製造原価報告書とは~項目と計算方法について~

更新日:2023年08月14日

製造原価報告書

製造原価報告書とは、製造業において当期に販売した製品の製造原価を明らかにするために用いられる、製造業特有の財務諸表です。「製造原価明細書」「コスト・レポート(C/R)」とも呼ばれます。会社法では、製造原価報告書の作成は義務づけられていませんが、財務諸表等規則において、損益計算書の添付書類として作成・提出が義務づけられています。

製造原価は、製造にかかるすべてのコスト

商品を購入して販売する商品販売業においては、「原価=購入費用」となります。一方で、材料や原料、部品などを購入して、社内の製造プロセスを経たうえで販売する製造業においては、「原価=購入費用」とはなりません。製造業における製造原価は製造にかかるすべてのコストであり、具体的には以下のようなコストが含まれます。

  • 原料、材料、部品、半製品
  • 製造までに携わった労働者に支払う給料
  • 製造工場の賃料や水道光熱費
  • 機械・設備の費用

製造原価報告書の項目

製造原価報告書は、製造原価の内訳を示すものです。内訳を分類する方法が2つあり、1つ目は「材料費」「労務費」「経費」の3つに分ける方法、2つ目が「製造直接費」と「製造間接費」に分ける方法です。今回は、前者の方法で、当期の製造原価について詳細に説明します。製造原価報告書を見れば、どのくらいの材料費・労務費・経費を投入して、いくらの製品が完成したのかを把握できます。

当期材料費

当期の製品製造の際に使用した材料費です。以下の算式によって求められます。

当期材料費 = 期首材料棚卸高 + 当期材料仕入れ高 - 期末材料棚卸高

当期労務費

当期の製造に携わった労働者の人件費です。給料・賞与だけでなく、社会保険料や福利厚生費なども含まれます。

当期経費

材料費・労務費に含まれない当期の経費です。工場の賃料や水道光熱費などの費用はすべて経費となります。

当期総製造費用

当期の製造活動から発生した材料費・労務費・経費の合計額です。当期から製造を開始した製品のコストと、前期末には未完成だった製品の製造のコストが含まれています。

仕掛品

製造工程にはあったものの、当期中に完成しなかった製品の金額です。前期末に未完成だった製品を期首仕掛品棚卸高、今期末に未完成だった製品を期末仕掛品棚卸高といいます。

当期製品製造原価

当期から製造を開始して完成した製品の原価と、前期には未完成だったものを当期に完成させた製品の原価です。当期末に未完成だった製品の原価は含まれません。

当期製品製造原価 = 当期総製造費用 + 期首仕掛品棚卸高 - 期末仕掛品棚卸高

製造原価報告書まとめ

  • 製造原価報告書とは、製造業において当期に販売した製品の製造原価を明らかにするために用いられる、製造業特有の財務諸表で、「製造原価明細書」「コスト・レポート(C/R)」とも呼ばれる。
  • 製造原価報告書は製造原価の内訳を示すもので、コストを「材料費」「労務費」「経費」の3つに分けるか、「製造直接費」と「製造間接費」に分ける方法がある。
  • 製造原価報告書を見れば、どのくらいの費用を投入して、いくらの製品が完成したのかを把握できる。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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