繰越欠損金とは?税効果や期限・控除限度額・仕訳方法について解説
更新日:2025年06月12日

繰越欠損金とは、法人税上の赤字が発生した場合に、翌年度以降で黒字が発生した際に課税所得から控除できる額を指します。節税の効果を期待できることや、経営の安定化につながることが、適用する主なメリットです。本記事では、繰越欠損金を適用するまでの流れや要件、仕訳方法について詳しく解説します。
目次
繰越欠損金とは
繰越欠損金(読み方:くりこしけっそんきん)とは、税務上の赤字が発生した場合に、その翌事業年度から最長で10年間にわたって、黒字が発生したタイミングで課税所得から控除できる額のことです。欠損金とは、課税所得がマイナスの金額を指します。
繰越欠損金を適用すれば、税の支払負担を軽減できます。ただし、適用するためには対象の法人がいくつかの要件を満たさなければなりません。適用要件については次章以降で詳しくご説明します。
なお、繰越欠損金の適用対象は法人税です。法人住民税や法人事業税に対しては適用できません。
繰越欠損金の税効果会計
税効果会計とは、繰延税金資産と繰延税金負債を計上することで、会計の収益・費用と税務の益金・損金の間で生じるずれを調整する作業のことです。繰越欠損金は将来の税額を減少させるため、発生した時点で繰延税金資産を計上することがあります。
繰延税金資産として計上できるのは、将来回収できる可能性がある額の分です。将来も回収の見込みがない額については、計上が認められていません。
なお、税効果会計の適用が義務づけられているのは、上場企業など一部の企業に限られます。ただし、対象外の企業でも任意で税効果会計の適用自体はできます。
繰越欠損金適用の流れ
繰越欠損金を適用するまでの主な流れは、以下のとおりです。
- 損失が発生する
- 欠損金について青色申告する
- 翌年に利益が出たら法人税申告書で控除を申請する
それぞれのステップで必要な手続きや注意点を詳しく解説します。
損失が発生する
損失が発生すると、翌年度以降に繰越欠損金を適用できる可能性があります。たとえば、益金が2,000万円で損金が2,500万円の場合は、課税所得が−500万円で赤字になるため損失が発生しているケースです(2,000万円 − 2,500万円)。
このように課税所得がマイナスであればその年度の法人税はかかりません。
欠損金について青色申告する
損失が発生したら、赤字分を欠損金として青色申告します。青色申告とは、決められた簿記(複式簿記)で処理することにより様々な特典を受けられる制度のことです。
欠損金を適用するためには、翌年以降も毎年、確定申告を続けなければなりません。ただし、翌年以降に提出するのは、青色申告書でも白色申告書でも構いません。
なお、青色申告にあたっては、所轄の税務署に対してあらかじめ承認申請書の提出が必要です。e-Taxでも承認申請の手続きはできます。
翌年に利益が出たら法人税申告書で控除を申請する
翌年以降、利益が出た年度に法人税申告書で繰越欠損金による控除を申請します。たとえば、繰越欠損金が生じた年の翌年の益金が2,500万円で損金が2,000万円であれば、課税所得が+500万円で黒字になるため(2,500万円 − 2,000万円)、繰越控除限度額まで控除が可能です。
控除を申請する際の主な記入箇所は、法人税申告書の別表7(1)にあります。主な記入箇所と、記入内容は以下のとおりです。
- 控除前所得金額〜別表4に記載している「控除前所得金額」を転記する
- 損金算入限度額〜中小企業法人等は損金全額、それ以外は損金のうち定められた割合まで記載する
- 事業年度〜申請する事業年度を記載する
- 区分〜「青色欠損」「連結みなし欠損」「災害損失」のうち該当するものに丸をつける
- 控除未済欠損金額〜欠損金額のうち、控除されずに現時点で繰り越されている金額を記載する
- 当期控除額〜今回の申請で控除する金額を記載する
- 翌期控除額〜控除未済欠損金額から当期控除額を引いた額を記載する
申請する際は、記入漏れや計算間違いのないようにしましょう。
繰越欠損金の利用条件・要件
繰越欠損金を適用するには、いくつかの利用条件を満たさなければなりません。ここから、繰越欠損金を適用できる法人や繰越控除の限度額、繰越控除できる期限・繰越期間について解説します。
対象の法人
繰越欠損金を適用できる法人の主な要件として、以下が挙げられます。
- 欠損金が発生した年度に青色申告書を提出している
- 翌年度以降も毎年確定申告書を提出している
- 関連する帳簿を適切に保存している
なお、これらの条件を満たしていても、「控除限度額」を超える金額や「適用期限(繰越期間)」を過ぎた欠損金については、控除できません。
繰越控除限度額
企業の規模によって、控除できる限度額(繰越控除限度額)が異なります。「中小企業法人等」であれば、基本的に繰越欠損金を全額控除できます。一方、大企業などは控除上限が設けられています。
たとえば、2018年4月1日以降に開始する事業年度では、中小企業法人等以外の企業は繰越控除前所得の50%が限度です(2024年4月時点の制度)。中小企業法人等とは、普通法人のうち資本金や出資金が1億円以下である企業や、資本・出資がない団体などを指します。
