財団法人とは?一般・公益の特徴や社団法人との違いも解説

更新日:2025年07月04日

財団法人

財団法人とは、特定の目的のために拠出された財産に対して付与される法人格を指します。公益認定を受けているかどうかが、一般財団法人と公益財団法人の違いです。本記事で、財団法人のメリット・デメリットや、設立手順についても押さえておきましょう。

目次

財団法人の種類

財団法人は「一般財団法人」と「公益財団法人」に分類できます。

公益財団法人は、一般財団法人が公益認定の申請をして、認定を受けた財団法人のことです。また、一般財団法人は「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」、公益財団法人は「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」に則っています。

具体例は、奨学金事業や文化振興事業を担う団体など(一般財団法人)、国家試験を運営する団体など(公益財団法人)です。

財団法人(一般財団法人・公益財団法人)とは

財団法人(一般財団法人・公益財団法人)とは、財産の集まりに対して付与される法人格のことです。ここから、財団法人の設立目的と運営方法について解説します。

設立目的

財団法人は、特定の目的のために拠出された「財産」を活用して何らかの事業を行うことを目的に設立される法人です。 

一般財団法人の場合、細かな活動内容は問われません。公序良俗や法律に反しない範囲であれば、公益的な事業はもちろん、収益を目的とした事業を行うことも可能です。

一方、公益財団法人の場合は、公益性の高い事業を営むことを目的としなければなりません。公益性とは、「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与すること」です。「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」の第二条第四号および別表では、公的目的事業の具体例として、学術や科学技術の振興・文化や芸術の振興・高齢者の福祉増進などを目的とする事業を挙げています。

参考)e-Gov 法令検索「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律 第二条」

運営方法

財団法人は、以下の役職や機関で運営されています。

  • 理事
  • 理事会
  • 評議員
  • 評議員会
  • 監事
  • 会計監査人

理事とは、財団法人の業務を執行する役割を担う立場のことです。財団法人を設立するには少なくとも、3人いなければなりません。

理事会とは、財団法人における業務執行の意思決定機関です。一定の事項については、理事会が選出した代表理事に業務執行の権限を委ねられます。

評議員とは、評議員会で計算書類の承認や定款変更などの重要事項を決定する権限を持つ人のことです。

監事とは理事の職務執行の監査を実施する人で、会計監査人は財団法人が作成する計算書類を監査する人のことです。財団法人において監事は必ず置かなければなりません。ただし、会計監査人の設置義務があるのは、一定規模以上の財団法人に限られます。

一般財団法人・公益財団法人と他の法人の違い

財団法人(一般財団法人・公益財団法人)と混同しやすい主な法人が、社団法人(一般社団法人・公益財団法人)やNPO法人です。財団法人と各法人の違いについて、ここから解説します。

一般社団法人・公益社団法人との違いとは

財団法人(一般財団法人・公益財団法人)と社団法人(一般社団法人・公益社団法人)の主な違いは、法人格を与えられる対象です。財団法人は財産に対して法人格を与えられるのに対し、社団法人は人の集まりに対して法人格が与えられる点で異なります。

また、財産の拠出要件も違いがあり、財団法人を設立するには300万円以上の財産の拠出が必要であるのに対し、社団法人の設立には拠出が求められていません。

さらに、評議員で構成される評議員会が存在しない点も、社団法人が財団法人と異なる点です。社団法人には評議会が不要ですが、社員で構成される社員総会を行う必要があります。

そのほか、一般社団法人は監事の設置が不要な点にも違いがあります。ただし、公益社団法人は監事を設置しなければなりません。

なお、財団法人と同様に、公益認定を受けているかによって、「一般」社団法人と「公益」社団法人を区別します。

NPO法人との違いとは

NPO法人との違いとして重要なのが法人格を与えられる対象の違いです。財団法人は財産に対して法人格が与えられるのに対して、NPO法人は人の集まりに対して法人格が与えられます。

