退職所得とは?退職金にかかる税金や確定申告について解説
更新日:2026年04月09日

退職所得の仕組みを正しく理解することは、退職金の支給を検討する企業にとって極めて重要です。2026年施行の制度見直しでは、確定拠出年金との調整ルールが変わるため、今後の制度設計にも影響が及びます。
税理士などの専門家へ相談する前に、まずは控除の仕組みや計算方法といった全体像を整理しておきましょう。本記事では、従業員への適切な説明や判断に役立つよう、税の基礎から改正ポイントまで分かりやすく解説します。
目次
退職所得とは
退職所得とは、退職時に勤務先から支給される退職金やその他の給付を指します。これには「社会保険から支払われる一時金」や「確定拠出年金の規約に基づく老齢給付金の一時金」も含まれます。さらに、労働基準法に基づく「解雇予告手当」や「立替払いを受けた未払い賃金」も退職所得です。これらの所得は、退職にともなって発生します。
退職所得控除とは
退職所得控除は、退職時に受け取る退職金などの退職所得について、一定額を課税対象から差し引ける税制上の仕組みです。
退職金には原則として所得税や住民税が課されますが、退職所得控除を利用することで課税される金額が抑えられ、結果として税負担の軽減につながります。
対象となるのは、退職を理由として支給される一時金で、定年による退職金や早期退職制度に伴う割増退職金、会社都合・自己都合による退職金などが含まれます。
長期間の勤務に対する対価や老後の生活資金としての性質を踏まえ、退職金には税制上の特例的な配慮が設けられているのが特徴です。
【2026年施行】退職所得控除の見直しについて
2025年度(令和7年度)の税制改正により、2026年(令和8年)1月1日以後に支払われる退職手当等や確定拠出年金(DC)一時金について、退職所得控除の調整ルールが見直されました。
退職所得控除の見直しの背景
今回の見直しは、退職所得控除の使われ方において生じていた税負担の偏りを是正することを目的としています。
これまでの制度では、確定拠出年金(DC)の一時金を先に受け取り、その後5年以上経過してから勤務先の退職金を受給すると、それぞれで退職所得控除を全額適用できました。
その結果、実質的には同じ勤続期間に基づく給付であるにもかかわらず、控除が重複して使われるケースが生じ、受け取り時期の違いによって課税額に差が出ていました。
こうした制度上の不均衡を解消し、より公平な課税を実現するために、退職所得控除の調整ルールが改められたのです。
退職所得控除の見直しの内容
見直しの主なポイントは、以下の3点です。
- 控除額調整期間に関するルールの変更
- 「退職所得の受給に関する申告書」の保存期間の延長
- 源泉徴収票の提出義務の拡大
以下で、それぞれ見ていきます。
控除額調整期間に関するルールの変更
改正前は、DC一時金を受け取った後、前年以前4年以内に退職金を受け取らない限り(いわゆる5年ルール)、退職所得控除の調整対象とはなりませんでした。改正後は、この期間が「前年以前9年以内(いわゆる10年ルール)」へと延長されます。
仮に、60歳でiDeCo(個人型確定拠出年金)を受け取り、65歳で勤務先の退職金を受給した場合、改正前は双方で満額の控除が受けられました。しかし、改正後は調整対象期間に該当するため、退職所得控除額が調整され、従来よりも税負担が増加します。
「退職所得の受給に関する申告書」の保存期間の延長
「退職所得の受給に関する申告書兼退職所得申告書」は、退職手当などの支給を受ける際に、受取人が退職手当等の支払者に提出する書類です。
今回の税改正に伴い、適切な税務管理と重複排除ルールの適用を確実にするため、この申告書の保存期間が従来の7年から10年に延長されました。
「退職所得の受給に関する申告書兼退職所得申告書」の書式は以下のとおりです。
※国税庁「退職所得の受給に関する申告書(退職所得申告書)」を引用し加工
源泉徴収票の提出義務の拡大
退職所得の源泉徴収票の提出義務についても、変更があります。改正前は、退職所得の源泉徴収票を税務署長へ提出する必要があるのは、原則として法人の役員に退職金を支払った場合のみに限定されていました。
改正後は、役員か従業員かを問わず、すべての居住者分の退職所得の源泉徴収票の提出が一律で義務化されました。
そのため、税務署は個人の退職金の受給状況をこれまで以上に把握しやすくなります。また、確定拠出年金の一時金についても、他の制度改正とあわせて受給状況の把握が進むと考えられます。
