FXの確定申告はいくらから?やり方、書き方、必要書類も紹介

更新日:2024年02月21日

FXの確定申告

FXで一定の利益を超えると、給与所得者でも所得税の確定申告をしなければなりません。不要な場合でも、状況次第で確定申告した方がよいことがあるでしょう。

本記事では、FXでいくらから確定申告が必要か、そのやり方について詳しく解説します。

参考)FXとは

目次

FXの確定申告とは

FXの確定申告とは、時期が到来したときにFXで得た利益について納税額を計算するために確定申告することです。ここから、FXと確定申告の概要について解説します。

FXとは

FXとはForeign Exchange(外国為替)を略した言葉です。そのため、本来特定の国の通貨を別の国の通貨に交換することを指します。

ただし、日本ではFXを「外国為替証拠金取引」の意味で使うことが一般的です。外国為替証拠金取引は、証拠金を預けることで用意した資金よりも高額で外国為替取引をできることが主な特徴として挙げられます。

FXで期待できる利益は、為替差益とスワップポイントです。為替差益は各国通貨のレートの差から生じる利益、スワップポイントは各国の金利差から生じる利益を指します。

スワップポイントは、通貨を保有している限り毎日受け取り可能です。ただし、交換した通貨の方が交換する前の通貨よりも低金利の場合、スワップポイントを支払わなければなりません。

確定申告とは

所得税の確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額と、それに対する所得税の額を計算し、源泉徴収された税金や予定納税額などがある場合に過不足を精算する手続きのことです。源泉徴収とは、給与や報酬を支払う側があらかじめ所得税分を引いて支給すること、予定納税とは所得税をあらかじめ払う仕組みを指します。

一般的に、収入から経費などを差し引いたものが「所得」です。確定申告では、以下10種類の所得を申告します。

控除できる金額や計算方法が異なるため、どの所得に該当するか理解した上で確定申告しなければなりません。

参考)確定申告とは

FXで得た利益は基本的に雑所得として税金がかかる

基本的に、FXで得た利益は雑所得として所得税や住民税が課せられます。ここから、FXでかかる税率や課税対象になる範囲などについて確認していきましょう。

FXにかかる利益に対する税率

FXにかかる税率は、所得の金額にかかわらず一律で20%(所得税15%、住民税5%) です。ただし、2037年まで、所得税に対して2.1%の復興特別所得税も納めなければなりません。復興特別所得税を含めた税率は、20.315%です。

なお、給与所得や事業所得などに対してかかる税率は、超過累進課税率のため所得によって異なります。

参考)国税庁「No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」

FXで課税対象になるもの

FXで得た収益がすべて課税されるわけではありません。FXで課税対象になる金額(FXの利益)は、以下の式で求められます。

FXの利益 = 為替差益 + スワップポイント ー 必要経費

たとえば為替差益が50万円、スワップポイントが6万円、必要経費が1万円の場合、課税対象になるのは55万円(50万円 + 6万円 ー1万円)です。そのため、かかる税金は約11万1千7百円(55万円 × 20.315%)と計算できます。

参考)為替差益とは

FXで経費として計上できるもの

FXのために支出した費用であれば、基本的に経費計上できます。主な例は、以下のとおりです。

  • FXに関する書籍購入費用
  • FXのセミナー受講費
  • PC購入費用
  • FX取引に利用するためのインターネットプロバイダ料金
  • 家賃

ただし、PC購入費用やインターネットプロバイダ料金、家賃など、プライベートと共有している場合は家事按分に注意しなければなりません。家事按分とは、プライベートと業務両方で使うために支出した費用について、業務で使用する割合のみ経費計上が認められる制度です。

たとえば、住居の一室をFX専用ルームとして使用している場合、部屋の面積に応じた割合のみFXの経費として計上できます。

FXで利益が出た場合にいくらから確定申告が必要?

