人件費とは?含まれるものや分析時の計算方法をわかりやすく解説

更新日:2024年03月03日

人件費とは

人件費とは、主に従業員に関わる経費全般を指します。具体例は、給与や賞与・各種手当・退職金などです。

本記事では、人件費とは何かを説明した上で、分析手法を解説します。人件費を抑えるためのポイントも紹介するため、収益性改善を目指している方はぜひ参考にしてください。

目次

人件費とは

人件費とは、事業の中で従業員(ヒト)に対してかかる費用のことです。ここから、人件費の範囲や労務費との違いについて解説します。

人件費の範囲

ヒトの労働全般に関する費用すべてが人件費の範囲に含まれます。そのため、給与・賞与・退職金のように従業員に対して支払う金銭だけでなく、人材採用にかかるコストも人件費の対象です。

なお、役員・正社員・契約社員の区分によって人件費の扱いが異なることがある点に注意しましょう。たとえば、役員に支払う報酬(役員報酬)もヒトに関する経費ですが、一般の従業員とは別に扱われます。なぜなら、従業員と会社の法律関係が雇用契約・労働契約であるのに対し、役員と会社は委任契約で結ばれているためです。

人件費と労務費の違い

労務費とは、製造業や建設業などの分野で、製品やサービスを生産する際に発生する経費です。いずれもヒトに関係する経費ですが、労務費が製造に関係するヒトに対して支払われる経費である点が主な違いです。

なお、労務費は人件費の中に含まれます。労務費に販売費(営業部門)・一般管理費(管理部門)のうちヒトに関する経費を加えたものの用語として、「人件費」を使うことが一般的です。

人件費の種類(内訳)

人件費には、主に以下の種類があります。

  1. 給与・賞与
  2. 各種手当
  3. 退職金
  4. 役員報酬
  5. 福利厚生費
  6. その他の人件費

それぞれ概要を紹介します。

1. 給与・賞与

給与とは、会社が従業員に支払う賃金のことです。給与には、従業員に毎月支払う基本給(所定内賃金)と、従業員が残業した際や休日出勤した際などに支払う賃金(所定外賃金)があります。

給与は金銭で支給することが一般的です。ただし、食事の現物支給や商品の値引き販売などの経済的利益を支給することも、給与(現物給与)に該当します。

賞与とは、定期的に支払う給与とは別に支給する賃金のことです。ボーナスや一時金と表現することもあります。

賞与は、夏・冬の年1〜2回従業員に支給することが一般的です。ただし、法律で義務付けられているものではないため、会社の状況や経営方針などによって支給のタイミングや金額を変更できます。

賞与の性格はさまざまです。会社によって、従業員の功労報償的な意味を持たせるものとしてとらえることもあれば、生活補てんの目的で月給を補うものや将来の労働へのモチベーションを高めるものとすることもあります。

2. 各種手当

各種手当とは、基本給(給与のベースとなる賃金)以外に支払う賃金のことです。主な手当として、以下が挙げられます。

  • 役職手当(管理職の職責に対して支給する手当)
  • 職務手当(職務を遂行するために必要な技能を持つ人に支給する手当)
  • 資格手当(資格取得を促すため、資格所有者に支給する手当)
  • 食事手当(従業員の就業時間内にかかる食費を補助する手当)
  • 住宅手当(家賃など従業員の住居費を補助する手当)
  • 通勤手当(従業員の通勤にかかる交通費を支給する手当)
  • 出張手当(出張に伴う食費などを考慮して支給する手当)
  • 家族手当・扶養手当(扶養する家族にかかる費用を考慮して支給する手当)
  • 海外赴任手当(従業員の海外赴任を奨励するため支給する手当)
  • 地域手当(従業員が勤務する地域によって生じる生活費の差を埋めるため、支給する手当)

また、法律上支給が義務付けられている所定外賃金の手当は、以下のとおりです。

  • 時間外手当・残業手当
  • 深夜労働手当
  • 休日手当

時間外手当は、労働基準法で定められた法定労働時間(1日8時間・1週間40時間)を超える労働に支払う手当です。時間外労働に対する割増賃金率は25%以上ですが、1か月の時間外労働が60時間を超える場合は50%以上で計算します。

