利子所得とは?計算方法や税率、非課税制度について解説

更新日:2024年05月10日

利子所得とは

利子所得とは10種類ある所得のうちの一つで、預貯金や公社債の利子および、公社債投信または公募公社債等運用投信の収益分配金等が該当します。この記事では利子所得の概要および税金の計算方法、確定申告が必要なケース、2つの非課税制度を解説します。資産を運用している方や確定申告を予定している方は、ぜひ参考にしてください。

目次

利子所得とは

利子所得とは、10種類ある所得のうちの一つです。それぞれの所得の概要を、以下で確認しましょう。

所得の種類 概要
利子所得 預貯金や公社債の利子および合同運用信託または公社債投資信託もしくは、公募公社債等運用投資信託の収益の分配などから生じる所得
配当所得 株主や出資者が法人から受ける配当および、証券投資信託(合同運用信託、公社債投資信託、公募公社債等運用投資信託を除く)の収益の分配などから生じる所得
不動産所得 不動産および借地権など不動産の上に存する権利、船舶や航空機の貸付けによる所得
事業所得 農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業など事業から生じる所得
給与所得 給与および賞与などの所得
退職所得 退職により勤務先から受ける退職手当および、厚生年金保険法に基づく一時金などの所得
山林所得 5年を超えて所有していた山林の伐採譲渡および、立木のままでの譲渡により生ずる所得
譲渡所得 土地、建物、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得
一時所得 上記利子所得から譲渡所得に当てはまらないもので、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外のもの
生命保険の一時金、懸賞や福引の賞金品、競馬や競輪の払戻金など
雑所得 上記のいずれにも該当しないもの
公的年金、非営業用貸金の利子、原稿料や講演料、印税など

利子所得は他の所得と同様に原則として所得税が課されるため、利子所得がある場合は税金の概要と納税方法を押さえておくことが重要です。ここではまず、所得のうち利子所得に該当するものとしないものを確認しましょう。

参考)No.1300 所得の区分のあらまし|国税庁

利子所得に該当するもの

利子所得に該当するものには、以下があります。

  • 預貯金(銀行預金・郵便貯金・勤務先預金)の利子
  • 公社債の利子
  • 公社債投資信託の収益分配金
  • 公募公社債等運用投資信託の収益分配金
  • 合同運用信託の収益分配金
  • 抵当証券の利子

公社債投資信託とは、株式を一切組み入れず国債や社債など債券(公社債)を中心に運用する投資信託です。MRF(マネーリザーブ・ファンド)やMMF(マネー・マーケット・ファンド)が該当します。

利子所得に該当しないもの

利子所得に該当しないものには、以下があります。

  • 金銭の貸付金利子
  • 役員や退職者、従業員家族などが預けた勤務先預金の利子
  • 組合債等の利子
  • 所得税等の還付加算金

金銭の貸付金利子は、事業所得または雑所得です。役員や退職者、従業員家族などが預けた勤務先預金の利子および組合債等の利子、所得税等の還付加算金は雑所得に分類されます。分類がわからない所得がある場合は、税理士などの専門家や税務署窓口で相談すると安心です。

利子所得の額と税金の計算方法

利子所得にかかる税金は、収入金額に税率をかけて算出されます。源泉分離課税の対象のため、原則として源泉徴収により納税が完了します。利子所得に課される税金の計算方法は、以下のとおりです。

利子所得に課される=利子所得の額×(所得税15%+住民税5%)

※2037年までは所得税に復興特別所得税が加算されるため税率は20.315%

利子所得の額は、源泉徴収される前の収入金額です。たとえば、100万円の預金を年率0.02%の金利で1年間預けた場合の利子所得は、200円(100万円×0.02%)と計算できます。

利子所得にかかる税率は、所得税と住民税を合わせた20%です。先の例であれば、200円に20%をかけた40円が税額です。200円から40円が源泉徴収され、実際に受け取れる利子の金額は160円となります。

確定申告が必要な利子所得

利子所得は原則として源泉徴収により納税が完了しますが、以下の場合は確定申告が必要です。

  • 同族会社が発行した社債の利子でその同族会社の役員等が支払を受ける場合
  • 外国の金融機関の口座の利子

毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた利子所得について確定申告が必要なときは、翌年の2月16日~3月15日までの間に申告および納税をしましょう。期限を過ぎてしまうと延滞税や無申告加算税が課されるため、期間内の速やかな手続きが重要です。

利子所得の2つの非課税制度

利子所得は原則として税金が課されますが、例外として以下の2つの非課税制度があります。

  • 障害者等の少額貯蓄非課税制度
  • 勤労者財産形成住宅貯蓄および勤労者財産形成年金貯蓄の利子非課税制度

ここでは、それぞれの制度を詳しく解説します。

1.障害者等の少額貯蓄非課税制度

障害者等の少額貯蓄非課税制度には、少額預金の利子所得等の非課税制度(いわゆるマル優)および、少額公債の利子の非課税制度(いわゆる特別マル優)があります。マル優では預貯金の元本350万円まで、特別マル優では国債と地方債の額面350万円まで、両方の制度を合わせると元本合計700万円までの利子等が非課税になります。

制度の対象となるのは、国内に住所がある個人のうち以下に該当する方です。

  • 障害者手帳の交付を受けている人
  • 遺族基礎年金を受けている妻
  • 寡婦年金を受けている人
  • 障害者年金を受けている人
  • 母子年金を受けている人

参考)No.1310 利息を受け取ったとき(利子所得)|国税庁

2.勤労者財産形成住宅貯蓄および勤労者財産形成年金貯蓄の利子非課税制度

勤労者財産形成住宅貯蓄および勤労者財産形成年金貯蓄の利子非課税制度(いわゆる財形住宅貯蓄および財形年金貯蓄)では、それぞれの貯蓄の元本合計が550万円までの利子等が非課税になります。ただし、財形年金貯蓄のみで以下に該当するものについては、払込ベースで385万円まで非課税です。

  • 生命保険の保険料
  • 損害保険の保険料
  • 生命共済の共済掛金
  • 簡易保険の掛金

財形年金貯蓄制度を利用できるのは55歳未満の勤労者で、60歳以降の所定の時期から年金を受け取る目的として、5年以上の期間にわたり給与もしくは賞与からの天引きにより資金を積み立てている方です。

財形住宅貯蓄は、マイホームの取得またはリフォーム等を目的とし、55歳未満で5年以上の期間にわたり給与もしくは賞与からの天引きにより資金を積み立てている方が該当になります。

参考)財形貯蓄制度

利子所得まとめ

利子所得とは10種類ある所得のうちの一つで、具体的には預貯金(銀行預金・郵便貯金・勤務先預金)の利子や公社債の利子、公社債投資信託の収益分配金等があげられます。

利子所得にかかる税率は、20%(所得税15%+住民税5%)です。原則として源泉徴収により納税が完了しますが、同族会社が発行した社債の利子でその同族会社の役員等が支払を受ける場合や外国の金融機関口座で利子が生じた場合は、確定申告が必要なことを押さえておきましょう。確定申告が必要な場合は、所得が生じた年の翌年の2月16日~3月15日に速やかに申告および納税をしてください。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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