法人登記とは?必要書類や会社設立の流れ・手順もわかりやすく解説

更新日:2024年04月19日

法人登記とは

法人登記とは、法務局で法人登記簿に法人に関する情報を記録することを指します。会社の設立時・役員変更時・本社移転時などのタイミングで、手続きをしなければなりません。

本記事では、法人登記の概要や手続きの流れについて、わかりやすく解説します。

目次

法人登記とは

法人登記とは、株式会社や一般社団法人など、法人に関する情報を法務局で法人登記簿に記録することです。法人登記された内容は、請求すれば基本的に誰でも確認できます。

ここから、法人登記と商業登記の違いや法人登記の種類、法人登記された会社情報を確認する方法について、確認していきましょう。

法人登記と商業登記の違い

会社形態(株式会社・合同会社・合資会社・合名会社)の法人による登記を商業登記、それ以外の法人による登記を法人登記として区別することがあります。ただし、実務上は法人登記と商業登記を区別せず、同じものとして扱うことが一般的です。

本記事では、法人登記と商業登記を同じものと解釈した上で、主に株式会社が登記するケースを前提に解説しています。

法人登記・登記変更の主な種類

法人登記・登記変更の主な種類(手続きするケース)は、以下のとおりです。

  • 会社を設立するケース
  • 社名を変更(商号変更)するケース
  • 会社の事業目的を変更するケース
  • 本店を移転するケース
  • 役員を変更するケース
  • 株式発行に伴い、資本金や株式数を変更するケース

そのほか、会社が終了(解散や清算)する場合も、登記しなければなりません。

法人登記された会社を確認する方法

「登記事項証明書」を取得すれば、法人登記された会社の情報を確認できます。「登記事項証明書」は、法務局で所定の手数料を納付することにより取得可能です。

「登記事項証明書」は、オンラインでも交付請求できます。オンラインでの請求は、法務局窓口での請求よりも手数料が安い点がメリットです。

また、調べる会社の法人番号を把握している場合、国税庁の法人番号公表サイトでも会社情報を確認できます。ただし、「登記事項証明書」と比べると情報が限定されている点に注意しましょう。

会社設立・法人登記にあたって必要なこと

株式会社の設立、法人登記にあたって必要なことは、主に以下のとおりです。

  • 商号・本店所在地・事業目的などを決定する
  • 法人(会社)用の印鑑を作成して印鑑登録する
  • 定款を作成して認証を受ける
  • 資本金を払い込む

それぞれ解説します。

商号・本店所在地・事業目的などを決定する

発起人(出資や設立に関する手続きを進める人)を決めたら、商号・本店所在地・事業目的など会社の概要を決定します。

商号とは、会社が営業するにあたって自己を表示するための名称(社名)のことです。株式会社で商号を決める際は、「株式会社」を使用すること、法律で使用を禁じられている用語があること、同一の住所で同じ商号は使用できないことなどに注意しましょう。

法人(会社)用の印鑑を作成して印鑑登録する

会社の概要を決めたら、法人用の印鑑(実印)を作成し、法務局で印鑑登録します。印鑑登録は、自社の印鑑証明書を発行するために必要な手続きです。

2021年2月15日に商業登記規則等の一部を改正する省令が施行されたことに伴い、オンラインで登記申請する場合は印鑑の提出が任意となりました。また、一部の取引書類や行政に提出する書類において、脱ハンコの動きが広がりつつあります。

しかし、ビジネスでは依然として印鑑を使用する機会があるのが現状です。会社設立する際は、実印・銀行印・角印・ゴム印などのハンコ一式を揃えておいた方がよいでしょう。

参考)法務省「商業登記規則が改正され,オンライン申請がより便利になりました(令和3年2月15日から)」

定款を作成して認証を受ける

続いて、定款を作成します。わかりやすくいうと、定款は会社が経営していく際の規則・ルールをまとめた書類のことです。定款に記載すべき内容は、あらかじめ法律で定められています。

