雑損失とは?仕訳例や他の勘定科目との違いを解説

更新日:2026年09月24日

雑損失

確定申告や帳簿の整理をしていると、「雑損失」という言葉を目にする機会があります。どのような場合に使うのか、似た言葉との違いは何かと疑問に思うことも多いのではないでしょうか。雑損失は、他の勘定科目に当てはめにくい損失を処理する際に用いる科目です。

本記事では、雑損失の基礎知識から仕訳例、他の勘定科目との違い、注意点まで詳しく解説します。

目次

雑損失とは

雑損失とは、営業外費用に区分される勘定科目の一つです。営業外費用とは、企業の本業以外で経常的に発生する費用で、借入金の利息や有価証券の売却損などが代表例です。

雑損失はその中でも、少額で重要性が低く、既存の勘定科目に分類できない損失を処理する際に使用します。そのため、「営業外費用だが、どの勘定科目にも当てはまらない」という場合の受け皿的な科目といえます。

なお、雑損失は「雑費」や「雑損控除」と混同されやすい点に注意が必要です。

雑損失と「雑費」や「雑損控除」との違い

以下では、雑損失と「雑費」「雑損控除」の違いを解説します。

雑損失と雑費の違い

雑損失と雑費は、どちらも他の勘定科目に当てはめにくい支出や損失を処理する際に用いられる科目です。ただし、会計上の位置づけには違いがあります。雑損失は営業外費用に分類されるのに対し、雑費は事業活動に関連して発生する少額の支出を処理するための勘定科目です。

雑費は、日常的な事業運営の中で発生する費用のうち、特定の科目に分類しにくい少額の支出をまとめて処理する場合に用いられます。これに対して雑損失は、本業とは直接関係のない損失や、予期せず発生した損失などを計上する際に使われる点が特徴です。

例えば、単発の振込手数料や書籍の購入費、ゴミ処理にかかる費用などは、事業活動に伴って発生する支出であることから一般的には雑費として処理されます。

雑損失と雑損控除の違い

雑損失と雑損控除は名称が似ていますが、性質や使われる場面が異なります。

雑損控除とは、盗難や自然災害などによって生活に必要な資産が損害を受けた場合に適用できる所得控除であり、個人の確定申告の際に被害額に応じて所得金額から一定額の差し引きが可能です。また、雑損控除を適用しても控除しきれなかった損失額は、翌年以降3年間繰り越せます。

一方、雑損失は会計上の勘定科目であり、企業の会計処理において営業外費用に分類される損失を処理するのに用いられます。

参考)国税庁「No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」

雑損失に該当する費用例

雑損失に該当する主な費用は、以下のとおりです。

  • 現金過不足による損失
  • 交通事故の示談金・慰謝料などの支払い
  • 備品や現金の盗難被害額
  • 比較的少額な建物の解体費用
  • 比較的少額なファクタリング手数料
  • 損害賠償金
  • 違約金の支払い
  • 罰金・科料・過料・反則金などの支払い
  • 廃材の処分費用
  • 火災による商品の損害費用
  • 自然災害による設備破損の修繕費用

ここでは、このうち上から5つを取り上げ、内容を詳しく解説します。

現金過不足による損失

帳簿に記録されている現金残高と、実際に手元にある現金が一致しないときの差額は「現金過不足」として計上されます。レジの現金と帳簿上の金額にズレが生じているケースや、現金出納帳の残高と実際の手持ち現金が食い違うケースなどです。

実際の経理処理では、差異が判明した時点でまず「現金過不足」勘定に記録し、原因の究明をします。調査を尽くしても原因が特定できないまま決算日を迎えた場合は、未解明の不足額を「雑損失」へ振り替えて処理を完結させます。

交通事故の示談金・慰謝料などの支払い

業務に関連して発生した交通事故に伴う示談金や慰謝料、見舞金などの損害賠償金は、一定の条件を満たす場合、税務上は必要経費または損金として認められることがあります。実務では、これらの支払いを雑損失として処理するのが一般的です。

