レンタルオフィスで法人口座を開設できる?審査のポイントも解説
更新日:2024年06月21日
机やインターネット回線などのオフィス設備が用意されており、低予算で利用できるレンタルオフィス。予算を抑えて事務所を確保するため、活用している経営者やフリーランスの方も多いのではないでしょうか。
ただ、レンタルオフィスは気軽に利用できる反面、企業の信頼性を高められず、法人口座を開設する際のマイナスポイントとして見なされないか心配な方もいるかもしれません。
結論から言えば、レンタルオフィスでも法人口座の開設は基本的に可能です。ただし、審査時の評価は金融機関ごとに異なるため、より確実に開設したいならば自社に適した金融機関の選定と、いくつかのポイントを踏まえた事前準備が求められます。
この記事では、レンタルオフィスを利用する企業の法人口座開設の可否から審査のポイント、各金融機関の特徴とレンタルオフィスを利用する企業におすすめな金融機関まで解説します。
レンタルオフィスを利用しながら法人口座を開設したいと考えている方は、ぜひご覧ください。
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目次
レンタルオフィスでも法人口座は開設できる
レンタルオフィスを利用する企業でも、基本的には法人口座の開設は可能です。
ただし近年、法人口座の審査は厳しくなる傾向にあり、どのような企業・金融機関であっても開設できるわけではありません。
特に、法人口座は一般の口座よりも取引できる金額が大きく、重大な犯罪に使われた場合大きな影響が起こりかねません。実際、法人口座を悪用した投資勧誘詐欺などがすでに報告されており、あらゆる金融機関が金融犯罪の防止策を講じています。金融庁も2021年、マネーロンダリングや犯罪資金に対するガイドラインを定め、口座開設にあたって取引目的や事業内容の確認を行うこととしています。
レンタルオフィスの利用有無にかかわらず、法人口座を開設したいと考える企業は、各金融機関の審査時の評価をクリアできるよう事業内容を整理し、信頼性を示せる書類などを用意する必要があります。
なお、金融犯罪を防止するための取り組みについて詳しく知りたい方は、金融庁による「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」やe-GOV法令検索の「犯罪による収益の移転防止に関する法律」をご覧ください。
レンタルオフィスで法人口座を開設するための5つのポイント
実際に法人口座の開設審査にあたり、特に厳しくチェックされる傾向にあるポイントはどのようなものがあるのでしょうか。
以下の5つはどの金融機関であっても求められるポイントです。あらかじめすることで、審査に落ちる可能性を軽減できます。
- 社会的信用のあるレンタルオフィスを利用する
- 事業の信頼性を担保する材料を揃える
- 金融機関に事業内容が伝わるように整理する
- 必要書類の漏れや不備を防ぐ
- 他者からの紹介を受ける
社会的信用のあるレンタルオフィスを利用する
基本的にレンタルオフィスであることのみを理由に、法人口座の開設を断られることはありません。しかし、物件が過去に詐欺で利用されていたなど、社会的信用が損なわれている場合、審査が不利になる恐れがあります。
物件の審査のために、場合によってはSNS上の情報までみられるケースもあるようです。
これからレンタルオフィスを利用するのであれば、相場と比較して明らかに家賃が安かったり、あまりにも利用者が少なかったり、評判が著しく悪かったりする物件は、避けることが望ましいでしょう。反対に、利用のための条件が厳しいレンタルオフィスであれば、物件の信用性に欠けるリスクが少なく、法人口座の審査においても不利に働く可能性は低くなります。
すでにレンタルオフィスを利用しており、その物件の信頼性に不安があるという場合であれば、法人口座開設の審査が厳しくない金融機関を検討することも選択肢の1つです。
事業の信頼性を担保する材料を揃える
事業の信頼性を示すために用意できる材料はいくつか存在しますが、そのうちの1つが、一定額の資本金です。
法律上、株式会社は資本金1円から設立できます。ただ、少なすぎる資本金では金融機関や取引先から信頼を得づらくなることも事実です。そのため、法人口座の開設においては、資本金は可能であれば100万円以上、最低でも50万円は用意できると良いでしょう。
