会計参与とは?監査役との違い、任期や資格などについて解説

更新日:2025年11月04日

会計参与

会計参与は、会社設立時に検討される役職の一つであり、監査役や会計監査人と並ぶ選択肢です。会社設立や事業拡大を目指す経営者にとって、資金調達や取引先との契約を有利に進めるための有効な制度の一つとして位置づけられています。監査役との違いや資格要件、導入メリットを理解しておくことは、今後の経営判断に欠かせません。本記事では、会計参与の役割から選任手続きまでをわかりやすく解説します。

目次

会計参与とは

会計参与は、株式会社の取締役と共同で計算関係書類を作成する役員です。なお、合資会社・合同会社・合名会社などの会社形態では、会計参与を設置できません。2006年施行の会社法で新設され、中小企業の会計における信頼性向上を目的とした制度です。

会計参与は会社の内部機関として、専門的な知見を活かし計算関係書類の信頼性確保に努めます。

会計参与が新設された背景

従来、中小企業の会計監査は資格要件のない監査役が担うことも多く、形骸化しているケースも少なくありませんでした。一方で、会計監査人による監査は信頼性が高いもののコスト面の負担が大きく、多くの中小企業には導入が難しいという課題もあります。

こうした状況を踏まえ、中小企業の計算関係書類の信頼性をより低コストで高めるために設けられたのが会計参与制度です。会計参与を設置することで、金融機関や取引先からの信用が増し、融資審査の円滑化といった実務的なメリットも期待できます。

会計参与の職務

会計参与の職務は多岐にわたります。主な職務は、以下のとおりです。

  • 取締役との計算関係書類の共同作成
  • 会計参与報告書の作成
  • 取締役会株主総会などでの説明
  • 計算関係書類の備置き
  • 株主や債権者からの開示請求への対応
  • 取締役の不正行為を発見した場合の監査役や株主への報告

会計参与の設置や具体的な内容については、以下で詳しく解説します。

会計参与の設置義務

会計参与の設置は任意であり、会社の規模に関係なく法的な設置義務はありません。ただし、以下の条件下では会計参与を設置することで、本来であれば必要な監査役を置かなくてもよいという規定があります。

【監査役の代わりに会計参与を設置できるケース】

本来、株式譲渡制限会社(すべての株式に譲渡制限に関する規定がある会社)が取締役会(3名以上の取締役で構成される意思決定機関)を設置する場合、監査役を置かなければなりません。

ただし、当該会社が以下の条件をすべて満たす場合、会計参与の設置により監査役の設置義務が免除されます。

  • 大会社に該当しない(資本金5億円未満または負債総額200億円未満)
  • 会計監査人(外部の公認会計士や監査法人による財務諸表の監査をする者)を置いていない

このように、会計参与は法的義務ではないものの、条件によっては監査役の代替としての役割を果たす場合もあります。

会計参与に必要な資格と欠格事由

会計参与に就任するには、公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人のいずれかの資格を有していることが必要です。しかし、以下の欠格事由に該当する場合は資格があっても就任できません。

欠格事由は、以下のとおりです。

  • 当該会社または子会社の取締役・監査役・執行役・支配人・使用人など、独立性が保てない者
  • 業務停止の処分を受け、その期間が終了していない者
  • 税理士法の懲戒処分で、税理士業務が停止されている者

顧問税理士は、顧問先の会計参与を兼任できます。また、補助税理士も会計参与に就任できますが、事前に所属事務所との取り決めが必要です。一方、会計監査を担当している公認会計士は、その会社の会計参与には就任できません。

会計参与の任期

会計参与の任期は、原則として選任から2年以内に終了する事業年度の最終定時株主総会までです(委員会設置会社の場合は最長1年)。なお、任期満了や辞任後であっても、後任者が選任されるまでは職務上の権利と義務が引き続き存続します。

任期は定款や株主総会の決議によって短縮または延長でき、非公開会社(委員会設置会社を除く)では最長10年までの延長が可能です。また、定款変更によって会計参与の設置を廃止した場合は、その効力が発生した日に任期が終了します。

会計参与と監査役、会計監査人との違い

会計参与と監査役は、どちらも会社の役員として内部から関与しますが、会計監査人は外部の独立した専門家です。

会計参与は計算関係書類の作成段階から取締役と共同で関与するのに対し、監査役や会計監査人は、作成後にその内容を監査する役割を担います。

また、いずれも株主総会の普通決議によって選任されますが、役員か否かや資格要件、設置義務なども主な相違点です。

区分 会計参与 監査役 会計監査人
主な業務 計算関係書類を取締役と共同で作成 取締役の職務執行の監査(業務監査・会計監査) 計算関係書類の監査(外部監査)
任期 原則2年(非公開会社は定款で最長10年まで可) 原則4年(非公開会社は定款で最長10年まで可) 原則1年(株主総会で反対決議がない限り自動再任される)
役員か否か 役員 役員 非役員
資格要件 公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人 原則資格不要(上場会社等では社外性要件あり) 公認会計士または監査法人
設置義務の有無 任意設置(株式会社のみ) 一定の会社で義務(例:公開会社、監査役会設置会社など) 一定の会社で義務(例:大会社、委員会設置会社など)