NPO(Non-Profit Organization)とは、金銭的な利益を得る目的とせず、社会貢献するために活動する団体のことです。そのうち、特定非営利活動促進法(NPO法)に基づき法人格を取得した団体を「NPO法人」と呼びます。

また、税制上の優遇措置に関する認定を受ける際の手続きも、財団法人とNPO法人の異なる点です。一般財団法人が税制上の優遇措置を受けるために公益認定を受けるには、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」で定められた基準を満たさなければなりません。一方、NPO法人が優遇措置を受けるために認定NPO法人制度の認定を受けるには、NPO法で定められた基準を満たす必要があります。

財団法人を設立するメリット

財団法人を設立することの主なメリットは、以下のとおりです。

  • 社会的な信用を得やすくなる
  • 設立に手間がかからない(一般財団法人の場合)
  • 税制上の優遇を受けられる(公益財団法人の場合)

各メリットについて、解説します。

社会的な信用を得やすくなる

社会的な信用を得やすい点は、財団法人を設立する大きなメリットの一つです。

財団法人を設立すると、法人格を与えられます。法人格とは、一定の要件を満たす組織や財産に対して、法律上、人と同様の権利義務が認められるものです。。

法人格があれば法人名義で活動ができるため、新規取引を開始する際や人材採用する際などの場面において、個人の場合よりも相手に安心感を与えやすい傾向にあります。また、銀行口座を法人名で開設できる点も強みです。

さらに、公益財団法人は厳しい審査を通過しないと設立できないため、「公益性が認められた法人」として、より一層の社会的信頼を得やすくなります。

設立に手間がかからない(一般財団法人)

一般財団法人の場合は、設立に手間がかからない点がメリットです。一般財団法人は、定款の認証・登記申請などで設立手続きが完了するため、事業内容によって関連する行政庁の許認可を得るなどの必要がありません。

また関連するメリットとして、設立コストを抑えられる点も一般財団法人を設立する際のメリットです。株式会社の設立登記には、資本金額に対して0.7%の登録免許税がかかります(税額が15万円未満の場合は申請1件につき15万円)。それに対して、一般財団法人を設立する際にかかる登録免許税は、1件につき6万円となっており比較的低コストで設立することが可能です。

参考)中小企業庁「登録免許税法」

税制上の優遇を受けられる(公益財団法人)

公益財団法人を設立する場合は、税制上の優遇を受けられる点がメリットです。公益財団法人は、公益目的の事業から生じた所得に対して課税されません。

さらに、個人が公益財団法人に対して寄附をする場合も、一定額について寄附金控除か税額控除を適用できます。そのため、公益財団法人は寄附を募りやすい仕組みとなっています。

なお、一般財団法人の場合でも、法人税法上で非営利型法人の要件を満たす「非営利型」に該当する場合は、収益事業以外の所得について法人税が非課税です。

参考)国税庁「一般社団法人・一般財団法人と法人税」

財団法人を設立するデメリット

財団法人を設立することのデメリットとして、利益を分配できない点が挙げられます。また、とくに公益財団法人の場合は、設立までのハードルが高い点・事業が制限されている点もデメリットです。

ここから、財団法人を設立するデメリットについて、それぞれ解説します。

利益を分配できない

財団法人を設立するデメリットの一つに、利益を構成員に分配できない点が挙げられます。

財団法人は、社団法人と同様に「非営利」の法人です。非営利とは、利益を団体の構成員に分配しないことを指します。そのため、財団法人は株式会社のように剰余金や残余財産(清算手続きで債権者に弁済したあとに残る金銭上の価格)を分配することはできません。

なお、財団法人は「財団」に対して法人格を与えられた組織のため、そもそも分配する構成員が存在しないという特徴もあります。

設立までのハードルが高い(公益財団法人)

公益財団法人の場合は、設立までのハードルが高い点がデメリットです。公益財団法人を設立するにあたっては、まず一般財団法人を設立したうえで、公益法人の認定を受けなければなりません。

公益認定を受けるには、法律で定められた18の公益認定基準を全て満たすことや、6つの欠格事由に該当しないことなどが必要です。そのため、認定を受けるまでの準備や審査対応に多くの時間や労力をかけなければなりません。