退職金にかかる税金の計算方法
退職所得計算の大まかな流れは以下のとおりです。
退職金を一時金として一括で受け取る場合、他の所得(給与所得など)と合計せずに、独立して税額を計算する「分離課税」が適用されます。この際の所得は「退職所得」として課税の対象となります。
退職金にかかる税金を計算する基礎となる「課税退職所得金額」の基本的な計算式は、以下のとおりです。
課税退職所得金額 =(退職金の収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2
※収入金額とは、源泉徴収される前の総支給額を指します。1,000円未満の端数がある場合は、その端数を切り捨てます。
以下では、具体的な計算方法について解説します。
1.退職所得控除額を計算する
退職所得控除額は、長年の勤務に対する報償や老後の生活資金としての性格を考慮した非課税枠のことです。計算方法は、勤続年数によって以下のように異なります。
なお、勤続年数に1年未満の端数があるときは、たとえ1日であっても切り上げて1年として計算します。
【勤続年数が20年以下の場合】
40万円 × 勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
【勤続年数が20年を超える場合】
800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20年)
【勤続年数別の計算例】
- 勤続年数5年の場合: 40万円 × 5年 = 200万円
- 勤続年数15年(14年3ヶ月など)の場合: 40万円 × 15年 = 600万円
- 勤続年数35年の場合: 800万円 + 70万円 ×(35年 - 20年)= 1,850万円
参考)国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
2.課税退職所得額を計算する
退職金の額面(収入金額)から、上記で算出した「退職所得控除額」を差し引き、その残額に2分の1を掛けて算出します。この「1/2ルール」により、税負担が大幅に軽減されます。
ただし、以下に該当する場合は、2分の1計算(1/2ルール)の適用はありません。
- 特定役員退職手当等:役員等としての勤続年数が5年以下の役員に支払われる退職金。
- 短期退職手当等:役員以外の従業員等で、勤続年数が5年以下の短期勤続者に支払われる退職金(退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額のうち300万円を超える部分)。
3.税額を計算する
退職金を受け取る際の手続き状況によって、納税の方法が異なります。
【「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合】
退職金の支払者が正しい税額を計算し、所得税・復興特別所得税・住民税を源泉徴収(天引き)します。この場合、退職金に関する課税関係は完了するため、原則として確定申告は不要です。
【「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合】
退職金の支払額に対して、一律20.42%(所得税+復興特別所得)の税率で源泉徴収します。この税率は退職所得控除や1/2ルールが適用されていないことから、本来の税額より多い徴収であることが一般的です。
そのため退職金の受給者は、所得税に関して自分で計算し直し、確定申告をして過払い分の還付を受ける必要があります。
所得税の計算方法
所得税は国税に分類され、所得金額に応じて税率が上がる「超過累進税率」が適用されます。
計算式:課税退職所得金額 × 税率 − 控除額
退職所得にかかる所得税は、課税退職所得金額に応じて5%から45%までの7段階の税率が適用され、該当する税率を乗じたうえで所定の控除額を差し引いて算出します。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
| 1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
| 1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
さらに、算出された所得税額に2.1%の復興特別所得税を加算した金額が、最終的な納税額です。なお、最終的な所得税額の計算において1円未満の端数が生じた場合は、切り捨てて処理します。
