の翌年以降3年にわたり可能ですが、そのためには毎年確定申告をしなければなりません。特定口座(源泉徴収あり)で取引をしている場合やその年に利益がでなかったときなどは、繰越控除の確定申告を忘れがちです。損失を無駄なく活用し節税するためには、忘れずに確定申告をすることが重要です。
参考)国税庁|No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除
損益通算で確定申告をする流れ
所得税などの確定申告および納税期間は、利益があった翌年の2月16日~3月15日です。この期間を過ぎると延滞税や重加算税といったペナルティが発生する可能性があるため、受付期間がスタートしたら速やかに申告手続きをすることが重要です。
ここでは、損益通算で確定申告をする流れを解説します。手続きのポイントをあらかじめ確認し、スムーズな確定申告を目指しましょう。
1.必要書類を集める
確定申告をスタートするにあたっては、まずは以下の必要書類を集めましょう。
- 源泉徴収票
- 1年間の取引内容と損益が計算できるもの
- 個人番号および本人確認書類
給与や退職金、年金などの収入がある方は源泉徴収票を準備します。併せて、年間取引報告書など、株式やその他金融商品の取引内容や損益がわかるものを用意してください。年間取引報告書がない方は、事前に取引を計算しておくとスムーズに申告手続きを進められます。
個人番号および本人確認書類は、以下のいずれかの組み合わせで揃えましょう。
| 番号確認書類 | 本人確認書類 |
| マイナンバーカード | 不要 |
| 通知カード | 以下のうちいずれか1つを用意
|
| マイナンバー記載の住民票の写し または 住民票記載事項証明書 |
なお、特定口座年間取引報告書および上場株式配当等の支払通知書の添付は不要です。確定申告書の作成資料として使用できれば十分です。
2.「確定申告書等作成コーナー」にアクセス
書類が揃ったら、確定申告書の作成をします。申告書の作成には、以下の2つの方法があります。
- 確定申告書類に手書き
- 国税庁ホームページ内の確定申告書等作成コーナーで作成
確定申告書等作成コーナーは時間や場所を選ばずパソコン上で申告できるほか、税額の計算を自動的に行ってくれるため便利です。確定申告書等作成コーナーにアクセスしたら、まずは申告に必要な基本事項を入力しましょう。
3.必要事項を入力し送付する
基本事項の入力が完了したら、年間取引報告書の内容をもとに必要事項を入力します。損失の繰越がある場合は、ここで併せて入力してください。
その後、画面の案内に従って給与所得や公的年金の所得額などを入力し、計算結果確認画面で入力漏れをチェックしたら書類の作成は終了です。
作成した申告書類はe-Taxによるオンライン提出か、印刷した書類を郵送または窓口で提出します。オンライン提出はインターネット上で完結するため手続きの手間を抑えられますが、e-Taxの利用には事前に登録が必要なことは押さえておきましょう。
損益通算でどのくらい節税できる?活用例を3つ紹介
年間の取引で利益と損失が発生した場合、損益通算をしたときとしないときでは、どのくらい税額に差が出るでしょう。ここでは、損益通算による節税効果について、3つの具体例を紹介します。
例1:株式投資で発生した譲渡損失と投資信託の譲渡益を損益通算する
具体例の1つめは、株式投資で発生した譲渡損失と投資信託の譲渡益を損益通算するケースです。
仮に株式投資で50万円の損失、投資信託で30万円の売却益が発生したとしましょう。損益通算をしなければ、6万円(30万円×20%)の税金が課せられます。一方の損益通算をすると、30万円の売却益が損失と相殺されるため、納税額はゼロになります。
例2:口座Aで発生した譲渡損失と口座Bで得た配当金を損益通算する
具体例の2つめは口座Aで発生した譲渡損失と、口座Bで得た配当金を損益通算するケースです。
口座Aで30万円の売却損が発生する一方で、口座Bでは5万円の配当金の受け取りがあったとしましょう。損益通算をしなければ1万円(5万円×20%)の税金が課せられますが、損益通算をすれば5万円の配当金が損失と相殺されるため税金はかかりません。
例3:本年度の利益と2年前の損失を損益通算する
具体例の3つめは、本年度の利益と2年前の損失を損益通算するケースです。
本年度の株式投資で、100万円の利益が出たとします。損益通算をしない場合の税額は、20万円です。ここで、2年前から繰越控除している損失が20万円あったとしましょう。100万円の利益と20万円の損失を損益通算すると、税額は16万円((100万円-20万円)×20%)に減額されます。
なお、繰越控除による損失と損益通算をするには、口座の種類に関わらず確定申告が必要です。特定口座(源泉徴収あり)で取引している方も確定申告が必要なため、申告期間内に忘れずに手続きをしてください。
損益通算をする場合の注意点
最後に、損益通算をする場合に注意するべき2つの点を解説します。
配偶者控除や扶養控除が受けられなくなる可能性がある
確定申告により損益通算をすると、利益の額によっては配偶者控除や扶養控除が受けられなくなる可能性があります。
配偶者控除を受けている方の場合、控除対象者の年間所得が48万円を超えると控除を外れなければなりません。特定口座(源泉徴収あり)における源泉徴収による納税は扶養の判定に影響しませんが、確定申告により損益通算をすると所得があると判断され、所得額によっては扶養を外れてしまうのです。
確定申告により控除を外れたときは、世帯としての税負担が増える恐れがあることは知っておきましょう。
参考)国税庁|No.1190 配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか
社会保険料が上がる可能性がある
確定申告による損益通算をすると、社会保険料が上がる可能性もあります。国民健康保険料や介護保険料といった社会保険料は、所得によって保険料が決まります。そのため申告することにより、保険料が上がる可能性があることは押さえておきたいポイントです。
確定申告をする際は、節税の効果と社会保険料の増額分を比較し、損をしないように判断しましょう。
損益通算まとめ
損益通算とは1年間に発生した利益から損失を差し引き課税所得を減らすことで、所得税の節税ができる制度です。
特定口座(源泉徴収あり)の口座内で発生した損益は、自動的に通算されます。一方、特定口座(源泉徴収なし)や一般口座での取引を損益通算するには、確定申告が必要です。また複数の口座間での損益通算や、繰越控除をする際も確定申告が必要です。
損益通算をすると納める税額が減りますが、所得額によっては各種控除から外れたり社会保険料が上がったりするケースもあります。確定申告をするにあたっては、節税の効果と所得の増加による影響をしっかりと比較したうえで、損をしない判断をすることが重要です。
このメディアの監修者

元吉 孝子 元吉孝子税理士事務所 代表
大学卒業後、一般事業会社の経理部門にてキャリアをスタート。その後、大手会計事務所にて15年間、医療機関に特化した会計・税務支援に従事し、開業から法人化、事業承継、相続対策まで、クライアントに寄り添う伴走者として経験を積む。
その後、千代田区の税理士法人に勤務し、EC事業や個人の相続案件に携わる。平成30年11月20日に税理士登録後も同法人でパートナー税理士を務め、通算16年間の勤務を通じて幅広い分野の専門知識を習得。
これまでの30年以上の経験を活かし、現在は自身の会計事務所を開設。お客様一人ひとりの視点に立ち、共に課題を解決していくことを目指している。
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計、簿記、ファクタリングなどの資金調達に関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は400本以上にのぼる。FP2級。
運営企業
当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
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