租税公課とは何か~対象になるもの、ならないもの、仕訳例~

更新日:2024年03月03日

租税公課

租税公課とは、国税や地方税などの税金である「租税」と、国や公共団体などに対する交付金や会費などの公的な課金である「公課」を合わせた勘定科目を指します。項目によって、対象にならないものがあるため注意が必要です。

本記事では、租税公課の例や仕訳方法を解説します。

目次

租税公課とは?

租税公課とは、「租税」と「公課」を組み合わせた勘定科目を指します。租税は国税や地方税などの税金、公課は国や公共団体などに対する交付金や会費などの公的な課金のことです。

原則として、租税公課として支出したものは必要経費として計上できます。ただし、納めた税金や公的な負担が、すべて租税公課に該当するわけではない点に注意が必要です。

租税の対象になるものの例

租税の対象になるものの例は、以下のとおりです。

  • 登録免許税
  • 印紙税
  • 固定資産税
  • 不動産取得税
  • 自動車税(軽自動車税)
  • 消費税(税込方式)
  • 事業税
  • 事業所税
  • 都市計画税

登録免許税は、不動産の所有権を移転する際の登記手続きに課される税金です。印紙税は、契約書などを作成するにあたって、定められた収入印紙を貼り付けることで納付します。

事業所税は、人口30万人以上の都市において、都市環境の整備・改善に関する事業にあてるため、事業者に課す税金です。

公課の対象になるものの例

公課の対象になるものの例は、以下のとおりです。

  • 印鑑証明書や住民票の発行手数料
  • その他公共サービスに対する手数料
  • 地方公共団体や同業者組合などの会費、組合費、賦課金

「印鑑証明書や住民票の発行手数料」は、印鑑証明書や住民票を取得する際に、役所などで支払う金額のことです。自治体によって、コンビニで取得できるケースもあります。

また、「地方公共団体や同業者組合などの会費、組合費、賦課金」の具体例は、商工会に払う会費や協同組合に払う組合費などです。

※自宅や車を公私で兼用している場合は按分する

個人事業主は自宅と事務所が兼用だったり、車を公私兼用していたりするケースもありますが、このような場合の固定資産税や自動車税は、個人での使用分と事業での使用分とで按分して処理する必要があります。

租税公課の対象にならないもの

必要経費として認められている税金や公的負担金は租税公課になりますが、納めている税金・公的負担金をすべて経費として計上できるわけではありません。上述した「租税公課の対象になるもの」に該当するものであっても、事業そのものに関連しない税金・公的負担金は経費として認められません。租税公課の対象にならないものとしては、主に以下のようなものが挙げられます。

  • 法人税 、都道府県民税、市町村税
  • 各種加算税や加算金、延滞税や延滞金、過怠税
  • 罰金、科料
  • 法人税から控除する所得税や外国法人税

法人税は、会社の所得に対してかかる税金のことです。加算税は、適正に申告しなかった場合や、源泉徴収義務を怠った場合などに加算されるペナルティのことを指します。

また、罰金や科料は行政上の決まりを違反した際に課される、刑法上の罰のことです。

※個人の税金は租税公課にならない

たとえば、個人事業主の所得税・住民税などは、事業主個人にかかる税金なので租税公課にはなりませんし、罰金や延滞税など、罰則的な意味合いを持つものも経費として認められません。

租税公課の計算方法(例)

ここから、租税公課の計算例として個人事業税や固定資産税を計算する方法を解説します。

個人事業税の計算方法

個人事業税とは、個人が営む事業のうち、地方税法で定められた事業(法定業種)に対してかかる地方税のことです。個人事業税は、以下の式で求められます。

個人事業税 =(所得(収入-必要経費)- 事業主控除)× 法定業種ごとに定められた税率

事業主控除は、年間290万円です。そのため、所得が590万円、対象の業種の税率が5%の場合、個人事業税は15万円と計算できます((590万円 - 290万円)× 5%)。

固定資産税の計算方法

固定資産税とは、固定資産の所有者が資産価値に応じて算出された税額を市町村に納める税金のことです。固定資産税は、以下の式で計算します。

固定資産税 = 評価額(課税標準額) × 標準税率

標準税率は、1.4%の場合が一般的です。ただし、自治体によって1.4%以外と定めていることもあります。

たとえば、評価額が1,000万円の場合、標準税率が1.4%であれば固定資産税は14万円です。

租税公課の勘定科目で計上するタイミング

租税公課の勘定科目で計上するタイミングは、税金を納める方式によって異なります。申告納税方式・賦課課税方式・特別徴収方式の特徴や、計上するタイミングを確認していきましょう。

申告納税方式の場合

申告納税方式とは、自分で税金の額を計算して申告し、納付する方式を指します。

申告納税方式の具体例は、法人税・所得税・消費税・相続税・法人県民税(法人市民税)・事業税・事業所税・酒税などです。そのうち、事業税・事業所税・酒税などが租税公課の対象に含まれます。