住民税の計算方法
住民税は、都道府県や市区町村に支払う地方税で、所得税と同様に他の所得とは分けて計算する「分離課税」が適用されます。
課税退職所得金額 × 税率10%(都道府県民税4% + 市町村民税6%)
退職金にかかる住民税には、所得税のような累進税率は適用されず、退職金の金額にかかわらず税率は一律10%です。
また、住民税には復興特別所得税のような付加税はなく、原則として会社が特別徴収として退職金から天引きし、本人に代わって自治体へ納付します。
なお、住民税額の計算において100円未満の端数が生じた場合は、その端数を切り捨てて計算されます。
退職所得の確定申告が必要なケース
退職所得の確定申告は基本的に必要ありませんが、特定の状況では申告が必要となる場合があります。
公的年金などの収入が合計で400万円以下であり、すべてが源泉徴収され、さらに公的年金に関連する雑所得以外の収入が20万円以下のときには、所得税や復興特別所得税の確定申告をする必要はありません。
確定申告をしなければならないのは、以下のケースです。
- 公的年金などの収入が年間400万円を超えた場合
- 年金所得があり他の所得金額が20万円を超えた場合
ここでは、それぞれについて解説します。
公的年金などの収入が年間400万円を超えた
退職金を受け取った人が年金受給者であり、国民年金や厚生年金を含む公的年金などの合計金額が400万円を超える場合には、確定申告が必要です。その際、退職金の金額も申告書に記入します。
また、民間の生命保険会社が提供する個人年金保険は、公的年金とは別の雑所得として扱われるため、公的年金の合計収入には加算しません。
年金所得があり他の所得金額が20万円を超えた
年金収入がある場合、年間受取額が400万円以下であるとしても、他の収入が20万円を超えた場合は、確定申告が必要です。他の収入とは、給料、雑収入、一時的な収入などが含まれます。1月1日から12月31日の期間にこれらの収入の総額が20万円を超えた場合は、確定申告する必要があります。主なものは、以下の所得です。
| 所得の種類 | 所得の代表例 |
| 給与所得 | 給与・賞与・パート収入 |
| 雑所得 | 個人年金・原稿料 |
| 配当所得 | 株式の配当や投資信託の収益分配金 |
| 一時所得 | 生命保険の満期返戻金 |
特定の所得控除を受ける
確定申告は、特定の所得控除を利用する際に必要です。たとえば「医療費控除」や「寄附金控除」など、確定申告を通じてのみ受けられる控除が存在します。
また、退職後に新たな職に就いていない場合は年末調整がされていないため、12月31日時点での所得控除が正確に反映されていない可能性があります。その結果、生命保険料控除や地震保険料控除など、年末調整で申告可能な控除も確定申告しなければ適用されません。適切な控除を受けるためには、確定申告が必要です。
退職所得の確定申告をしたほうがいいケース
退職所得の確定申告は通常必要ありませんが、特定の状況では申告によって税金が戻る可能性もあります。
ここでは、確定申告をしたほうがいいケースとして、次の3点について解説します。
退職金は受け取ったが退職所得申告書を提出しなかったケース
年の途中で退職や転職をしたケース
副業で赤字が発生したケース
確定申告の時期(2月中旬〜3月中旬)までにチェックしておきましょう。
退職金は受け取ったが退職所得申告書を提出しなかった
退職金の受領前に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった場合、所得税と復興特別所得税が一律20.42%で源泉徴収され、規定どおり算定した税額よりも多くなってしまうケースがあります。
源泉徴収額が過多であった場合には、確定申告を通じて過払いの税金還付が可能です。退職時に受け取る退職金や手当を「退職所得」として、退職先から渡された源泉徴収票に基づいて確定申告をします。
年の途中で退職や転職をした
退職や転職による年途中の変動があった場合であっても、通常は退職金に関する確定申告の必要はありません。ただし、主に以下2つの状況下では、確定申告で税金の還付を受けられます。
【年途中で退職し、無職期間がある場合】
年の途中で退職すると、1年間の収入を前提に計算された所得税が過払いとなる可能性があります。年末調整されていないため、確定申告を通じて過払い税金の精算をしましょう。とくに年の前半に退職した場合には、差額が大きくなる傾向にあります。