このように、会計参与は「作成」、監査役・会計監査人は「監査」という役割の違いが明確に区分されています。

会計参与の主な仕事内容

会計参与の職務は、単なる書類作成にとどまりません。主な仕事内容は、以下のとおりです。

  • 計算関係書類の共同作成
  • 会計参与報告書の作成
  • 取締役会・株主総会への出席および説明責任
  • 関係書類の備置きおよび開示請求への対応
  • 監査役や監査役会等への報告

ここでは、具体的な仕事内容を項目ごとに解説します。

計算関係書類の共同作成

会計参与は、取締役と共同で貸借対照表損益計算書などの計算関係書類を作成し、客観性と正確性を確保するのが役目です。

取締役と会計参与の両者が共同することで、信頼性の高い書類として株主総会に提出できる体制が整います。しかし、決算方針を巡って意見が対立すると作業が滞るため、株主への報告遅延を招くおそれがあります。

そのため会計参与の選任時には、専門知識だけでなく経営方針への理解度や建設的な議論ができる資質があるかどうかの確認も必要です。

会計参与報告書の作成

計算関係書類の作成後、会計参与はその過程や状況を会計参与報告書にまとめます。会計参与報告書には会社法で定められた記載事項や会計方針などの重要事項が記載されており、会計参与が定めた場所(通常は自身の事務所)に備え置かなければなりません。

ただし、会計参与が取締役と共同で計算関係書類を作成できなかった場合には、会計参与報告書を作成できないため、会計参与を辞任するか、辞任しない場合は異なる意見を株主総会で説明するなどの対応をとります。

取締役会・株主総会への出席および説明責任

会計参与は取締役会と株主総会への出席義務を負い、求められた際は説明責任を果たさなければなりません。取締役会では、計算関係書類の承認を得るための会議に出席し、必要に応じて意見を述べる役割を担います。

対象となるのは各事業年度の計算関係書類や事業報告とこれらの附属明細書、臨時計算書類、連結計算書類の承認決議です。株主総会においては、主に定時株主総会に出席し、株主から説明を求められた場合に発言をします。

関係書類の備置きおよび開示請求への対応

取締役と共同作成した計算関係書類および会計参与報告は、定時株主総会の日の1週間(取締役会設置会社は2週間)前の日から5年間、自らの事務所などに備え置かなければなりません。臨時計算書類の場合も作成日から5年間の備置きが必要です。

株主や債権者から閲覧・交付請求があった際は、資格を証する書面の提示を受けたうえで応じます。本人確認や費用の受領も行い、開示時の説明義務はありません。

監査役や監査役会等への報告

職務執行中に取締役の不正行為や法令・定款違反などの重大な事実を発見した場合は、会計参与として速やかに該当する会社の機関へ報告する義務があります。

なお報告先は、監査役や監査役会、監査等委員会、監査委員会などの監査機関です。これらの監査機関を設置していない会社では、株主に対して報告しなければなりません。

会計参与設置のメリット

中小企業が会計参与を設置することで、資金調達や経営体制の強化など、事業の成長に直結する多くのメリットが期待できます。

  • 金融機関からの融資が受けやすくなる

    金融機関が融資審査で最も重視するのが、決算書の信頼性です。公認会計士や税理士といった専門家である会計参与が作成に関与することで、財務情報の信頼性が向上します。

    その結果、金融機関からの信用が向上し融資審査が円滑に進むほか、場合によっては金利などの条件面で有利になる可能性も高まるでしょう。

  • 会社の対外的な信用力が高まる

    会計参与が関与した決算書は、金融機関だけでなく取引先や株主からの信頼も得やすくなります。財務の透明性が高い企業として評価されることは、新規取引先の開拓や既存取引の拡大においても有利に働くでしょう。

  • 経営者が本業に専念できる

    複雑で時間のかかる決算業務を会計参与と共同で行うことで、経理部門の負担や経営者のチェック業務が大幅に軽減されます。その結果、経営者は本来注力すべき事業戦略の立案や営業活動に専念できるようになり、経営の質も向上するでしょう。

  • 専門家による経営アドバイスが得られる

    会計参与は単に書類を作成するだけでなく、財務の専門家として経営者に客観的なアドバイスを提供する役割も担います。財務データに基づいた的確な助言は、精度の高い経営判断の助けとなるでしょう。

これらのメリットを十分に活かすには、自社の規模や業務内容に適した会計参与の選定と導入計画の策定が必要です。あわせて、日常の会計業務を整理し、必要な財務情報を迅速に共有・確認できる環境づくりも欠かせません。

例えばクラウド会計ソフトの活用により、遠隔地からでも財務データを共有できるようにするなど、打ち合わせや確認作業の効率化を図ることで会計参与制度の効果をより高められるでしょう。

会計参与設置のデメリット

会計参与の設置には多くのメリットがある一方、導入前に検討すべきデメリットも存在します。

  • コストの増加

    会計参与には役員として相応の報酬が必要となり、通常の税務顧問料に上乗せされるのが一般的です。特に小規模な企業にとっては、コスト増が経営上の負担となるおそれがあります。