深夜労働手当は、午後10時から翌日午前5時までの労働に支払う手当です。会社は、深夜労働に対して通常の25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。

休日手当は、労働基準法で定められた法定休日における労働に対して支払う手当です。会社は休日労働に対して通常の35%以上の割増賃金を支払わなければなりません。

なお、各種手当は給与の一部とされることが一般的です。給与から各種手当を引いた金額を「給料」と呼びます。

参考)厚生労働省「法定労働時間と割増賃金について教えてください。」

参考)厚生労働省「2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」

3. 退職金

退職金とは、従業員が退職する際に支払うお金のことです。退職金には、以下の種類があります。

  • 退職一時金(会社が積み立てた額を従業員の退職時に支給する)
  • 確定給付企業年金(会社が運用する年金制度)
  • 退職金共済(外部機関で運用したお金を従業員の退職時に支給する)
  • 企業型確定拠出年金(会社が拠出金を負担し、従業員が運用した成果によって給付額を決める制度)

一般的に、「退職金」と呼ばれるのは退職一時金のことです。

4. 役員報酬

役員報酬(役員給与・役員賞与)とは、役員(取締役・会計参与・監査役・執行役または会計監査人・理事など)に対して支払う報酬のことです。定款で定められていない場合、役員報酬の額は株主総会の決議で決めなければなりません(会社法第361条など)。

なお、給与と異なり、役員報酬は雇用関係に基づき支払われるものではありません。そのため、役員報酬は人件費に含まれないという考え方もあります。

参考)役員報酬とは

参考)e-Gov「会社法 第三百六十一条」

5. 福利厚生費

福利厚生費とは、従業員の健康維持や生活の安定、仕事へのモチベーション向上などを目的として支払う経費を指します。福利厚生費は、法定福利費と法定外福利費に分類され、とくに法定外福利費のことを「福利厚生費」と表現することもあります。

それぞれ確認していきましょう。

5-1. 法定福利費

法定福利費(法定福利厚生)とは、法律で支給が義務付けられている費用のことです。法定福利費の具体例として、以下の項目が挙げられます。

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 介護保険
  • 労災保険
  • 雇用保険

参考)法定福利費とは

保険の種類によって、保険料や会社が負担する割合(負担料率)が異なります。

2023年度の健康保険料率は10%です(東京都協会けんぽ)。会社はそのうちの半分を負担します。

また、厚生年金保険料率は18.3%です(東京都協会けんぽ)。同じく、そのうち半分を会社が負担します。

介護保険料の保険料率は1.82%です(東京都協会けんぽ)。半分を会社が負担します。

労災保険は、業種によって保険料率がさまざまです。かかる保険料の全額を会社側が負担します。

一般の事業の場合、雇用保険の保険料率は1.55%です。会社が0.95%、従業員が0.6%分を負担します(0.95% + 0.6% = 1.55%)。

なお、会計上、会社が負担する金額を「法定福利費」として計上します。

参考)全国健康保険協会「令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)」

参考)厚生労働省 大阪労働局「労働保険料の計算方法」

参考)厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「令和5年度雇用保険料率のご案内」

参考)厚生労働省「労働保険料の申告・納付」

5-2. 法定外福利費

法定外福利費とは、法律に定めがない福利厚生費のことです。法定外福利費の具体例として、以下が挙げられます。

  • 社員旅行
  • 社内運動会などのレクリエーション
  • 従業員や従業員の家族に対する慶弔費
  • 従業員が使う休憩室用のお茶・コーヒー
  • 忘年会費

従業員のモチベーションを上げることが、法定外福利費を支出する主な目的です。会社側で自由に決められますが、すべての従業員に対して平等に与えられる機会があることや、金額に妥当性があることなどが条件とされています。

6. その他の人件費

ここまで紹介してきた経費以外に、人材採用にかかる費用や教育研修にかかる費用も人件費の対象になることがあります。なぜなら、人材採用も教育研修もヒトに関して支出する経費ととらえられるためです。

