黒字倒産とは何か?原因と予防策をわかりやすく解説

更新日:2024年04月07日

黒字倒産

黒字倒産とは、文字どおり黒字なのに倒産してしまう状態を意味します。会社は、赤字でも倒産しません。ずっと赤字であれば、いずれ倒産する可能性はありますが、赤字=倒産ではないのです。会社が倒産するのは、会社経営を続けられなくなったときです。特に、外部へ支払うための現金が足りなくなった(支払不能になった)ときに会社が倒産します。つまり、黒字倒産とは、黒字なのに支払いができなくなって倒産することを指しています。

目次

黒字と赤字とは

説明不要かもしれませんが、黒字とは利益が出ていること(収入が支出より大きい)、赤字とは損失が出ていること(収入が支出よりも少ない)ことを指します。つまり、黒字倒産とは収入が支出より大きくて、利益が出ているのにも関わらず、会社が支払不能に陥ることを意味するわけです。ちなみに、黒字も赤字もない状態を「収支トントン」と呼ぶこともあります。このときは、実際の売上が損益分岐点だったときを指すこともあるようです。

黒字倒産する原因

具体的に、黒字倒産してしまうケースを紹介します。Aさんの会社は、現金商売ではなく売掛金や買掛金といった掛取引しています。以下のような取引があった場合、黒字倒産してしまいます。なお、理解しやすくするために少し極端な取引例を紹介します。

4月1日 現金100万円を出資して資本金とした

借方 貸方
現金 100万円 資本金 100万円

4月15日 掛けで、150万円の商品を仕入れた(支払は翌月末)

借方 貸方
仕入 150万円 買掛金 150万円

5月1日 掛けで、200万円を売り上げた(回収は翌月10日)

借方 貸方
売掛金 200万円 売上高 200万円

5月31日 4月1日に仕入れた150万円の買掛金を現金で支払った…となれば良いのですが、手元の現金が100万円しかありませんので、支払えません。このままだと倒産です。

借方 貸方
買掛金 150万円 現金 100万円しかない

5月31日の損益 売上200万円-仕入150万円=利益50万円

以上の取引だけを見ると、黒字ですが、売掛金200万円の入金よりも先に、買掛金150万円の支払期限が到来してしまい、手元の現金が100万円では50万円の不足があり支払えません。当然、支払うことは不可能ですから、黒字なのに倒産となってしまいます。

参考)売掛金とは

参考)買掛金とは

赤字でも倒産しないケース

赤字でも倒産しないケースも紹介しておきます。上記のAさんが、200万円を出資して会社を作り、5月に売上を計上できなかったとします。5月31日の損益は150万円の赤字ですが、買掛金の150万円の支払は問題ないため(手元に現金が200万円あるから)、会社は倒産しません。ただし、このまま事業で赤字が続けば、会社は倒産してしまうリスクがあります。

黒字倒産と債務超過

債務超過とは、貸借対照表の負債総額が資産総額を上回る状態のことです。つまり、資産をすべて売却するなどしても債務を返済できなくなるため、倒産の可能性が高くなりますが、すぐには倒産しません。黒字かつ債務超過の状態でも、支払不能になるまでは存続し続けます。

参考)債務超過とは

黒字倒産と粉飾決算

粉飾決算とは、架空売上の計上などによって、実際には赤字の決算を黒字の決算に見せかける虚偽の決算報告のことです。粉飾決算を続けていれば、それが露呈しようとしなかろうと、倒産の可能性は高くなります。ある意味、黒字で倒産するため、粉飾等さんも黒字倒産の一種と言えなくもありませんが、実際には赤字のため、ただの倒産です。

参考)粉飾決算とは

黒字倒産の予防策

仕入、在庫、販売、納品、回収というサイクルの一般的なビジネスの場合は、商品の売上代金を回収する前に仕入代金の支払期限が到来するため、先に仕入代金を支払わなければなりません。また、家賃や人件費などの経費についても、売上代金の入金前の支払いになることが大半でしょう。たとえば、建設業の企業であれば、工事に着手してから売上代金の入金までの期間が長く、建材の仕入代金や現場作業員への人件費の支払が先行するため、黒字倒産の予防が特に必要です。以降では、具体的な予防策について紹介します。

参考)人件費とは

参考)経費とは

過剰な在庫を抱えないようにする

商品(製品)は、売れて初めてお金になります。当然のことではあるものの、在庫管理を徹底できずに過剰在庫を抱えてしまう中小企業は少なくありません。受注の予測が外れて在庫が滞留してしまう場合もあれば、大量生産、大量仕入の方が在庫1単位あたりの価格が下がるため、余分な在庫を持ってしまう場合もあるでしょう。過剰在庫は黒字倒産の原因になるだけではなく、在庫の保管費用が収益を悪化させることもあります。在庫管理を徹底するようにしましょう

運転資金を調達する

前述のとおり、仕入から回収までの期間が長くなればなるほど、売上代金が入金されるまでの間をつなぐ運転資金が必要になります(潤沢な現金があれば別ですが)。運転資金を確保するための資金調達の手段として分かりやすいのは借入金です。また、売掛金を売却して資金調達できるファクタリングや、売掛債権を担保にする売掛債権担保融資などもありますので、運転資金の確保のための資金調達を検討しましょう。

参考)ファクタリングとは

参考)売掛債権担保融資とは

参考)運転資本とは

黒字倒産まとめ

黒字倒産とは何なのか。どうして黒字倒産してしまうのかを紹介しました。会社経営を継続させる上では、黒字を出すことが大切です。赤字を出し続けていれば、金融機関、株主、取引先、従業員との関係が悪化してしまいます。特に銀行などの金融機関から不信感を抱かれれば、新規融資のストップ、既存融資の一括返済といった資金繰りを悪化させる事態が発生してしまうかもしれません。ただし、黒字だから安心というわけではない点は、この記事を読まれた方なら、すでに理解されていると思います。黒字が大事、でもキャッシュフローの方がもっと大事。このことを念頭に置いて経営していきましょう。

参考)キャッシュフロー計算書とは

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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