FXで利益が出たからといって、すべて確定申告が必要なわけではありません。FXで利益が出た場合に、いくらから確定申告が必要か、ケースごとに説明します。

確定申告が必要なケース

そもそも、FXに限らず以下に該当する場合は確定申告しなければなりません。

  • 給与の収入が2,000万円を超える
  • 給与を1か所から受けていて、全額が源泉徴収の対象となる場合に、給与所得・退職所得以外の所得合計額が20万円を超える
  • 給与を2か所から受けていて、年末調整されなかった給与の収入と、給与所得・退職所得以外の所得合計額が20万円を超える

つまり、今まで確定申告していなかった会社員でも、FXの利益が20万円を超えると確定申告が必要です。また、FXの利益が20万円以下でも、本業以外の給与や事業所得などと合わせると20万円を超える場合は、確定申告しなければなりません。

参考)国税庁「確定申告が必要な方」

確定申告が不要なケース

年末調整で所得税額が確定し、納税も完了するため、本来大部分の給与所得者は確定申告が不要です。国税庁の発表によると、2021年に1年を通じて勤務した給与所得者5,270万人のうち、4,894万人(92.9%) が年末調整しています。

そのため、年末調整している給与所得者(給与収入2,000万円以下)は、給与所得・退職所得以外の所得合計額が20万円以下であれば、FXをしていても原則として確定申告不要です。

また、基礎控除の制度があるため、学生や専業主婦(夫)などFX以外に収入がない場合は利益48万円 までは確定申告が不要です。

確定申告が不要なケースでも、住民税の申告義務が生じることはあります。住民税の申告とは、1月1日時点で住民登録をしている市区町村に対して、前年の所得を申告する作業のことです。

たとえば、神奈川県横浜市では、「1か所から給与の支払を受けており、給与所得以外の所得の合計額が20万円以下 」を住民税申告の要件のひとつに挙げています。つまり、確定申告が不要な給与所得者でも、FXで利益を出していれば住民税の申告が必要です。

参考)国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告-」
参考:国税庁「No.1199 基礎控除」
参考:横浜市「市民税・県民税の申告について」

FXで損失が出た場合も確定申告した方がよい理由

FXで損失が出た場合も確定申告はした方がよいでしょう。主な理由として、以下の点が挙げられます。

  • 損益通算できる
  • 繰越控除できる

それぞれの理由について、詳しく解説します。

損益通算できる

損益通算できる点が、FXで損失が出たとしても確定申告した方がよい理由として挙げられます。損益通算とは、損失分を同じ年に出た利益と相殺できる制度のことです。

FXの利益に対しては、申告分離課税(他の所得と合計せず分離して税金を計算する制度)が適用になるため、総合課税である給与所得や事業所得などと損益通算はできません。ただし、「先物取引に係る雑所得等」に該当する商品とは損益通算が可能です。

先物取引に係る雑所得等は、FX以外に商品先物取引・有価証券先物取引などが含まれます。たとえば、FXで損失が出たときに確定申告すれば、同年に利益を出した有価証券先物取引と損益通算可能なため、税金を抑えられるでしょう。

繰越控除できる

繰越控除できる点も、確定申告した方がよい理由として挙げられます。繰越控除とは、損益通算で控除しきれなかった損失を、最長3年間にわたって利益と通算できる制度です。

例として、FXで100万円の損失が発生したケースを考えましょう。他に「先物取引に係る雑所得等」の商品に投資はしていないことと仮定します。

翌年(1年目)、FXで20万円の利益を得たとしても繰越控除により課税対象は0円です。また、その次の年(2年目)に30万円の利益が生じた場合でも、まだ控除分(80万円)が残っているため、税金がかかりません。

さらに、最後の年(3年目)にFXで50万円の利益が出ても、同額控除分があるため課税対象は0円です。

ただし、毎年確定申告していなければ、繰越控除を適用できなくなることに注意しましょう。先ほどのケースで、仮に2年目にはFXをまったくしなかったとしても、確定申告をやめてしまうと、3年目に利益が出たときに損益通算できません。

参考)国税庁「No.1523 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」

FXで確定申告する際の必要書類4つ

FXで確定申告するにあたって、必要な書類は主に以下4つです。

  1. 申告書第一表・二表・三表
  2. 所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)
  3. FXに関する損益報告書
  4. 本人確認書類

各書類の内容について、詳しく解説します。

1. 申告書第一表・二表・三表

確定申告書第一表は、「収入金額」「所得金額」「所得から差し引かれる金額」「税金の計算」などを記載する書類です。給与所得者の場合、主な内容は勤務先から受け取る源泉徴収票を参考に記載できます。

確定申告書第二表は、「所得の内訳」「配偶者や親族に関する事項」などを記載する書類です。保険料について詳しく記載する欄もあります。

確定申告書第三表は、分離課税用に「収入金額」「所得金額」「所得から差し引かれる金額」「税金の計算」などを記載する書類です。FXの利益は分離課税の対象のため、提出しなければなりません。