状況によって、人件費に該当するケース、人件費に該当しないケースがあるため、使用目的や金額の妥当性などを総合的に判断して計上しましょう。

人件費分析で適正な人件費水準(人件費率)を確認

会社経営では、自社の人件費が適切な水準にあるかを確認することが大切です。そこで、人件費率の算出が役に立ちます。

人件費率とは、売上における人件費の割合を示した値のことです。売上高人件費率と呼ぶこともあります。

ここから、人件費率の計算式や目安などについて確認していきましょう。

人件費率の計算式

人件費率の計算式は、以下のとおりです。

人件費率(%) = 人件費 ÷ 売上高 × 100

たとえば年商1億円の会社の場合、人件費が2,000万円であれば人件費率は20%(2,000万円 ÷ 1億円 × 100)です。また、人件費が同じでも、翌年の売上高が8,000万円まで減収になると、人件費率は25%まで上昇します(2,000万円 ÷ 8,000万円 × 100)。

適正な人件費率の目安とは

人件費率は事業によって異なるため、はっきりとした目安はありません。卸売業は1割前後、小売業は1〜3割、飲食業・旅館業は3〜4割程度、製造業は3〜5割程度であることが一般的です。

卸売業は、すでにある商品を仕入れて販売する(製造過程がない)ため、人件費率が低くなる傾向にあります。また、飲食業は顧客と接する機会の多い業種のため、一般的に人件費率が高いです。

人件費率が高い・低いことの意味

人件費率の値は、会社の経費における人件費負担の割合の大きさです。そのため、人件費率の高さ・低さを見ることで、事業における従業員の貢献が適正かなどが判断できます。

人件費率が高い会社は、人件費の負担が重いです。人件費率が高い要因として、従業員の数が規模に見合わない、売上が十分ではないなどが考えられます。

人件費率が高いことの問題点は、固定費が増えることで資金繰り悪化につながる点です。過大な人件費により手元資金が尽きると、借入金返済や給与支払が滞る可能性もあります。

人件費率が高い分、価格に転嫁せざるを得ない点も問題です。その結果、ライバル会社との競争に勝てなくなる可能性があります。

一方、人件費率が低い会社は、人件費が経営に与える負担が少ないです。少ない従業員で大きな売上を出せている(生産性が高い)か、従業員への還元が低いことが要因として考えられます。

給与が安いなど、従業員への還元の低さが人件費率の低さに影響している場合、将来的に人材不足に陥る可能性がある点が問題です。給与が低い場合、福利厚生が悪い場合は、従業員が離職したり、人材確保が難しくなったりする可能性があります。

また、従業員のモチベーションが低下し、今後生産性悪化につながりうる点も問題です。そのほか、従業員への還元が低いことが、自社のイメージを下げることにもつながります。

人件費の分析に役立つ指標

人件費を分析する際、人件費率のほかにも以下の指標が役に立ちます。

  • 一人当たり人件費
  • 一人当たり売上高
  • 一人当たり経常利益
  • 労働分配率
  • 労働生産性

各指標の意味や計算方法を確認していきましょう。

一人当たり人件費の意味と計算方法

一人当たり人件費とは、従業員一人当たりどれくらいの人件費がかかっているのかを示した指標です。以下の式で求められます。

一人当たり人件費(円) = 人件費 ÷ 従業員数(2期平均)

たとえば、前期の従業員数が40人、今期の従業員数が60人で、人件費が2億円の場合、一人当たり人件費は400万円です(2億円 ÷ ((40 + 60)÷ 2) )。

一人当たり人件費が高い会社は、一般的に従業員への待遇が良い・還元が高いと判断できます。ただし、一人当たり人件費を重視しすぎると、利益が圧迫されかねないため注意が必要です。

一人当たり売上高の意味と計算方法

一人当たり売上高とは、従業員一人当たりでどれだけの売上を出したかを示す指標です。以下の式で求められます。

一人当たり売上高(円) = 売上高 ÷ 従業員数

たとえば、年商5億円の会社に従業員が50人いる場合、一人当たり売上高は1,000万円です(5億円 ÷ 50人)。

一人当たり売上高の値が大きいほど会社の生産性が高いことを示しているため、経営改善に取り組む際の目安になります。ただし、業種によって異なるため、他社と比較する際は同業種企業の数値を使いましょう。