    導入を検討する際は、現在の顧問税理士に兼任を依頼するのが現実的でしょう。その場合、費用がどの程度上乗せになるのかを確認し、慎重に判断することが重要です。

  • 責任の重さからくる人選の難しさ

    会計参与は、万が一決算書に誤りがあった場合、取締役と同等の重い責任を負います。そのため、容易に引き受ける専門家は少なく、信頼できる適任者を見つけるのに時間がかかることもあります。

    会計参与としての役割を引き受けてくれる専門家を探す際は、候補者と責任範囲について事前に協議しておくことが不可欠です。

  • 普及率の低さ

    会計参与制度はまだ認知度が高くないため、存在価値が金融機関や取引先にすぐには理解されないという側面もあります。

    一方で、他社に先んじた導入により財務の透明性が高い先進的な企業として評価され、競合との差別化につながるチャンスにもなり得るでしょう。

こうしたデメリットとメリットの両面を踏まえ、自社の状況や目的に応じて導入の是非を総合的に判断することが重要です。

会計参与を設置する流れ

会計参与を設置する際は、株主総会での決議から登記申請まで、法令に定められた手順を踏んで進める必要があります。主な流れは以下のとおりです。

1.株主総会での決議
会計参与を設置するには、まず株主総会で以下の2つの決議を行う必要があり、これらは通常、一度の株主総会で同時に決議します。

  • 定款変更の決議(特別決議)

    「会計参与を置く」という旨を定款に加えるには、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。

  • 会計参与の選任決議(普通決議)

    具体的に誰(またはどの法人)を会計参与にするかを選任します。この決議は、原則として議決権の過半数を持つ株主が出席し、その過半数の賛成によって可決されます。ただし、役員選任の普通決議では、定款によっても定足数を3分の1未満に引き下げることはできません。

2.会計参与の就任承諾
会計参与(個人・法人)は、選任後に就任を承諾した時点で正式に就任します。この承諾を示す「就任承諾書」は、登記申請の際に必要です。

3.登記申請
会計参与の就任日(就任を承諾した日)から2週間以内に、法務局へ変更登記を申請する必要があります。

主な必要書類は、以下のとおりです。

  • 株主総会議事録
  • 変更後の定款(または定款変更を証明する株主総会議事録)
  • 株主リスト
  • 会計参与の就任承諾書
  • 会計参与の資格証明書(税理士・公認会計士であることの証明書、または税理士法人・監査法人の登記事項証明書)

※会計参与が作成した計算関係書類および会計参与報告書を備え置く場所も登記事項となるため、登記申請書への記載漏れに注意しなければなりません。

4.登録免許税の納付
登記申請の際に、登録免許税を納付します。初めて会計参与を設置する場合、以下の合計額が必要です。

  • 会計参与設置会社の定めの設定登記:3万円
  • 会計参与の就任登記:1万円(資本金1億円超の場合は3万円)
  • 合計:4万円(資本金1億円超の場合は6万円)

登記申請は、書類の不備で手続きが遅れることも多いため、司法書士などの専門家への相談を検討することをおすすめします。なお、登録免許税は法改正などにより変更される可能性もあるため、国税庁の登録免許税の税額表を確認しましょう。

会計参与まとめ

会計参与制度は、中小企業の財務情報の信頼性を高め、資金調達の円滑化や経営判断の質向上を目的とした制度です。

任意設置のため導入は自由であるものの、一定の条件下では監査役の代替としての役割を果たすほか、経営面での支援も期待できます。一方で、報酬や責任に関する負担も伴うため、自社の経営状況や導入目的を十分に踏まえた慎重な検討が求められるでしょう。

導入にあたっては、メリット・デメリットを正しく理解し、信頼できる専門家を選任することが重要です。選任後は、会計参与が十分に力を発揮できる環境を整え、経営基盤の強化につなげていきましょう。

このメディアの監修者

元吉 孝子

元吉 孝子 元吉孝子税理士事務所 代表
大学卒業後、一般事業会社の経理部門にてキャリアをスタート。その後、大手会計事務所にて15年間、医療機関に特化した会計・税務支援に従事し、開業から法人化、事業承継、相続対策まで、クライアントに寄り添う伴走者として経験を積む。
その後、千代田区の税理士法人に勤務し、EC事業や個人の相続案件に携わる。平成30年11月20日に税理士登録後も同法人でパートナー税理士を務め、通算16年間の勤務を通じて幅広い分野の専門知識を習得。
これまでの30年以上の経験を活かし、現在は自身の会計事務所を開設。お客様一人ひとりの視点に立ち、共に課題を解決していくことを目指している。

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計、簿記、ファクタリングなどの資金調達に関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は400本以上にのぼる。FP2級。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
  • 中小事業者・会計事務所向け業務系システムの開発・販売
本社所在地 〒160-0022
東京都新宿区新宿3-5-6 キュープラザ新宿三丁目5階
所属団体 一般社団法人Fintech協会
顧問弁護士 AZX総合法律事務所

弊社では、正確かつ有益な情報発信を実践しており、そのために様々な機関の情報も参照しています。

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