債務超過とは~倒産との関係、解消する方法、予防策について解説~

更新日:2024年02月29日

債務超過とは

債務超過とは、企業の負債総額が資産総額を上回る状態を指します。すべての資産を手放したとしても債務を返済しきれない財務状況であるため、倒産する可能性が高いと判断されます。ただし、債務超過になっても即座に倒産するわけではありません。本記事では、債務超過の意味、倒産との関連、解消方法、債務超過でも使える資金調達の方法などについて解説します。

目次

債務超過と赤字は異なるもの

債務超過は貸借対照表において負債が資産を上回る状態のことです。一方の赤字は、収入に対して支出が多いケースを指します(損益計算書を確認します)。このように判断する際の指標が異なるため、債務超過と赤字は必ずしもイコールではありません。赤字決算になっていても、債務超過には至っていないケースもあります。ただし、赤字経営が常態化して徐々に資本が食いつぶされてしまうと、最終的に債務超過に陥いる危険性が高まります。

債務超過でも即座に倒産はしない

一般的に企業は、金融機関の融資などで資金を調達し、事業活動をし、利益を創出します。しかし企業が債務超過に陥ると、金融機関からの融資を受けることが難しくなり、さらに取引先や仕入れ先からの信用までも失ってしまいます。必ずしも債務超過が倒産に結びつくわけではありませんが、負債の返済が困難になれば遅かれ早かれ倒産を免れることはできないでしょう。債務超過を解消する方法は後で解説します。

債務超過で上場廃止になるリスクも

上場企業が債務超過になった場合、上場廃止になる場合があります。上場廃止の基準は取引所により異なり、たとえば東京証券取引所においては、1年以内にその状態を解消できなければ上場廃止になります。

債務超過の貸借対照表

企業の財務状況を確認できる決算書は、貸借対照表(バランスシート、B/S)です。貸借対照表は調達した資金がどれくらいか、それらの資金が現在どういう状況にあるかを示します。具体的には「資産」「純資産」「負債」の3つの要素で構成されており、資産の金額は純資産と負債の合計金額に一致します。このバランスが保たれていれば健全な財務体質を維持していることになりますが、負債が資産を上回ると債務超過になります。つまり貸借対照表を見れば、自社が債務超過になっているかを判断できるのです。債務超過の状態の貸借対照表は、以下のようになります。※あくまでイメージです。

債務超過の貸借対照表の図

債務超過の状態を解消する方法

債務超過であっても即座には倒産しませんが、銀行からの新規の借り入れが困難になるなどの支障があるため、早期に解消するのが望ましくなります。端的に言うと、債務状態を解消するには「負債を減らす」「純資産を増やす(資本を増やす、利益を増やす)」という観点があります。債務状態を解消するための方法をいくつか紹介します。

債務を株式化する

過剰債務になった企業の再建手法に「DES:デッドエクイティスワップ」という手段があります。DESでは、債権者が債権の現物出資によって債権を株式化したり、債権者が金銭出資して株式を取得し、債務者はその出資金で債務を弁済できます。役員借入金を資本金へ振り替える方法もありますが、当該役員の支配力が高まるために、出資比率については考慮する方が良いでしょう。

参考)DES(デット・エクイティ・スワップ)とは

遊休資産を売却して返済に充てる

稼働していない遊休資産があり、それを売却可能であれば処分して現金を確保し、銀行などからの借入金を返済します。ただし、この方法では債務超過を解消はできません。資産と負債の両方が減少するからです。超過額を減らすこと、借入金を返済して倒産を避けることに効果があります。

慢性的な赤字経営から脱却する

この解決策に即効性はありませんが、債務超過の根源的な問題は慢性的な赤字経営にあるため、必ず取り組む必要があります。利益の公式は、売上-コストです。利益を増やすには、売上を伸ばすか、コストを削減する他ありません。コストで考えるべきは、売上原価と販売管理費です。原価率を下げるために何かできないか、販管費に無駄が無いのかをチェックして対策をとりましょう。

参考)売上原価とは

債務超過でも使える資金調達の方法

債務超過の場合、銀行などの金融機関からの融資は受けにくくなります。しかし、資金調達の手法は様々あり、債務超過や赤字決算でも利用できる可能性のある手段はあります。たとえば、次の2つの方法については、審査対象が主として自社の取引先になるため、債務超過でも利用しやすい方法となっています。