なお、一人当たり人件費と同じように、2期平均の従業員数を使って一人当たり売上高を計算することもあります。

一人当たり経常利益の意味と計算方法

一人当たり経常利益とは、従業員一人当たりでどれだけの経常利益を生み出したか示す指標です。以下の式で求められます。

一人当たり経常利益(円) = 経常利益 ÷ 従業員数

経常利益とは、会社が通常業務で得た利益のことです。以下の計算式で求められます。

経常利益(円) = 営業利益(売上高 − 売上原価 − 販管費) + 営業外収益 − 営業外費用

従業員数50人の会社が経常利益2億円を計上した場合、一人当たり経常利益は400万円です(2億円 ÷ 50人)。

一人当たり売上高と同様に、一人当たり経常利益が高い会社は生産性が高いです。毎期高い数字が続いている場合は、給与アップなどで従業員への還元を検討するとよいでしょう。

参考)経常利益とは

参考)営業利益とは

参考)売上原価とは

労働分配率の意味と計算方法

労働分配率とは、付加価値(自社以外の財・サービスに対して新たに付け加えた価値)に占める人件費の割合を示した指標です。労働分配率から、会社が付加価値額分をどれくらい従業員に分配しているかがわかります。

労働分配率の計算式は、以下のとおりです。

労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値 × 100

参考)労働分配率とは

参考)付加価値率とは

ある年の人件費が2,000万円の会社の付加価値が5,000万円の場合、労働分配率は40%です(2,000万円 ÷ 5,000万円 × 100)。

経済産業省の発表によると、2021年度の労働分配率は47.7%でした。給与総額の増加率が付加価値額の増加率を下回ったため、前年度と比較して2.7%減少しています。2021年度の労働分配率平均を業種別で見ると、製造業46.2%・卸売業46.4%・小売業49.0%でした。

労働分配率が高い場合、従業員のモチベーションを高く保ち離職を防ぐことにつながります。ただし、高すぎると利益を圧迫する可能性があるため注意が必要です。

労働分配率が低い場合、人件費の負担が比較的小さいことを意味します。一方で、人件費を抑えることで労働分配率が低くなっている場合は、従業員の離職につながりかねません。

参考)e-Stat「2022年企業活動基本調査確報-2021年度実績- 概況全文 p.8」

労働生産性の意味と計算方法

労働生産性とは、従業員一人当たりでどれくらいの付加価値を生み出したかを示す指標です。そのため、「一人当たり付加価値」と呼ぶこともあります。

労働生産性の計算式は、以下のとおりです。

労働生産性 (円) = 付加価値額 ÷ 従業員数

従業員数50人の会社が5億円の付加価値を出している場合、労働生産性は1,000万円です(5億円 ÷ 50人)。

経済産業省の発表によると、2021年度の労働生産性は910.0万円でした。付加価値額の増加率が従業員数(常時従業者数)の増加率を上回ったため、前年度比で6.1%増加しています。2021年度の労働生産性平均を業種別で見ると、製造業1,198.0万円・卸売業1,158.2万円・小売業510.7万円でした。

労働生産性が高いほど、投入した資源に対して効率良く成果を出していることを意味します。日本は、先進国内では労働生産性が低いです。

公益財団法人日本生産性本部の「労働生産性の国際比較2021」によると、日本の一人当たり労働生産性はOECD加盟38カ国中28位でした。

参考)e-Stat「2022年企業活動基本調査確報-2021年度実績- 概況全文 p.8」

参考)公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2021」

人件費総額や人件費率を抑えるためのポイント

人件費の分析を進める中で、自社の人件費の占める割合が高いことが判明したら、改善を検討しましょう。人件費総額や人件費率を抑えるためのポイントは、主に以下のとおりです。