例えば、社用車や事業用自動車を使用して営業などの業務中に発生した事故で、故意や重大な過失によらない範囲で支払われる示談金や慰謝料などが該当します。

一方、事業と関係のない私的な利用による事故や、故意または重大な過失による事故に伴う損害賠償金などは、原則として必要経費や損金として認められません。例えば、自家用車での私的な外出中の事故や飲酒運転、無免許運転、信号無視などによる事故が該当します。

業務上の事故であることを明確にするには、事故の日時や場所、発生状況、業務との関連性などをメモや報告書として記録しておくことが重要です。

備品や現金の盗難被害額

事務所に空き巣が入り、パソコンなどの備品や現金を盗まれた場合、その被害額は雑損失としての処理が可能です。

ただし、備品などの固定資産については、盗難時点の帳簿価額を被害額として計上し、減価償却費とは区別して処理しなければなりません。また、損害保険金を受け取る場合は、被害額から保険金額を差し引いた残額を雑損失として計上します。

適正に損失計上するには、盗難の事実と被害額を客観的に証明できるよう備えておくことが重要です。例えば、通帳や財布は事業用と私用で分けて管理し、被害額を正確に把握できる状態にしておきます。

また、警察に被害届を提出する際は、盗まれた備品や現金を漏れなく記載する必要があります。被害届の控えを保管するか控えが交付されない場合は、受理番号を記録しておきましょう。

比較的少額な建物の解体費用

建物の解体費用は、少額で重要性が低い場合には「雑損失」として処理されるケースがあります。原則として事務所やオフィス、倉庫などの建物を解体した際にかかる費用は、特別損失に区分される「固定資産除却損」で処理します。

固定資産除却損とは、建物や機械などの固定資産を取り壊したり廃棄したりした際に、帳簿価額を帳簿から除去することで生じる損失です。

解体費用が比較的少額であり、財務諸表に与える影響が軽微と判断される場合には、企業の会計方針や重要性の判断に基づき、例外的に「雑損失」として処理されることもあります。

なお、解体費用や除却損については明確な金額基準が定められているわけではありません。そのため、企業規模や財務状況、固定資産の帳簿価額、財務諸表への影響などを踏まえ、重要性の観点から総合的な判断が求められます。

比較的少額なファクタリング手数料

ファクタリング手数料は、買取型の場合は原則として「売上債権売却損」などの科目で処理します。ただし、金額が少額で重要性が低く専用科目を設けていない場合には、便宜的に「雑損失」として処理することもあります。

ファクタリングとは、企業が保有している売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、入金期日前に資金化する資金調達の方法です。

その際に差し引かれる手数料がファクタリング手数料であり、金額が軽微で重要性が低い場合には、実務上「雑損失」として処理されることがあります。

参考)ファクタリングとは

雑損失の仕訳方法と仕訳例

ここでは、実務でよく発生するケースを例に、具体的な仕訳の方法を見ていきましょう。

現金不足を処理した場合

レジ締めや現金実査の結果、帳簿上の金額よりも現金が不足している場合、その差額は一時的に「現金過不足」で処理します。現金過不足は、現金残高の差異が発生した際に原因を調査するまでの仮勘定として用いられる勘定科目です。

例えば、現金実査の結果、帳簿残高との差額として3,000円の不足が見つかった場合の仕訳は、次のとおりです。

借方 貸方
現金過不足 3,000円 現金 3,000円

原因が判明せず、最終的に損失として扱う場合は「雑損失」へ振り替えます。

借方 貸方
雑損失 3,000円 現金過不足 3,000円

修繕費を支払った場合

店舗や設備の修理費用は、原則として「修繕費」で処理します。一方、修理ではなく他人の所有物を破損し、その修理費を負担した場合は雑損失として処理します。

例えば、顧客が所有する物品を誤って破損し、修理費3,000円を普通預金から支払った場合の仕訳は、次のとおりです。

借方 貸方
雑損失 3,000円 普通預金 3,000円

雑損失の仕訳に関する注意点

雑損失は便利な勘定科目である反面、多用すると取引内容が見えにくくなり、会計の透明性が損なわれるおそれがあります。また、税務調査では内容の説明を求められることもあるため、慎重な判断が欠かせません。以下で注意点を解説します。