たとえば、2024年度に繰越欠損金1,200万円が発生して翌年に黒字になった大企業が控除できるのは、600万円までです(1,200万円 × 50 / 100)。
繰越控除できる期限・繰越期間
繰越控除できるのは、欠損金が生じてから10年間です。
つまり、事業年度開始前10年以内の事業年度で生じた欠損金であれば、所得から控除できます。ただし、2018年4月1日以前に開始した事業年度で生じた欠損金額の場合、控除できる期間は9年間です。
たとえば、2024年度に生じた繰越欠損金であれば、2034年度までの所得金額に対して適用できます。その場合は、対象の帳簿も同様に2034年度まで(10年間)保存しなければなりません。
参考)国税庁「No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」
繰越欠損金を適用するメリット
繰越欠損金を適用することのメリットは、主に以下のとおりです。
- 税負担の軽減につながる(節税効果)
- 資金繰りが改善する(キャッシュフロー向上)
- 経営に余裕が生まれる(安定経営)
それぞれ解説します。
税負担の軽減につながる(節税効果)
繰越欠損金を適用することにより、節税の効果を期待できることがメリットのひとつです。損失が発生した分を翌年以降の利益から控除できるため、税金の負担を軽減できます。
たとえば、前年に350万円の繰越欠損金がある中小企業のケースで当年度に350万円の所得金額がある場合、350万円を損金として計上できるため所得金額が0になり、法人税がかかりません。また、同様のケースで当年度の所得金額が100万円(<繰越欠損金)の場合には、その年の所得金額が0になるうえに次の年以降も250万円分を控除できます。
資金繰りが改善する(キャッシュフロー向上)
キャッシュフローの改善につながることも、繰越欠損金を適用するメリットとして挙げられます。キャッシュフローとは、事業者に入ってくるお金の流れのことです。
納税額が多ければ多いほど、手元の資金が流出します。繰越欠損金を適用することで所得から一定額を控除して納税額が減れば、その分出ていくお金が少なくなるでしょう。
キャッシュフローが改善することにより、事業に投入できる金額が増えたり、信用力が向上したりします。
経営に余裕が生まれる(安定経営)
繰越欠損金を適用することにより、経営の安定化に寄与することもメリットです。
経営環境はそのときの景気や社会情勢などに左右されます。厳しい経営環境にある際は、繰越欠損金を適用して納税額を減らすことで、手元資金に余裕を持たせられるでしょう。
その結果、突発的な赤字や外部環境の変化にも対応しやすくなり、経営の安定化につながります。
繰越欠損金のデメリットと注意点
繰越欠損金を適用する際は、以下の点に注意しましょう。
- 控除する順番が決められている
- 合併の種類・目的によって適用できない場合がある
- 法改正で制度が変わることがある
繰越欠損金のデメリットや注意点について、解説します。
控除する順番が決められている
繰越欠損金を適用する際は、控除の順番が決められている点に注意しましょう。
現在の繰越欠損金が複数の年度で発生した赤字に基づくものである場合は、古い事業年度で発生したものから順番に適用します。仮に、2023年に220万円、2024年に280万円の繰越欠損金が発生していて2025年の課税所得が300万円だった場合は、まず2023年分の220万円を全額控除してから、残りは2024年の280万円のうちの80万円を適用します。
また、課税所得が黒字の年に適用を飛ばして次回に持ち越しできないことも押さえておきましょう。たとえば、繰越欠損金500万円があるにもかかわらず、「2024年の課税所得500万円」に対する適用をスキップして「2025年の課税所得1,000万円」に適用はできません。
つまり、税務上得だとしても任意のタイミングでは繰越欠損金を適用できないことに、注意が必要です。
合併の種類・目的によって適用できない場合がある
合併の種類によって、繰越欠損金を適用できないケースがある点にも注意が必要です。
消滅会社の繰越欠損金を引き継ぐためには、「適格合併」でなければなりません。適格合併とは、法人税法第2条第12の8で定める要件を満たす合併のことです。
また、節税目的とみなされる合併や買収をした場合も、繰越欠損金の適用が認められない点に注意しましょう。
法改正で制度が変わることがある
法改正をきっかけに、繰越欠損金を適用できる期間や限度額が変わることがある点にも注意が必要です。
2024年4月1日現在、欠損金の繰越期間は10年間です。それに対し、2018年4月1日前の事業年度において生じた欠損金額の繰越期間は9年と設定されていました。
また、中小法人等以外の法人が適用できる限度額も、「2017年4月1日~ 2018年3月31日」と「2018年4月1日以降」のように繰越控除する時期によって異なります。法改正によって制度が変わる可能性があることを踏まえ、繰越欠損金の適用を検討する際は必ず最新の情報を確認しましょう。