確定申告書第一表・第二表・第三表の様式は、国税庁のホームページから入手できます。確定申告時期になってから、最新版をダウンロードしましょう。

参考)国税庁「所得税の確定申告」

2. 所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)

所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)とは、「先物取引に係る雑所得等の金額」や「翌年以後に繰り越される先物取引に係る損失の計算」などを記載するための書類です。FXで損失が出ていて、繰越控除を適用するためには、「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」と一緒に確定申告時に提出しなければなりません。

いずれの書類も、国税庁のホームページから入手できます。

3. FXに関する損益報告書

FXに関する損益報告書(年間取引報告書)とは、FXで得た年間の損益が記載された書類のことです。書類には、「売買損益」「スワップ損益」「その他損益」「取引損益」「手数料」などが記載されています。

FXに関する損益報告書は、年明けにFX業者のサイトでダウンロードすることが一般的です。業者によって、依頼することで郵送対応しているケースもあります。

4. 本人確認書類

確定申告では、本人確認書類として番号確認できる書類と身元確認できる書類を用意しなければなりません。

対面で提出する場合、番号確認書類は以下のとおりです。

  • マイナンバーカード(個人番号カード)
  • 通知カード*2020年5月25日に廃止(氏名・住所が住民票記載内容と一致している場合に限り有効)
  • 住民票の写し(番号付き)

また、主な身元確認書類として、以下が挙げられます。

  • マイナンバーカード(個人番号カード)
  • 身分証明書(運転免許証やパスポートなどの写真付き証明書)

つまり、マイナンバーカードを持参すれば、一枚だけでどちらの役割も果たします。

なお、郵送する場合も、対面と同様の書類をコピーしたものの添付が必要です。

参考)国税庁「番号法令、国税庁告示における主な本人確認書類等」

FXで確定申告するやり方・書き方

FXで確定申告するやり方の流れは、以下のとおりです。

  1. 書類を準備する
  2. 申告書第一表に記入する
  3. 申告書第二表に記入する
  4. 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書に記入する
  5. 申告書第三表に記入する
  6. 確定申告書を提出する

今回は、会社員がFXで利益を出した場合の具体的なやり方や、書き方を確認していきましょう。

1. 書類を準備する

確定申告時期が近づいたら、必要書類を準備しましょう。FX以外にも所得があったり、所得控除を適用したりするものがあれば、紹介した4つの必要書類以外の書類も用意しなければなりません。

たとえば、1年目の住宅ローン控除を適用する場合は住宅ローンの年末残高証明書、ふるさと納税した場合は寄付を証明する書類(受領書)、保険料控除を適用するには保険料控除の証明書などが必要です。

2. 申告書第一表に記入する

勤務先から受け取った源泉徴収票を確認しながら、第一表に記入していきます。

今回のケースで「収入金額等」に記載するのは源泉徴収票の「支払金額」です。「所得金額等」には、年間の所得(今回は給与所得)を記載します。記載するのは、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」です。

「所得から差し引かれる金額」には、源泉徴収票の「社会保険料の金額」を記載します。そのほかにも、対象の所得控除があれば記載しましょう。

なお、第一表の右側は、他の書類を作成してから記載します。

3. 申告書第二表に記入する

源泉徴収票や保険料控除の証明書などを見ながら、第二表に記入します。まず、「所得の内訳」に、源泉徴収票の「支払金額」や「源泉徴収額」を記載しましょう。

また、「保険料控除に関する事項」には、源泉徴収票の「社会保険料等」の金額を記載します。それ以外に適用する生命保険料控除などがある場合は、保険料控除の証明書を参考に記入が必要です。

「住民税・事業税に関する事項」は、納付方法に関連する事項です。自分で納付する場合は「自分で納付」に◯をつけましょう。

4. 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書に記入する

FXに関する損益報告書を見ながら、先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書に記入します。

「取引の内容」の「種類」に「外国為替取引」、「決済の方法」には「仕切」と記入しましょう。ひとつの口座で取引している場合は、「決済年月日」や「数量」への記載は不要です。