雑損失の多用に注意する

雑損失は、他の勘定科目に当てはまらない営業外費用を処理できる便利な科目です。ただし対象範囲が広いため、本来は別の勘定科目で処理すべき費用でも計上できてしまうことから、結果として財務内容が分かりにくくなるおそれがあります。

雑損失を使用する際の基本的な考え方

雑損失を使用する際は、次の点を意識する必要があります。

  • 他の勘定科目に当てはまらない少額の損失に限って使用する
  • 取引内容に応じた適切な勘定科目で処理する
  • 雑損失の金額が大きくなりすぎないよう管理する

雑損失は、あくまでも例外的な処理としての使用が基本です。

雑損失の金額の目安

実務上の目安としては、雑損失の金額は営業外費用合計の数%〜10%に収めるのが望ましいとされています。雑損失が営業外費用の大半を占める状態は好ましくありません。

雑損失の合計額が営業外費用の10%を超える場合は、内容に応じて新たな勘定科目を設けることを検討しましょう。

消費税区分に注意する

雑損失にはさまざまな性質の費用が含まれるため、消費税の課税・不課税の判断が必要です。判断基準となるのは、「対価性の有無」です。

消費税が課税されない主な例

次の支出は対価性がないため、消費税の課税対象外です。

  • 交通反則金
  • 科料や過料
  • 延滞税や加算税
  • 現金不足額
  • 原則的な損害賠償金や違約金

これらは行政上のペナルティや損失補填として支払われるものであり、サービスや物品の提供に対する対価ではありません。

課税対象になるケースもある

例えば「違約金」の場合、実態がサービス提供の対価であれば課税仕入れに該当します。判断のポイントは次のとおりです。

  • サービスや物品の提供という対価性があるか
  • 行政上の罰金や損害補填など対価性のない支出ではないか
  • 名称ではなく取引の実態に基づいて判断しているか

雑損失は内容が多様になりやすいため、取引の実態を確認しながら適切な消費税区分で処理することが重要です。

雑損失まとめ

雑損失は、営業外費用のうち、既存の勘定科目に当てはめにくい少額の損失を処理するための勘定科目です。雑費や雑損控除とは用途が異なるため、それぞれの違いを理解して使い分けることが大切です。

現金過不足や盗難被害、示談金などは雑損失として処理できる場合がありますが、むやみに多用すると会計の透明性が低下するおそれもあります。

費用が本業に直接関係するか、他に適切な勘定科目がないかを確認し、消費税区分にも注意しながら仕訳することが大切です。不明点がある場合は、税理士への相談も検討しましょう。

このメディアの監修者

元吉 孝子

元吉 孝子 元吉孝子税理士事務所 代表
大学卒業後、一般事業会社の経理部門にてキャリアをスタート。その後、大手会計事務所にて15年間、医療機関に特化した会計・税務支援に従事し、開業から法人化、事業承継、相続対策まで、クライアントに寄り添う伴走者として経験を積む。
その後、千代田区の税理士法人に勤務し、EC事業や個人の相続案件に携わる。平成30年11月20日に税理士登録後も同法人でパートナー税理士を務め、通算16年間の勤務を通じて幅広い分野の専門知識を習得。
これまでの30年以上の経験を活かし、現在は自身の会計事務所を開設。お客様一人ひとりの視点に立ち、共に課題を解決していくことを目指している。

運営企業

当社、株式会社フリーウェイジャパンは、1991年に創業した企業です。創業当初から税理士事務所・税理士法人向けならびに中小事業者(中小企業および個人事業主)向けに、会計ソフトなどの業務系システムを開発・販売しています。2017年からは、会計・財務・資金調達などに関する情報を発信するメディアを運営しています。

項目 内容
会社名 株式会社フリーウェイジャパン
法人番号 1011101045361
事業内容
  • 会計・財務・資金調達に関するメディア運営
  • 中小事業者・会計事務所向け業務系システムの開発・販売
本社所在地 〒160-0022
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所属団体 一般社団法人Fintech協会
顧問弁護士 AZX総合法律事務所

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