また、公益財団法人を設立してからも、定期的に事業や財務状況を報告するなどの手間がかかります。

事業が制限されている(公益財団法人)

公益財団法人は、事業が制限されている点もデメリットとして挙げられます。

公益財団法人が主に営めるのは、学術・科学技術・芸術の振興など法律で定められている23の公益目的事業のみです。ただし、対象外の事業でも、公益目的事業に支障を及ばさない範囲であれば運営できます。対象外の事業から得た収益に対しては、課税の対象です。

なお、一般財団法人の場合は、公序良俗や法律に反しない限りは、どの事業でも運営できます。そのため、主とする事業を踏まえて、一般財団法人のままでいるか、公益財団法人に移行するか判断するとよいでしょう。

一般財団法人を設立する流れ

一般財団法人は、以下の流れで設立することが一般的です。

  1. 定款を作成して公証役場で認証を受ける
  2. 設立者が財産を拠出する
  3. 設立時理事・設立時監事が調査を実施する
  4. 登記申請する

各手順の内容について、詳しく解説します。

1. 定款を作成して公証役場で認証を受ける

一般財団法人を設立するためには、まず財産を拠出する人が設立者として定款を作成しなければなりません。定款とは、法人のルールなどを定めた書類のことです。

定款には、以下の絶対的記載事項を記載します。

  • 目的
  • 名称(必ず「一般財団法人」の文字が必要)
  • 主たる事務所の所在地
  • 設立者の氏名もしくは名称・住所
  • 設立者が拠出する財産とその価額
  • 設立時の評議員・理事や、理事の選任に関する事項
  • 評議員の選任・解任の方法
  • 公告の方法
  • 事業年度

定款を作成したら、公証役場で認証を受けます。認証とは、定款が正式な手続きにしたがって作成されたことを公証人が証明することです。

定款の認証を受ける際には、法人の種類によって所定の費用がかかります。一般財団法人の場合、定款認証の手数料は5万円となっています。

参考)日本公証人連合会「公証事務 12 手数料」

2. 設立者が財産を拠出する

定款の認証を終えたら、設立者が300万円以上の財産を拠出する必要があります。また、設立後も純資産額が2事業年度続けて300万円を下回ると財団法人を解散しなければならないため、余裕を持った金額を拠出しましょう。

財産の拠出は、代表者の個人口座(設立者が1人の場合は本人の口座)への銀行振込によって行います。振込後は、明細と一緒に払い込みを証明する書類が必要です。

なお、法人登記の申請時に、財産の拠出があったことを証明する書面の提出が求められます。

3. 設立時理事・設立時監事が調査を実施する

設立者が財産を拠出したら、設立時理事と設立時監事が調査を実施します。設立時理事・設立時監事や、評議員を選任する流れは、以下のとおりです。

  1. 作成した定款の内容に則り、定款附則に氏名を記載する
  2. 選任された人が承諾する
  3. 就任承諾書を作成する

調査時に、設立時理事と設立時監事は、「財産の拠出が完了しているか」「違反はないか」など設立手続きについての確認が必要です。なんらかの問題が発覚した場合は、設立者に知らせなければなりません。

なお、就任承諾書とは、役員に選ばれた人が就任を承諾したことを証明するための書類です。作成日・役員の住所・役員の氏名・法人名・選任日・承諾の旨などを記載します。また、役員の押印も必要です。

4. 登記申請する

設立時役員による調査が完了したら、代表理事もしくは代理人が法務局で登記申請します。調査完了日もしくは設立者が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内に、申請しなければなりません。

申請に必要な書類は、申請書・認証済定款・就任承諾書・財産の拠出があったことを証明する書面・代表理事の印鑑証明書などです。申請用総合ソフトの利用が可能で電子証明書を所有している場合、オンラインでも申請できます。

