売上総利益(粗利)とは何か~計算方法と付加価値との関係~

更新日:2024年01月19日

売上総利益

売上総利益とは、その事業年度中の会計上の儲けのことです。売上総利益を英語ではGross profit(グロス プロフィット)と表現します。売上総利益は利益の源泉といった表現をされることもあり、粗利や粗利益とも呼ばれています。今回は、売上総利益(粗利)の計算式、付加価値との関係について解説します。

売上総利益(粗利)の計算方法

売上総利益(粗利)の計算式は以下の通りです。

売上総利益 = 売上高 - 売上原価

売上総利益は、当期中に販売した商品の合計額(売上高)から、当該商品の仕入れ・製造にかかった費用(売上原価)を引くことで求められます。

売上総利益から「付加価値」が分かる

売上総利益(粗利)を見ると分かるのは、どれだけの「付加価値」をつけて商品を販売(提供)できたのかということです。売上原価は、商品の仕入れや製造にかかったコスト。そのコストに売上総利益を上乗せしたのが売上です。付加価値の低い商品であれば、売上原価にのせられる利益は少なくなります。

参考)付加価値率とは

売上総利益は競争力を表している

前述の内容を言い換えると、売上総利益は「競争力」を表しているともいえます。競争力が高ければ、商品に高い付加価値をつけられるからです。たとえば、A社とB社が同じ商品を100万円で販売したものの、A社の方が優れた仕入れノウハウを持っていたため、A社の売上原価が50万円、B社の売上原価が75万円だったとします。すると、A社の売上総利益は50万円(100万円ー50万円)、B社は25万円(100万円ー75万円)となり、A社はB社の2倍の儲けを稼いだことになります。A社の仕入れノウハウは「競争力」であり、それが原因で売上総利益も増えたというわけです。

売上総利益がマイナスの状態とは?

売上総利益がマイナスになっている場合、売れば売るほど赤字(損失)が膨らむ状況になっており、厳しい経営状態です。この場合、まず着手すべきは原価の削減です。むろん、売上を増やす施策も必要ですが、同じ原価構造のまま売上を増やしても問題は解決しないからです。売上を増やす場合は、商品や製品の単価を値上げしつつ、販売数量をある程度は維持するという、難しい舵取りが求められます。

「売上総利益がマイナスなら、商品や製品を売ること自体を停止した方が良いのではないか?」と考えた方もいるでしょう。その考えは、ある前提が成立する場合には正しいと言えます。その前提とは、売上原価がすべて変動費で、売上総利益と限界利益が等しくなる場合です。※売上総利益は制度会計上の概念、限界利益は管理会計上の概念です。そのため、限界利益は損益計算書には記載されません。

限界利益とは、売上高から変動費を差し引いて計算できる利益で、商品や製品を追加で1単位、販売することで得られる利益のことを指します。この限界利益は、人件費や家賃などの固定費の回収をまかなうため、限界利益がプラスのうちは取引を継続します。反対に、限界利益がマイナスであれば、取引を中止します。

整理すると、売上原価がすべて変動費ならば、売上総利益と限界利益は一致します。その状況下で、売上総利益がマイナスなら、限界利益もマイナスになるため、取引を停止することになるわけです。ちなみに、製造業の売上原価には、製造に直接は関わっていない従業員の人件費などの固定費が含まれているため、売上総利益と限界利益は不一致になります。また、限界利益は「損益分岐点」の計算でも用いられます。

参考)損益分岐点とは

参考)限界利益率とは

売上総利益率の計算方法

売上総利益率(粗利率)とは、売上高に占める売上総利益の割合です。競争力を売上総利益率で比べるという方法もあります。売上総利益率の計算式は以下の通りです。

売上総利益率(%)=売上総利益 ÷ 売上高×100

たとえば、A社とB社が同じ50万円の粗利を稼いだとします。A社の売上が100万円、B社が200万円だとすると、A社の粗利率は50%(50万円÷100万円)、B社の粗利率は25%(50万円÷200万円)となります。

売上原価とは何か?

売上原価とは、より正確に言えば”販売した”商品を仕入れ・製造するのにかかった費用(原価)です。つまり、仕入れたのに売れなかった商品の金額は、売上原価になりません。仕入れて販売した分、売れなかった分とは、どのように計算すればよいのでしょうか。売上原価の計算式は、以下の通りです。

売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高

ある事業年度に仕入れた商品のすべてが、その年度中に売れるとは限りません。また、前年度の売れ残りを当期中に売ることもあるはずです。そのため、売上原価を求めるには、前期末から残っている在庫の金額(期首商品棚卸高)に、当期中に仕入れ・製造をした商品の費用(当期商品仕入高)を加え、そこから期末に売れ残った在庫の金額(期末商品棚卸高)を引く必要があります。

参考)売上原価とは

参考)棚卸資産とは

売上総利益と他の利益との関係

なぜ、売上総利益は利益の源泉という呼ばれ方をするのでしょうか。それを理解するには、損益計算書に記載される他の利益の計算方法を知るのが一番です。

営業利益とは

営業利益とは、本業で稼いだ利益のことを指します。>

営業利益の計算方法

売上総利益-販売費及び一般管理費

参考)営業利益とは

経常利益とは

経常利益とは、会社が通常の活動から得た、会社全体の利益を意味します。

経常利益の計算方法

営業利益+営業外収益-営業外費用

参考)経常利益とは

税引前当期純利益とは

税引前当期純利益とは、通常の活動では発生しない特別な収益、費用を考慮した利益のことです。

税引前当期純利益の計算方法

経常利益+特別利益-特別損失

参考)特別利益と特別損失とは

当期純利益とは

当期純利益とは、法人税等を支払ったあとに、会社に最終的気に残る利益です。

当期純利益の計算方法

税引前当期純利益-法人税等

参考)当期純利益とは

参考)法人税等とは

以上のように、売上総利益が、その他の利益のもとになっていることが分かります。

売上総利益(粗利)のまとめ

  • 売上総利益(粗利)は、その事業年度中の儲け。付加価値を生み出す競争力を表している。
  • 売上総利益 = 売上高 - 売上原価
  • 売上総利益をを増やすには、売上を伸ばすか、売上原価を減らすこと。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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