定款を作成したら、定款認証の手続きが必要です。必要書類を揃えた上で、公証役場で手続きを進めます。

電子定款を作成した場合は、公証役場に行かなくても手続き可能です。また、電子定款の認証と株式会社設立登記の申請をオンラインで同時に進めることもできます。

なお、定款認証が必要な会社は、株式会社のみです。合同会社・合資会社・合名会社は定款認証の必要がありません。

参考)日本公証人連合会「9-4 定款認証」

参考)定款とは

資本金を払い込む

定款認証を受けたら、資本金(出資金)を払い込みます。資本金とは、会社を運営する際の元手になる資金のことです。

資本金の払込は、基本的に以下の流れで進められます。

  1. 資本金を振り込む銀行口座を用意する
  2. 用意した銀行口座に資本金を振り込む
  3. 資本金が振り込まれた銀行口座を記帳し、振り込みを確認する
  4. 通帳の表紙・表紙の裏面・振り込みがあったページをコピーする
  5. 払込証明書を作成する
  6. 通帳のコピーと払込証明書をあわせて製本する

なお、この時点でまだ会社の銀行口座は作成できません。そのため、資本金を振り込むのは発起人個人の銀行口座です。

参考)資本金とは

会社設立・法人登記の流れ・手順

会社設立・法人登記の流れ(手順)は、以下のとおりです。

  1. 登記申請書を作成する
  2. 登記申請する

それぞれ解説します。

1. 登記申請書を作成する

会社設立・法人登記にあたって、登記申請書を作成します。

法務局のホームページから、登記申請書のフォーマットを取得可能です。発起設立か募集設立か、取締役会設置会社かどうかによって、登記申請書のフォーマットが異なります。

登記申請書を作成する際は、会社の所在地・商号・代表者の住所・代表者の氏名などに漏れがないよう注意しましょう。また、申請書が2枚以上にわたる場合は、各ページのつづり目に契印(両ページにまたがって押すハンコのこと)しなければなりません。

参考)法務局「商業・法人登記の申請書様式」

2. 登記申請する

登記申請書を作成したら、登記申請をしましょう。株式会社は、設立時に取締役などの調査が終了した日か、発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内に設立登記をしなければなりません。

登記申請するには、直接法務局に持ち込む・郵送する・オンラインで手続きするといった方法があります。それぞれ簡単に紹介します。

直接法務局に持ち込む場合

直接持ち込む場合、会社(法人)の本店か主たる事務所を管轄する法務局(登記所)に行きましょう。直接持ち込むと、その場で不足している書類がないかわかる点がメリットです。会社の所在地を管轄する法務局の場所については、法務局のホームページから確認できます。

なお、委任状を用意すれば、代理人による申請も可能です。

参考)法務局「管轄のご案内」

郵送する場合

郵送する場合は、管轄する法務局に必要書類を提出しましょう。郵送の方法に特段決まりはありません。ただし、大切な書類のため簡易書留や特定記録郵便など、法務局に届いたことがわかる方法で送付した方がよいでしょう。

なお、直接持ち込む場合も郵送する場合も、QRコード(二次元バーコード)付き書面申請を利用する方法があります。電子証明書を持っていなくても、専用のソフトで作成した申請書を事前に管轄の法務局へ送信してから、印刷した登記申請書を持参(郵送)することで、申請状況を随時確認できます。

参考)法務局「QRコード(二次元バーコード)付き書面申請について」

オンラインで手続きする場合

オンラインで手続きする場合、登記・供託オンライン申請システムを利用します。

オンラインで手続きすれば、自宅で余裕のある時にできる点、申請状況を随時確認できる点がメリットです。ただし、利用時間が平日午前8時30分から午後9時までに限定される点に注意しましょう。

オンラインで手続きする際は、まず申請用総合ソフトや操作手引書をダウンロードします。続いて、申請用総合ソフトの指示に従い、申請者情報の作成・添付書面情報の添付・申請データの送信と進めていきます。

参考)登記・オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと

会社設立・法人登記の必要書類

会社設立・法人登記にあたって必要となる書類は、主に以下のとおりです。

  • 登記申請書
  • 定款(認証済み)
  • 登録免許税の収入印紙貼付台紙
  • 就任承諾書(設立時代表取締役・取締役・監査役)
  • 取締役の印鑑証明書
  • 法人の印鑑届書
  • 本人確認証明書(設立時取締役など)
  • 資本金の払込証明書

オンライン申請する場合は、印鑑証明書や本人確認証明書などが不要になることがあります。

法人登記にかかる費用

法人登記には、登録免許税がかかります。株式会社を設立する場合の登録免許税額は、資本金額に0.7%かけた額です。ただし、計算結果が15万円を下回る場合でも、15万円の登録免許税がかかる点に注意しましょう。