  • 経営でコントロールできるもの・できないものに分類
  • 売上高を伸ばす
  • 人事制度・評価制度を見直す
  • システム導入などで業務の効率化を図る

各ポイントを解説します。

経営でコントロールできるもの・できないものに分類

人件費には、会社の経営でコントロールできるものと、できないものがあることをあらかじめ理解しておくことが大切です。

会社でコントロールできる人件費の例として、各種手当が挙げられます。たとえば、残業・休日出勤をしないような仕組みを作ることで、人件費を従来よりも抑えられる可能性があるでしょう。残業を減らすことが、結果的に離職率の低下につながることもあります。

一方、法定福利費は会社でコントロールできません。なぜなら、保険料率があらかじめ法律で定められているためです。

売上高を伸ばす

人件費の総額が増加しても、それに見合うだけの売上高を上げていれば問題ありません。人件費率・一人当たり売上高・一人当たり経常利益などの指標は、人件費を削減せずとも売上高を伸ばすだけで改善することがあります。

従業員を今より増やさずに、売上高を伸ばす方法は主に以下のとおりです。

  • 商品単価を上げる
  • 既存顧客にアピールする
  • 新規顧客を開拓する

たとえ売上を伸ばせなくても、人件費以外にかかる費用を圧縮することで利益を改善することが大切です。

人事制度・評価制度を見直す

人事制度・評価制度を見直すことで、人件費の総額を抑制したり、人件費率を改善したりできることがあります。

その際、「生産性が低いのにもかかわらず給与が高い従業員・部署」「生産性が高いが給与は低い従業員・部署」を見極めることが大切です。ただし、総務・経理のように、生産性を数字で表しにくい部署もあるため注意しましょう。

人事評価の変更により、従業員が「今までより適切に評価してもらえる」と感じてモチベーションが上がれば、結果として労働生産性の向上にもつながります。

システム導入などで業務の効率化を図る

システムを導入することにより、業務効率化を図れば人件費を削減できます。業務効率化につながるシステムの代表例が、会計ソフトや給与計算・年末調整・勤怠管理ソフトなどです。システム導入により管理部門にかかるコストを削減することで、人件費を削減したり売上に直結する部門にリソースを投入したりできるでしょう。

なお、今回紹介した方法以外にも、アウトソーシングを活用して従業員の業務を減らし、人件費を削減するなどの方法があります。

人件費削減時の注意点

人件費を削減することは利益拡大・改善につながりますが、以下の点に注意が必要です。

  • 従業員のモチベーションを下げる可能性がある
  • 人材不足に陥る可能性がある

それぞれ詳しく解説します。

従業員のモチベーションを下げる可能性がある

各種手当を減らしたり、福利厚生をなくしたりしていくと従業員のモチベーションを下げる可能性があります。たとえ人件費を削減できても、従業員のやる気を削いで労働生産性まで下がってしまうと、会社の経営は悪化するでしょう。

人件費を大幅に削減したことが外部に伝わり、自社の信頼や評判を損ねることもありえます。人件費を削減する際は、段階的に進める、丁寧に事情を説明するなど配慮が必要です。

人材不足に陥る可能性がある

人件費を削減すると、人材不足に陥る可能性がある点に注意しましょう。

たとえば、人件費圧縮のために人員を削減した場合、残された従業員にかかる負担が重くなります。その結果、残された従業員も退職を決断しかねません。

また、給与・賞与を競合他社と比較して上げないままでいると、優秀な人材を採用することが難しくなるでしょう。

なお、今回紹介した注意点以外に、そもそも人件費削減には法的リスクが伴うことにも理解が必要です。

人件費まとめ

人件費とは、事業の中で従業員(ヒト)に対してかかる費用のことです。給与・賞与・各種手当などが人件費に該当します。

会社経営において、自社の人件費が適正な水準にあることが重要です。そのときに活用する指標として、人件費率や労働分配率、労働生産性などが挙げられます。

分析する中で自社の人件費が過大なことが判明したら、人事制度を見直したりシステム導入で業務の効率化を図ったりすることで改善しましょう。ただし、急な人件費削減は従業員のモチベーション低下や人材不足を招きかねないため注意が必要です。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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