【前職の源泉徴収票を転職先に提出していない場合】
転職したときは、新しい職場での年末調整により正しい税額の納税が可能です。ただし前職の源泉徴収票がないと正確な計算ができません。とくに転職による無職期間があった場合、所得税の過払いが生じる可能性も高まります。
確定申告をする際には、退職した職場から発行される「給与所得の源泉徴収票」が必要です。万が一紛失してしまった場合は、退職した職場の経理部門に連絡し、再発行を依頼しましょう。
副業で赤字が発生した
副業による不動産収入や事業収入が赤字の場合、その損失を退職金と相殺し税金還付を受けられる可能性があります。給与収入や配当収入、その他の収入との損益通算ができます。
これらを通算しても赤字が残る場合は、退職金との損益通算も可能です。とくに退職後に副業を本格化させたり、新たな事業を始めたりするケースでは、事業の初期には経費がかさむため赤字となることもあります。退職金を含めた確定申告で税金が還付されるのであれば、資金繰りの不安も軽減されます。
退職所得の確定申告における特殊なケース
特殊なケースでは、退職所得に関する確定申告が必要になることがあります。たとえば以下のケースです。
- 死亡退職金を受け取った
- 複数の企業から退職金を受け取った
これらの状況では、税法上の取り扱いが異なり、適切な申告が求められます。また、適切な申告により、税制上の不利益も回避可能です。ここでは、特殊なケースにおける確定申告の必要性について詳しく解説します。
死亡退職金を受け取った
死亡退職金は、通常の退職所得としてではなく相続財産として扱われます。亡くなった従業員に支払われるはずであった給与や退職金は、「退職所得の源泉徴収」の対象ではなく「相続税」の対象としての扱いです。
死亡退職金は、相続人が誰になるのか、またどのように相続するかによって税額が異なります。相続人が決定し、支払額が確定した後、死亡退職金の支払者は「退職手当金等受給者別支払調書」を作成します。
複数の企業から退職金を受け取った
退職金を支払う事業主は、他の事業主が支払った退職手当を含めて、正しい源泉徴収税額を計算しなければなりません。
受給者は「退職所得の受給に関する申告書」を提出する際に、他の事業主から受領した退職手当の詳細を記入し、関連する源泉徴収票を添付する必要があります。また、複数の企業に申告書を提出する場合は、提出する順番を申告書に明記する必要があります。
退職所得まとめ
退職金を受け取る際には、退職所得という収入が発生します。一般的に退職者は「退職所得の受給に関する申告書」を勤め先に提出し、勤め先が税金を計算し源泉徴収します。
そのため、確定申告の必要はありません。ただし、この「退職所得の受給に関する申告書」の提出を怠ると、過払い税金が生じる可能性があるため、確定申告が必要になることがあります。
さらに、退職により収入が減少した場合のように、確定申告によって税金が還付されることもあります。退職金は、他の所得と比べて特別な控除が適用されるなど、優遇されているのが特徴です。必要に応じて確定申告を検討してみましょう。
このメディアの監修者

元吉 孝子 元吉孝子税理士事務所 代表
大学卒業後、一般事業会社の経理部門にてキャリアをスタート。その後、大手会計事務所にて15年間、医療機関に特化した会計・税務支援に従事し、開業から法人化、事業承継、相続対策まで、クライアントに寄り添う伴走者として経験を積む。
その後、千代田区の税理士法人に勤務し、EC事業や個人の相続案件に携わる。平成30年11月20日に税理士登録後も同法人でパートナー税理士を務め、通算16年間の勤務を通じて幅広い分野の専門知識を習得。
これまでの30年以上の経験を活かし、現在は自身の会計事務所を開設。お客様一人ひとりの視点に立ち、共に課題を解決していくことを目指している。
運営企業
当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社フリーウェイジャパン |
| 法人番号 | 1011101045361 |
| 事業内容 |
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| 本社所在地 | 〒160-0022 東京都新宿区新宿3-5-6 キュープラザ新宿三丁目5階 |
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