また、株式会社を設立する際、法人登記以外に定款認証にも費用がかかります。主な内訳は以下のとおりです。

  • 収入印紙代(4万円)
  • 認証手数料(3万〜5万円)*資本金額によって異なる

なお、電子定款の場合は収入印紙代がかかりません。

参考)日本公証人連合会「9-4 定款認証」

【シーン別】法人の登記申請のポイント

法人の登記申請に関連して、いくつか押さえておくべきことがあります。役員変更するケース・本社移転するケース・海外企業が法人登記するケースに分けて、確認していきましょう。

役員変更するケース

登記申請すべき期間は定められており、原則として登記が必要な事由が発生した時点から2週間以内となっています。新たに会社の取締役などの役員が就任することになった場合は、その役員が就任を承諾した日を起点とし、そこから2週間以内に手続きしなければなりません。万が一、期間内に申請できなかった場合、申請が却下されることはありませんが、過料を課せられる可能性があります。

役員が変わったときは「登記しなければ」と思い出しやすいと思います。一方、同じ役員が再任(重任)された場合は、登記申請を忘れがちです。そもそも、役員の任期が満了するときに役員改選をしないまま…というケースもあります。役員の改選、重任と変更、登記申請はセットだと覚えておきましょう。

参考)役員とは

参考)監査役とは

本社移転するケース

本社を移転する場合の登記申請は、こちらも移転日から2週間以内に手続きしなければなりません。まず、現在までの本社所在地を管轄する登記所にて、移転の登記を申請します。また、移転先となる本社所在地を管轄する登記所においても、移転した旨の申請をする必要があります。これら2つの登記は同時に申請しなくてはならないため、登記所に相談して迅速に手続きしましょう。

海外企業が法人登記するケース

海外企業が継続的に日本で取引をする場合は、日本での事業活動における代表者を定めて登記を申請します。代表者に選出される人は日本国内に住所を所有していなければならず、代表者が複数いる場合は1人以上がこの条件を満たさなければなりません。代表者を定めた日から3週間以内に、営業所の所在地を管轄する登記所で申請します。日本国内に営業所を設置しない場合は、代表者の住所を管轄する登記所で申請することになります。

会社設立・法人登記完了後に必要なこと

会社設立・法人登記が完了してからも、いくつか必要な手続きがあります。主な手続きは、以下のとおりです。

  • 社会保険への加入
  • 登記事項証明書や印鑑証明書の取得
  • 税金関連の届出

それぞれ解説します。

社会保険への加入

法人登記後、社会保険への加入手続きも進めましょう。社会保険とは、厚生年金保険や健康保険のことです。

法人は、被保険者の要件を満たす人がひとりでもいれば社会保険への加入が義務付けられています。パートタイマー・アルバイトなどでも、労働時間などによって被保険者の要件を満たすことがあるため注意しましょう。

所轄の年金事務所で、厚生年金保険や健康保険の手続きをします。

登記事項証明書や印鑑証明書の取得

会社設立後の取引や手続きで必要になることがあるため、登記事項証明書や印鑑証明書も取得しておくとよいでしょう。

印鑑証明書は、法務局で取得できます。個人の印鑑証明書と異なり、自治体では取得できない点に注意しましょう。

なお、オンライン請求は、窓口請求する場合より安くて便利です。法人登記をオンラインで申請する際に使う申請用総合ソフトを使って、オンラインで請求できます。

税金関連の届出

法人登記後、法人税など税金に関する届出が必要です。

法人設立届出書などの書類を所轄の税務署に提出しましょう。提出期限は、設立登記日から2か月以内です。

また、法人が所在する自治体に対して、法人都道府県民税・事業税を申告納付するために、法人設立・設置届出書を提出しなければなりません。たとえば、東京都の場合は事業開始日から15日以内に所管の都税事務所・支庁へ書類を提出します。

そのほか、取引をスムーズに進めるため、法人用の銀行口座も作成しておきましょう。

参考)国税庁「No.5100 新設法人の届出書類」

参考)東京都主税局「事業を始めたとき・廃止したとき」

法人登記まとめ

法人登記とは、法人に関する情報を法務局で法人登記簿に記録することを指します。法人登記にあたって、会社の概要を決める、定款を作成して認証を受ける、資本金を払い込むなどの手続きが必要です。

法人登記は、直接法務局に持ち込む(郵送可)か、オンラインで手続きできます。オンラインで手続きする場合は、自分のタイミングで手続きができて便利です。

法人登記には期限があるため、今後会社設立や登記内容の変更などを予定している方は、失念しないようにしてください。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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