参考)法務省「一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A」

一般財団法人を公益財団法人に移行する流れ

設立した一般財団法人を公益財団法人に移行するためには、以下の手順を踏まなければなりません。

  1. 要件を満たしていれば公益認定申請をする
  2. 公益法人の認定を受けたら登記申請する

それぞれ解説します。

1. 要件を満たしていれば公益認定申請をする

一般財団法人から公益財団法人への移行を検討している場合は、現在の法人が公益認定の要件を満たしているのかを確認しましょう。公益財団法人になるには、以下の要件を満たしていなければなりません。

【主な認定要件】

  • 目的や事業(「公益目的事業を主とするか」「公序良俗に違反していないか」など)
  • 財務関連(「公益目的事業の占める割合が50%以上か」「遊休財産額が1年間にかかった公益目的事業費を超えていないか」など)
  • 機関関連(「相互に密接な関係にある理事・監事が総数の3分の1を超えていないか」「適正な報酬基準に従って役員報酬を支給しているか」など)
  • 財産関連(「他の団体の意思決定に関与できる株式や、その他の内閣府令で定める財産を保有していないか」など)

要件を満たしていれば、公益認定を申請します。電子申請なら、スムーズに手続きができて便利です。

参考)内閣府「公益法人 information 申請に役立つ各種資料」

2. 公益法人の認定を受けたら登記申請する

公益認定の申請後、第三者委員会審査を経て行政庁による公益認定を受けたら、登記を申請します。

「一般財団法人」の名称を「公益財団法人」に変更したり、公益認定を受けるために変更した事業内容を反映したりするために、登記申請が必要です。申請時には、公益認定を受けたことを証明する書面(認定書など)を添付が必要です。

なお、公益財団法人の設立登記については、登録免許税の課税対象外です。
これは公益性を考慮した特例措置であり、設立にかかる負担軽減のひとつといえます。

財団法人の活用事例

財団法人は、さまざまなケースにおいて活用できるでしょう。

たとえば、株式会社などの会社形態で事業を営んでいる経営者が、社会貢献活動をしたいと考えた場合に、財団法人を活用する事例があります。自身の財産を拠出して財団法人を設立すれば、各団体に寄附する場合と比べて、自分が目指す社会貢献活動を実現しやすいです。

また、事業を承継してリタイアした元経営者が、自分の死後に残される家族が社会と接点を持てるように、生前に財団法人を設立しておくケースもあります。設立した財団法人を配偶者や子どもに運営してもらうことで、自分の社会貢献活動への想いを引き継げるでしょう。

財団法人まとめ

財団法人とは、財産の集まりに対して付与される法人格のことです。基本的に自由に事業活動できる財団法人を一般財団法人、公益性の高い事業を営む必要がある財団法人を公益財団法人と呼びます。

財団法人を設立すれば、個人で活動する場合と比べて信頼を得やすい点がメリットです。一方で、株式会社のように利益を分配できない点がデメリットとして挙げられます。

各法人の特徴を理解したうえで、自身の希望を実現しやすい法人形態で設立しましょう。

このメディアの監修者

元吉 孝子

元吉 孝子 元吉孝子税理士事務所 代表
大学卒業後、一般事業会社の経理部門にてキャリアをスタート。その後、大手会計事務所にて15年間、医療機関に特化した会計・税務支援に従事し、開業から法人化、事業承継、相続対策まで、クライアントに寄り添う伴走者として経験を積む。
その後、千代田区の税理士法人に勤務し、EC事業や個人の相続案件に携わる。平成30年11月20日に税理士登録後も同法人でパートナー税理士を務め、通算16年間の勤務を通じて幅広い分野の専門知識を習得。
これまでの30年以上の経験を活かし、現在は自身の会計事務所を開設。お客様一人ひとりの視点に立ち、共に課題を解決していくことを目指している。

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計、簿記、ファクタリングなどの資金調達に関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は400本以上にのぼる。FP2級。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
  • 中小事業者・会計事務所向け業務系システムの開発・販売
本社所在地 〒160-0022
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所属団体 一般社団法人Fintech協会
顧問弁護士 AZX総合法律事務所

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