有形固定資産とは?勘定科目や減価償却の方法をわかりやすく解説

更新日:2023年08月07日

有形固定資産とは

「有形固定資産」とは、顧客に対して販売する目的ではなく、会社や店舗の営業活動を行うために長期にわたって使用する資産のことです。具体的には、会社や店舗の経営上で必要な、土地や車両、各種設備や備品などが貸借対照表の有形固定資産にあたります。

目次

有形固定資産とは

有形固定資産とは、固定資産のうち建物のように形として残る資産を指します。ここから、固定資産の概要や、有形固定資産回転率について確認していきましょう。

そもそも固定資産とは

そもそも固定資産とは、長期にわたって所有する資産のことです。一般的に、流動資産か固定資産かは、ワン・イヤー・ルールに基づき判断します。決算日後1年の間に現金化されるものが流動資産、1年を超えるものが固定資産です。

固定資産には、有形固定資産のほかに無形固定資産や投資その他の資産があります。投資その他の資産とは、長期保有目的で保有する有価証券や債券などのことです。

有形固定資産の例

代表的な有形固定資産として、以下のようなものが挙げられます。

勘定科目 該当するもの
建物 店舗、事務所、倉庫、工場など
土地 店舗や事務所などの敷地、営業活動に使用する土地など
車両(車両運搬具) 営業用のトラック、乗用車など
船舶 客船や貨物船のほか、飛行機やヘリコプターなどの航空機も含む
機械装置 製造業・建設業で使う機械・装置など
工具器具備品 作業用工具、測定装置、事務机、パソコン、コピー機など

無形固定資産の例

無形固定資産の代表例は、以下のとおりです。

勘定科目 概要
特許権 特許法に基づき登録した発明を独占的・排他的に行使する権利
商標権 商標法に基づき登録した発明を独占的・排他的に行使する権利
借地権 地代を払って他人から土地を借りる権利
鉱業権 地層から鉱物を採掘し、取得できる権利
ソフトウェア 自社で制作したプログラム・ソフトウェアなど
のれん 買収で支払った金額と対象企業の純資産の差額

無形固定資産は、物理的な形態を持たない点が有形固定資産と異なります。

参考)のれんとは

有形固定資産回転率とは

有形固定資産回転率とは、企業の有する有形固定資産がどれだけ有効に活用されているかを示した指標です。ここから、有形固定資産回転率の計算式や傾向について解説します。

有形固定資産回転率の計算式

有形固定資産回転率の計算式は、以下のとおりです。

有形固定資産回転率(回) = 売上高 / 有形固定資産(建設仮勘定を除く)

たとえば、売上高が1,000万円で有形固定資産が400万円の場合、有形固定資産回転率は2.5回(1,000万円 ÷ 400万円)です。財務省の発表によると、2018年度の有形固定資産回転率(全業種・全規模)は3.34回でした。

有形固定資産回転率の傾向

有形固定資産回転率が高ければ有形固定資産が効率的に使用されており、収益性向上につながることが一般的です。

通常、製造業や不動産業のように、多額の固定資産を抱える企業は分母が大きくなるため有形固定資産回転率は低くなります。それに対し、情報通信業のように形のある資産が少ない企業は有形固定資産回転率が高くなりやすいです。

参考:財務省「有形固定資産回転率」

有形固定資産の処理

有形固定資産を購入する際には、不動産の仲介手数料や登記料、備品などを受け取る際の運送料、設備の据付費といった付随費用がかかります。このとき、有形固定資産自体の価格を「購入代価」といい、上記のような付随費用を含めた価格を「取得原価」といいます。有形固定資産を購入した際の仕訳では、この取得原価を用います。