「総収入金額」は、「差金等決済に係る利益又は損失の額」に為替損益、「その他の収入」にスワップポイントと記入します。金額は、損益報告書を確認しましょう。

FXで経費計上できるものがあれば、「必要経費等」に記載します。「所得金額」は、今まで記入・計算した金額をもとに記載しましょう。

5. 申告書第三表に記入する

作成した先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書や第一表を参考に、第三表に記入します。

「収入金額」には、先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書の「総収入金額(4)」を転記しましょう。また、「所得金額」の「先物取引」には「所得金額(12)」の金額を転記します。

「税金の計算」の「総合課税の合計額(12)」と「所得から差し引かれる金額(29)」は、第一表の同じ番号の部分(12)・(29)の数字を記載してください。

続いて、「(12)対応分」に「総合課税の合計額(12)」から「所得から差し引かれる金額(29)」を引いた額を記入します。そして「(74)対応分」に、「所得金額」の「先物取引」に記載した数字を記入しましょう。

第三表右側の「税金の計算」「税額」には、所得に対してかかる税額を記載します。第一表に記載した所得の税額を計算して、「(77)対応分」に記載しましょう。所得にかかる税率や控除額は、国税庁のホームページで確認してください。

FXの税金を記載する場所は、「(82)対応分」です。「(74)対応分」に記載した数字に、所得税率15%をかけた金額を記載してください。

確定申告書第三表までの記載が完了したら、第一表の右側を埋めていきます。「上の(30)に対する税額又は第三表の(93)」に第三表の(93)に記載した数字を転記しましょう。

最後に、計算した所得税額に2.1%をかけた復興特別所得税を「復興特別所得税額」に、所得税と復興所得税の合計額を「所得税及び復興特別所得税の額」に記載します。

なお、今回は合計額などの説明を一部省略しました。また、「(令和4年分以降用)」と記載された申告書を前提に解説しています。実際に確定申告する際は、最新の帳票を用いて、記入した各数字を転記したり、計算したりするようにしてください。

6. 確定申告書を提出する

確定申告書が完成したら、税務署などに提出しましょう。提出方法は、以下の3つです。

  1. スマートフォン・PCで自宅などからe-Taxで送信する
  2. 郵便などで所轄の税務署に確定申告書を送付する
  3. 所轄税務署の窓口に確定申告書を持参する

e-Tax(国税電子申告・納税システム)とは、インターネットを通じて税金に関する手続きを進められるシステムです。e-Taxのメリットとして、税務署に行ったり郵送したりする手間が省ける、メンテナンス時間以外であれば24時間いつでも対応できるなどが挙げられます。

また、確定申告した所得税を納付しなければなりません。納付にはインターネットバンキングを利用する方法、QRコードやバーコードでコンビニ納付する方法、金融機関窓口で納付する方法など、さまざまな手段があります。

FXの確定申告で理解しておくべきこと

FXの確定申告で、理解しておくべきポイントは以下のとおりです。

  • 確定申告には期限がある
  • 雑所得のFXでは青色申告できない

それぞれ解説します。

確定申告には期限がある

確定申告には期限があるため、失念しないようにしましょう。確定申告も納付も、原則として翌年2月16日から3月15日までが期限です。

確定申告が遅れた場合、納付すべき税額に対して50万円までの部分に15%、50万円を超える部分に20% をかけた金額が無申告加算税としてさらに課されます。

また、納付が遅れたことに対して、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が自動的に課される点にも注意しましょう。

参考)国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」

雑所得のFXでは青色申告できない

専業の場合を除き、FXの利益は雑所得に該当するため、確定申告の際に青色申告できない点にも注意しましょう。

青色申告とは、日々の取引を所定の帳簿に記載し、それに基づいて正しく申告することで特典を受けられる制度です。FXの場合は青色申告ができないため、所得金額から最高65万円を差し引くなどの特典を受けられません。

FX確定申告まとめ

今回は、初心者の方にも分かりやすくFXの確定申告について解説しました。FXで得た利益は雑所得として所得税や住民税が課せられます。給与所得者であっても、FXで20万円を超える利益が出た場合は、確定申告しなければなりません。損失が出た場合は、確定申告時に繰越控除することで翌年以降に繰り越せます。ただし、適用するためには、所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)などの提出が必要です。

FXを始めた方は、早めに書類を準備して確定申告に備えましょう。自分で申告するのが不安な方は、税理士に相談するのも一つの選択肢だと思います。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

無料の会計ソフト「フリーウェイ」

このエントリーをはてなブックマークに追加