繰越欠損金と欠損金の繰戻還付の違い
繰戻還付とは、赤字が出た場合に、すでに納めた法人税を返してもらえる制度です。適用する対象の年度と資金面での効果が、繰越欠損金と欠損金の繰戻還付の主な違いとして挙げられます。
欠損金の繰戻還付とは、欠損金額が生じた年度に青色申告書を提出することで欠損金を前事業年度に繰り戻し、すでに納付した法人税の還付を受けられる制度です。繰越欠損金は翌年度以降に欠損金を適用するのに対し、繰戻還付では前事業年度を対象とする点が異なります。
また、繰越欠損金は翌事業年度以降で黒字が出た課税所得から控除することで税負担の軽減を図るのに対し、繰戻還付は還付を受けられる点もポイントです。そのため、欠損金の繰戻還付は短期間での資金調達にもつながります。
繰越欠損金の会計処理・仕訳方法
税効果会計を適用するケースで、繰越欠損金の仕訳が必要なタイミングは、主に以下のとおりです。
- 繰越欠損金を計上するとき
- 繰越欠損金を解消するとき
- 繰越欠損金の回収可能性がなくなったとき
繰越欠損金が250万円発生したケースで、実効税率30%と仮定して仕訳の方法を紹介します。
繰越欠損金を計上するとき
税効果会計では、繰越欠損金が発生した時点で繰延税金資産を計上します。今回、繰延税金資産の額は、75万円です(250万円 × 30%)。そのため、以下のように仕訳をします。
| 借方 | 貸方 | 備考 | ||
| 繰延税金資産 | 750,000円 | 法人税等 調整額 |
750,000円 | 繰越欠損金にかかる 繰延税金資産計上 |
「繰延税金資産」は資産のため借方に計上し、同額を「法人税等調整額」として貸方に計上している点がポイントです。
繰越欠損金を解消するとき
課税所得から全額控除して繰越欠損金が解消された場合は、計上したときと反対の方法で仕訳をします。仕訳例は以下のとおりです。
| 借方 | 貸方 | 備考 | ||
| 法人税等 調整額 |
750,000円 | 繰延税金資産 | 750,000円 | 繰越欠損金にかかる 繰延税金資産の取崩し |
なお、税率が変わっている場合は、上記のように計上時と同額になるとは限りません。
繰越欠損金の回収可能性がなくなったとき
将来も回収の見込みがない額については、税効果会計による繰延税金資産の計上が認められていません。繰越欠損金のうち40万円について、黒字の課税所得と相殺できる見込みがなくなった場合の仕訳例は、以下のとおりです。
| 借方 | 貸方 | 備考 | ||
| 法人税等 調整額 |
120,000円 | 繰延税金資産 | 120,000円 | 繰越欠損金にかかる 繰延税金資産の回収可能性を見直し |
40万円の回収見込みがなくなったため、それぞれ12万円を計上しています(40万円 × 30%)。
繰越欠損金まとめ
繰越欠損金とは、税務上赤字が発生した場合に、翌年度以降の黒字が発生したタイミングで課税所得から控除できる額です。繰越欠損金を適用して納税額が減れば、キャッシュフローの改善や経営の安定化につながります。
一方で、適用する際は控除の順番が決められていることや、法改正で繰越期間などが変わる可能性があることに注意が必要です。また、欠損金を繰り越す代わりに、還付を受ける方法もあります。
制度を十分に理解したうえで、繰越欠損金を活用しましょう。
このメディアの監修者

元吉 孝子 元吉孝子税理士事務所 代表
大学卒業後、一般事業会社の経理部門にてキャリアをスタート。その後、大手会計事務所にて15年間、医療機関に特化した会計・税務支援に従事し、開業から法人化、事業承継、相続対策まで、クライアントに寄り添う伴走者として経験を積む。
その後、千代田区の税理士法人に勤務し、EC事業や個人の相続案件に携わる。平成30年11月20日に税理士登録後も同法人でパートナー税理士を務め、通算16年間の勤務を通じて幅広い分野の専門知識を習得。
これまでの30年以上の経験を活かし、現在は自身の会計事務所を開設。お客様一人ひとりの視点に立ち、共に課題を解決していくことを目指している。
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計、簿記、ファクタリングなどの資金調達に関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は400本以上にのぼる。FP2級。
運営企業
当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社フリーウェイジャパン |
| 法人番号 | 1011101045361 |
| 事業内容 |
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| 本社所在地 | 〒160-0022 東京都新宿区新宿3-5-6 キュープラザ新宿三丁目5階 |
| 所属団体 | 一般社団法人Fintech協会 |
| 顧問弁護士 | AZX総合法律事務所 |