有形固定資産を現金で購入したときの仕訳

例)100,000円のパソコンを3つ購入し、運送料3,000円とともに現金で支払った場合

借方 貸方
備品 303,000円(※) 現金 303,000円

有形固定資産を購入すると、資産が増加するため、対応する勘定科目を借方に記入します。
※パソコン100,000円×3+運送料3,000円

有形固定資産を小切手で購入したときの仕訳

例)1,000,000円の倉庫を小切手で購入し、仲介手数料100,000円と登記費用50,000円を現金で支払った場合

借方 貸方
建物 1,150,000円(※) 当座預金 1,000,000円
現金 150,000円

建物や土地、車両などの有形固定資産は高額になることが多く、購入した時に小切手で支払うことがあります。その場合は、各勘定科目の資産が増加し、「当座預金」という資産が減少すると考えます。
※倉庫1,000,000円+仲介手数料100,000円+登記費用50,000円=1,150,000円

減価償却される有形固定資産

有形固定資産には、減価償却できるものとできないものがあります。減価償却とは、固定資産の取得原価を耐用年数に応じて配分して会計処理することです。

減価償却できる有形固定資産として、以下が挙げられます。

  • 建物・構築物
  • 機械設備
  • 工具
  • 車両
  • パソコン

一方、土地や骨董品など、時間が経過しても価値が減らない有形固定資産は、減価償却の対象外です。

減価償却はいつから?

国税庁によると、減価償却するのは「事業の用に供した日」からです。「事業の用に供した日」とは、一般的に減価償却資産の属性にしたがって、本来の目的のために使用開始した日を指します。

購入した日からではない点に注意しましょう。税務上、減価償却費を算出する際の耐用年数は、「減価償却資産の耐用年数表」にしたがって判断します。

参考:国税庁「No.5400-2 事業の用に供した日」
参考:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」

減価償却方法

有形固定資産の減価償却方法は、定額法や定率法などです。それぞれの方法を解説します。

定額法

定額法とは、毎年一定額を減価償却費として計算する方法を指します。定額法を使った場合、原則として償却費が毎年同じ額になるため、比較的計算しやすい点が特徴です。

以下に記載した式を使って計算します。

減価償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率

定額法を使う主なケースとして、建物や建物附属設備、構築物などがあります。

定率法

定率法とは、毎年一定の割合で減価償却する方法を指します。定率法は毎年償却費が異なり、初年度が高く年数を経過するとともに減少していく点が特徴です。

以下の式で計算します。

減価償却費 = 未償却残高 × 定率法の償却率

上記で計算した金額が償却保証額に満たない場合、別の式を使った計算が必要です。償却保証額とは、取得価額に対象資産の耐用年数に応じた保証率をかけて計算した金額を指します。

計算式は、以下のとおりです。

減価償却費 = 改定取得価額 × 改定償却率

改定取得価額とは、調整前償却額が償却保証額に満たなくなった最初の年における、期首時点の未償却残高のことです。また、改定償却率とは、改定取得価額に対してその償却費がその後同一となるように、対象資産の耐用年数に応じた償却率を指します。

このように、定率法は定額法と比べて計算が複雑です。しかし、取得した初年度から利益を大きく計上したケースのように、あえて定率法を使うことがあります。

参考:国税庁「No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」

中小企業者向け少額減価償却資産の特例

中小企業者向け少額減価償却資産の特例は、中小企業者が減価償却資産(30万円未満)を2024年3月31日までに取得して使用を開始した場合に、一定の要件のもとでその金額を損金の額に算入できる制度です。

本来、減価償却資産を取得した場合は減価償却しなければなりません。特例を利用すれば、減価償却せずその年に一括で費用計上して、税負担を軽減できる点がメリットです。

ただし、特例を利用できるのは、青色申告法人である中小企業者または農業協同組合などで、常時使用する従業員の数が500人以下の法人に限定されています。

なお、そのほかにも関連する特例がいくつかあるため、状況に応じて適用を検討しましょう。

参考:国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」

有形固定資産は専用の台帳で管理を

今回は、販売する目的ではなく店舗や会社を経営する目的で使う資産「有形固定資産」の仕訳を解説しました。有形固定資産は、一般的に「固定資産台帳」という帳簿に資産の種類や取得(購入)した日、金額などを記入して管理します。これは、固定資産税の申告などのために有形固定資産の情報を長期間にわたって保存しておく必要があるためです。購入した際は、適切な管理を心がけましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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