固定電話やホームページ、リーフレットなども、事業の信頼性を示すために有効であるため、余力があれば用意することがおすすめです。
金融機関に事業内容が伝わるように整理する
口座開設の申し込みにあたっては、履歴事項全部証明書に事業内容を書く必要があります。このとき事業内容欄には、多くの事業を手掛ける企業であっても主業務以外の事業をあれもこれもと書かないことが基本です。なぜなら、あまりにも多くの事業内容が記載されていると、自社の主要な事業内容が金融機関に伝わらず、不信感を持たれる恐れがあるためです。
反対に、実績が少ない企業であればどのような事業を行うのかより明確にするためにも、事業計画書やホームページなどを用意し、信頼を得やすくしておくとよいでしょう。
必要書類の漏れや不備を防ぐ
法人口座開設のための審査には、事業内容や信頼性を示すための書類が必要です。必要な書類は金融機関ごとに異なるため、自分が申し込もうと考えている金融機関の情報をよく確認し、漏れなく用意してください。
また、書類の不備があると正確な審査ができない上、審査の評価も下がる恐れがあるため、提出前に今一度不備がないか確認しておきましょう。
あくまで一般的なものですが、法人口座開設時に求められることが多い書類の例を紹介します。
▼代表例:法人口座開設の審査に必要な書類
企業の銀行印 | |
代表者の印鑑証明書 | 発行後3ヶ月以内の原本であることが必要 |
代表者の実印 | |
代表者の身分証明書1つ(写真つき) |
など |
企業の登記簿謄本(履歴事項全部証明書) | |
企業の定款 | 必要に応じて提出 |
企業の事業内容がわかる資料 |
以下のようなものを用意し、提出 【例】
|
その他資料(実績が少なく事業内容を示す資料が少ない場合) |
|
官公庁発行の免許・許認可 | ある場合は提出 |
レンタルオフィスの契約書 | 準備しておくと審査がよりスムーズになる |
書類を用意するだけでなく、提出した書類の内容について金融機関側から質問された場合に、すぐに回答できるようにしておく必要があります。回答がスムーズでないと、審査時に不信感を抱かれるかもしれません。
他者からの紹介を受ける
実績不足などで、自社だけでは審査通過が困難なケースもあるかもしれません。その場合、すでに同じ銀行の法人口座を開設している人から紹介を受けることも有効です。
金融機関と既に取引している人は、その金融機関の信頼を得ていることを意味します。すでに信用のある他者から金融機関へ紹介してもらうことで、多少有利な状態で審査に挑むことができます。
金融機関の特徴とレンタルオフィスの扱い
昨今ではレンタルオフィスに法人登記している企業は珍しくなくなってきました。ただ、レンタルオフィスを利用していることを審査時にどう評価するかは、実際のところ金融機関ごとに異なるものです。
代表的な金融機関であるメガバンク、地方銀行、ネット銀行、ゆうちょ銀行それぞれの特徴を説明します。
レンタルオフィスを利用する企業の多くは資金力や実績が少ないケースが多いため、特におすすめなのはネット銀行です。
▼金融機関別メリット・デメリット
金融機関 | メリット | デメリット |
メガバンク | 信頼性が高い | 審査が厳しい |
地方銀行 | 特定の地方の事情に詳しいため、地方でのビジネスで有利な情報を得やすい | 営業地域外ではブランド力がない |
ネット銀行 | 審査が優しいことが多い | 信頼性が落ちる |
ゆうちょ銀行 | 全国展開しているため、全国で使える | 預金限度額が1,300万円のみ |
メガバンク
メガバンクは、全国に支店を有する巨大な都市銀行です。信頼性が高いことがメリットですが、レンタルオフィスを借りている企業では、メガバンクでの開設はおすすめできません。
なぜなら、メガバンクは法人口座開設の審査における基準、具体的には実績や信頼度などが非常に厳しく見られるためです。レンタルオフィスを利用している企業では、基準に満たないと判断されかねません。
確かに、オフィス形態だけを理由に法人口座の開設は拒否されないことが普通ですが、実績や資本がなければ、メガバンクでの法人口座開設は避けるべきです。
地方銀行