納税の申告書を提出した事業年度が、租税公課として計上するタイミングです。

賦課課税方式の場合

賦課課税方式とは、国や地方公共団体が納めるべき金額を計算し、納税者に通知する方式を指します。

賦課課税方式の具体例は、加算税・過怠税・固定資産税・不動産取得税・都市計画税・自動車税・個人住民税・個人事業税などです。そのうち、固定資産税・不動産取得税・都市計画税・自動車税などが租税公課の対象に含まれます。

賦課決定のあった事業年度が、租税公課として計上するタイミングです。

特別徴収方式の場合

特別徴収方式とは、特別徴収義務者が本来の納税者の代わりに税金を納付する方式です。特別徴収義務者は、本来の納税者から税金分の額を徴収します。

特別徴収方式の具体例は、軽油引取税や入湯税、ゴルフ場利用税などです。納入申告書を提出した事業年度において、租税公課として計上します。

なお、収入金額の中に申告期限未到来の金額が含まれていて、対象の金額を損金経理で未払金に計上した場合、損金経理したときの事業年度が租税公課として計上するタイミングです。

参考:国税庁「No.5300 租税公課等の損金算入の可否と租税の損金算入時期」

消費税を租税公課で計上できる?

消費税は、税込で処理をしている場合は租税公課として計上できますが、税別で処理をしている場合は計上できません。税別で処理している場合は、仮受消費税勘定や仮払消費税勘定を使用します。

租税公課の仕訳例

ここから、消費税・固定資産税・印紙税などのケースに分けて、仕訳例を解説します。

1 消費税のケース

租税公課として計上できるのは、消費税が税込の場合です。5万5千円(うち消費税5千円)で仕入れた商品を11万円(うち消費税1万円)で販売し、消費税5千円(1万円 - 5千円)を納付する際の仕訳例を紹介します。

まず、商品を仕入れる際の仕訳例が以下のとおりです。

借方 貸方 摘要
仕入 55,000円 買掛金 55,000円 A社より〇〇仕入分

続いて、販売した際に以下のように仕訳します。

借方 貸方 摘要
売掛金 110,000円 買掛金 110,000円 B社へ〇〇販売分

決算時に、販売先から預かった消費税と仕入先に支払い済みの消費税の差額分を租税公課として計上しましょう。

借方 貸方 摘要
租税公課 5,000円 未払消費税 5,000円 消費税確定分

2 固定資産税のケース

所有する資産に課された固定資産税(14万円)を普通預金から納付したケースで、賦課決定された事業年度における仕訳例は以下のとおりです。

借方 貸方 摘要
租税公課 140,000円 普通預金 140,000円 固定資産税納付

なお、固定資産税は年4回払いか、一括により納付できます。分割で支払う場合も、基本的な仕訳方法は同じです。

3 印紙税のケース

印紙税は収入印紙を購入することにより、納付します。金額が2,000万円の契約書を作成するにあたって、2万円の収入印紙を現金で購入した場合の仕訳例が以下のとおりです。

借方 貸方 摘要
租税公課 20,000円 現金 20,000円 契約書作成にあたって印紙購入

なお、必要な収入印紙の額は、契約書に記載された金額に応じて異なります。

4 租税公課対象外のケース

租税公課対象外のケースも、参考までに紹介します。今回紹介するのは、法人税を納付する際の例です。

確定申告後、法人税60万円を銀行で普通預金から支払う場合、以下のように仕訳します。

借方 貸方 摘要
法人税等 600,000円 普通預金 600,000円 法人税納付

そのほか、住民税なども租税公課の対象外のため、同じように仕訳が必要です。

租税公課で注意が必要な仕訳例

租税公課で注意が必要な仕訳例は、以下のとおりです。

  • 申告時に未払いの場合
  • 個人事業主で家事按分する場合

それぞれ解説します。

申告時に未払いの場合

不動産取得税や固定資産税のように、分割による支払いが認められている税金を納付する場合、確定申告時に未払いのことがあります。申告時に未払いの場合、その金額を「未払金」として計上することがポイントです。

申告時に、固定資産税6万円を支払っていない場合、以下のように仕訳します。

借方 貸方 摘要
租税公課 60,000円 未払金 60,000円 固定資産税未払分

その後、固定資産税を現金で支払った際には以下の仕訳が必要です。

借方 貸方 摘要
未払金 60,000円 現金 60,000円 固定資産税支払分

個人事業主で家事按分する場合

個人事業主が家事按分する場合、仕訳に注意しましょう。家事按分とは、プライベートと業務を兼ねた支出に対し、業務に該当する部分を所定の比率で経費として計上することです。

店舗兼住宅として使用している不動産(店舗5割・住宅5割)の固定資産税12万円を現金で納付した場合、以下のように仕訳します。

借方 貸方 摘要
租税公課 60,000円 現金 120,000円 固定資産税支払分
事業主貸 60,000円

租税公課まとめ

租税公課とは、「租税」と「公課」を組み合わせた勘定科目のことです。

原則として、租税公課として支出したものは必要経費に計上できます。ただし、法人税や住民税のように、対象外の税金がある点に注意しなければなりません。

税金を納付した場合や公的サービスを利用した場合は、租税公課に該当するか確認した上で仕訳しましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

無料の会計ソフト「フリーウェイ」

このエントリーをはてなブックマークに追加