  • ファクタリング
  • 売掛債権担保融資

それぞれについては、以下で解説します。

ファクタリング

ファクタリングとは、売掛債権(売掛金や受取手形)をファクタリング会社へ債権譲渡して、資金調達する手法です。債権を売買するイメージが近く、受け取る代金からは買取手数料などが差し引かれます。

参考)ファクタリングとは

売掛債権担保融資(ABL)

売掛債権担保融資とは、売掛債権を担保にした融資のことです。融資の担保といえば不動産が思い出されますが、動産である売掛債権が担保とするABLのひとつが、売掛債権担保融資です。

参考)売掛債権担保融資とは

債務超過を予防するには

債務超過になる前には、必ず何かしらの兆候があります。赤字続きであったり、財務的な安全性(健全性)が徐々に悪化していたり。安全性を分析できる経営指標には、以下のようなものがありますので、参考までに紹介します。これらの指標に問題があれば改善策をとり、日常的に債務超過の予兆を察知して予防策をとることも重要だと思います。

短期安全性(短期の支払能力)

短期的な財務健全性を測る主な指標には、以下の3つがあります。

  • 流動比率
  • 当座比率
  • 手元流動性比率

流動比率

流動比率は、貸借対照表の流動負債に対する流動資産の割合を示しています。100%を下回ると、短期の支払能力に懸念があると考えられます。計算式は以下のとおりです。

流動比率(%) = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

参考)流動比率とは

当座比率

当座比率とは、流動負債に対する当座資産の割合を示しています。流動比率よりも厳密に、短期的な安全性を分析したいときに用いる指標です。流動資産と違って、当座資産には棚卸資産(いわゆる在庫)が含まれません。当座比率が70%を下回っていると問題があると考えられます。計算式は以下のとおりです。

当座比率(%) = 当座資産 ÷ 流動負債 × 100

参考)当座比率とは

手元流動性比率

手元流動性とは、流動資産の中でも「すぐに使える現金、取り崩してすぐに現金化できる資産」を指します。手元流動性比率は、月商に占める手元流動性の割合です。大企業なら1ヶ月、中小企業なら1.5ヶ月分あれば安全性があると判断できます。計算式は以下のとおりです。

手元流動性比率 = 手元流動性 ÷ 月商(年間売上高÷12)

参考)手元流動性比率とは

長期安全性(長期の支払能力)

長期的な財務の健全性の主な指標には、次の2つがあります。

  • 固定比率
  • 固定長期適合率

固定比率

固定比率とは、貸借対照表の自己資本に対する固定資産の割合であり、固定資産に投資した資金が、どのくらい自己資本でまかなわれているかを表しています。固定資産は長期的に事業に利用するため、返済義務のない自己資本でまかなうことが理想とされるため、固定比率が100%未満であれば安心です。計算式は以下のとおりです。

固定比率(%) = 固定資産 ÷ 自己資本 × 100

参考)固定比率とは

固定長期適合率

固定長期適合率とは、固定資産の調達を長期資金(自己資本+固定負債)でまかなえている 割合を示しています。固定長期適合率の目安は100%以下であることです。固定比率が100%未満でなくとも、この固定長期適合率が100%以下であれば健全であるとされます。計算式は以下のとおりです。

固定長期適合率(%) = 固定資産 ÷( 固定負債 + 自己資本 ) × 100

参考)固定長期適合率とは

財務体質

  • 自己資本比率
  • 負債比率(DEレシオ、レバレッジ比率、ギアリング比率)

自己資本比率

自己資本比率は、貸借対照表の総資本のうち、返済義務のない自己資本(純資産)でまかなわれている割合を示しています。自己資本比率の目安は業種などによって異なりますが、一般的には50%を超えるのが理想とされます。計算式は以下のとおりです。

自己資本比率(%) = 自己資本 ÷ 総資本(自己資本 + 他人資本) × 100

参考)自己資本比率とは

負債比率

負債比率は、自己資本に対する他人資本(負債)の割合を示しており、DEレシオ、レバレッジ比率、ギアリング比率とも呼ばれます。負債の返済能力を測る指標であり、自己資本比率とは反比例の関係です。100%を下回っていれば、中長期的な安全性が高いとされます。計算式は以下のとおりです。

負債比率(%) = 負債 ÷ 自己資本 × 100

参考)負債比率とは

債務超過のまとめ

  • 債務超過とは、企業の負債総額が資産総額を上回る状態のこと。
  • 貸借対照表(バランスシート)を見ると企業の財務体質がわかる。
  • 赤字と債務超過は異なるが、赤字経営が常態化して資本が目減りすると最終的に債務超過に至る可能性が高い。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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