地方銀行は、特定の地域を中心に事業を展開している銀行です。主に展開をしている地域ではブランド力が高く、地域に密着したビジネスを行う場合には心強い味方となってくれます。
地方銀行も、レンタルオフィスを利用していることだけを理由に法人口座開設の審査に落ちることはありません。ただ、後述のネット銀行と比較すると審査は厳しめになっており、最初の法人口座としてはあまり向いていません。
ネット銀行
ネット銀行は、対面店舗を持たず、インターネット上の取引に特化した金融機関です。レンタルオフィスを借りている企業では、まずはネット銀行での口座開設がおすすめです。
理由は、大きく分けて2つあります。1つ目は、ネット銀行は法人口座の審査が厳しくないケースが多く、レンタルオフィスを理由に法人口座開設の審査に落ちることが基本的にないことです。2つ目は、振込手数料が安い、口座維持費用が無料であることが多い、24時間手続き可能など、スタートアップにとって心強いメリットが多数存在することです。
ただ、メガバンクなどと比較すると信頼性の面で劣るため、大企業や公共団体との取引を目指す場合には、マイナス面があるかもしれません。
ゆうちょ銀行
ゆうちょ銀行は全国に支店をもつ銀行です。全国展開していることがメリットで、レンタルオフィスを借りていることが理由で法人口座開設の審査に落ちることは、基本的にありません。また、法人口座開設の審査も、あまり厳しくないと言われています。
ただし、ゆうちょ銀行は法人口座開設にはあまり向いていません。なぜなら、預金限度額が1,300万円と少額であるためです。大きな取引を行いたいと思っても、ゆうちょ銀行では預金限度額が小さいため、一定以上の取引は使えません。
まとめ|レンタルオフィスなら自社に合う金融機関で法人口座を開設
レンタルオフィスを利用していても、基本的には法人口座の開設は可能です。ただ、法人口座の開設のための審査は厳しくなる傾向にあり、確実な開設のためには自社の信用性を示すための準備が欠かせません。
具体的には、まずは自社の経営実態をわかりやすく示すことが必須です。また、金融機関によってメリット・デメリットや法人口座開設の難易度が異なるため、口座を開設したい機関それぞれで求められる必要書類や審査内容をあらかじめ、漏れのないように確認し、不備のないようにしておく必要があります。
レンタルオフィスを利用する企業の場合、創業間もなく資金が乏しいことがほとんどであるため、まずはネット銀行の法人口座開設を目指すことがおすすめです。
なお、法人口座を通じた金銭のやり取りは、会計ソフトを活用すれば効率よく行えます。「フリーウェイ経理Lite」は簡単に導入できる会計ソフトで、かつ経理業務に必要な機能は十分に使えます。起業したての経営者の方は、ぜひ一度お試しください。
よくある質問
Q1.レンタルオフィスを利用している企業でも法人口座は開設できますか?
レンタルオフィスを利用する企業でも、法人口座の開設は可能です。
しかし近年は、法人口座開設の審査が厳しくなってきています。よって、金融機関の審査に通過するためには、物件・事業内容・資金などの信頼性を示す、必要書類を準備する、などのポイントを抑えなければなりません。
詳しくは「レンタルオフィスでも法人口座を開設するためのポイント」の章をご覧ください。
Q2.レンタルオフィスを借りている企業は、どの金融機関で法人口座を開設すべきですか?
おすすめは、ネット銀行です。審査の基準も、メガバンクや地方銀行ほど厳しくありません。
ただ、各金融機関ごとに特徴があるため、自社にとって最適な金融機関を選ぶことをおすすめします。
詳しくは「金融機関の特徴とレンタルオフィスの扱い」の章をご覧ください。
この記事の監修者
牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役
2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。
運営企業
当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。
項目 | 内容 |
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会社名 | 株式会社フリーウェイジャパン |
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