勘定科目とは何か?~実務で使える勘定科目を一覧で解説~

更新日:2023年04月18日

勘定科目

勘定科目とは、会社の取引内容を分類するために用いる簿記の科目です。勘定科目は、経理や経営管理関連の業務に携わる方は、よく耳にする機会があります。勘定科目については、簿記を勉強中の方や経理職、経営層の方はもちろん、財務諸表の分析時にも活用するため大手企業への就職を目指す求職者の方も知っておくとよいでしょう。本記事では、勘定科目について詳しく解説します。

勘定科目は、取引やお金の動向を記録する分類項目

勘定科目は、取引やお金の動向を記録するための分類項目です。取引内容を日常的に記録する仕訳や、財務諸表(貸借対照表・損益計算書)を作成する簿記のプロセスで活用されます。 主な勘定科目としては例えば、利払いは「支払利息」などとして記録します。

参考)貸借対照表とは

参考)損益計算書とは

勘定科目は5種類にグルーピングされる

勘定科目は貸借対照表と損益計算書に記載される要素です。そのため損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)の分類ごとに、大きく性質の異なる5種類にグルーピングされます。グループごとの主な勘定科目としては、以下のものが挙げられます。資産、負債、純資産が貸借対照表のグループで、費用、収益は損益計算書のグループです。

  • 資産:現金、売掛金、未収金、受取手形、有価証券、備品
  • 負債:借入金、買掛金、未払金、支払手形
  • 純資産:資本金、繰越利益剰余金、資本準備金
  • 費用:仕入、支払利息、給料、水道光熱費、福利厚生費
  • 収益:売上、受取利子、受取配当金

勘定科目の必要性は4つに分かれる

勘定科目を用いる目的は主に経営上の判断を容易化することと外部への報告のためです。経営管理の指標として利用したり、財務諸表を作成したりする場面で用いられることが想定されます。以下では、勘定科目の意義や必要性について解説します。

①仕訳や決算書類の作成に用いるため

勘定科目は仕訳を通して取引の進捗を記録するために用いられます。会社では日々財貨が取引されており、貸方と借方にその取引の勘定科目と金額を記載しています。その作業を仕訳と言い、決算書類の作成に必要な作業です。勘定科目は利害関係者に公表する決算書類にも用いるため、社内の管理以外にも重要な意味を持つ概念といえます。

②誰でも帳簿の作成と読み取りができるため

勘定科目の項目が定まっていると、誰でも同じ方法で帳簿作成と読み取りができます。もし、「売上」や「売却額」など一人ひとりが異なる勘定科目を設定していると、誤認や適切な分析ができなくなってしまいます。一方、共通の勘定科目を用いていれば、誰でも同じプロセスで帳簿作成が可能です。また、勘定科目は財務諸表の分析にも役立ちます。共通の勘定科目を用いていれば、支出や取引内容の評価がしやすいため経営改善に役立ちます。

③お金の使い方を見直すため

帳簿に記録された勘定科目はお金の使い方を見直すためにも役立ちます。支出が過大な科目があれば、適正な取引が行われていないと分かるためです。例えば、売上額に対して交際費が過大な場合は不要な接待が多く実施されていると疑われ、営業部の課題として可視化できます。また、社外の利害関係者でも勘定科目を確認すれば、安定性や収益性、配当政策の分析が可能です。そのため株主や債権者が経営の適切さを監視し、安定した経営をするよう指摘するためにも役立ちます。

④税金の計算に用いるため

勘定科目は経営や事業運営に関わる税金計算にも用いられます。税金を表す勘定科目は、消費税・事業税・固定資産税などを含んだ「租税公課」や、確定申告の際に用いる「未払法人税等」です。税務と会計は密接に関係しており、会計処理したもののうち、課税の対象となる項目に対して課税されます。そのため勘定科目を用いると、どの費用・収益を課税対象に算入すればよいかが明確になり、適切な税額計算ができます。

勘定科目で実務でよく使われる科目一覧

経理や会計担当でない場合でも、重要性の高い科目名を知っておけば便利な場面が多々あります。以下では、主に実務でよく使われる勘定科目を一覧として記載します。

「資産」に属する勘定科目

資産グループに属する勘定科目は、大きく分けて流動資産と固定資産です。両者の違いは使用期間や現金化されるまでの期間の長短で定義されます。実務で頻繁に用いられる主な資産の勘定科目としては以下が挙げられます。

資産
流動資産
現金 企業が保有する現金またはその同等物
普通/定期預金 会社が銀行に預けてある預金
当座預金 会社同士の取引、決済にのみ用いられる預金
売掛金 売上の回収期日を将来に先延ばしにした売上債権
受取手形 指定の期日までに入金すると約束する売上債権
未収金 売上以外の回収期日を将来に先延ばしにしたもの
商品(棚卸商品) 会社が販売する商品で在庫になっている商品
固定資産
有価証券 株式・債券など金銭的価値を持った証券
備品 机・椅子など会社の備品にかかった金額
土地 本社・工場用地・駐車場など会社が保有する用地の取得にかかったお金
建物 ビル・社宅など会社が保有する建物の価値
ソフトウェア 保有するソフトウェアの価値

「負債・純資産」に属する勘定科目

負債
流動負債
支払手形 指定の期日までに支払うことを約束する支払債務
買掛金 仕入額の回収期日を将来に先延ばした支払債務
未払金 仕入以外の回収期日を将来に先延ばしにしたもの
預り金 税金や社会保険料など従業員から一時預かるお金
固定負債
長期借入金 返済期間1年以上の借入金
社債 企業が発行した借入証書
純資産
資本金 会社を経営するために集めた資金
新株予約券 決まった額で新株の購入を予約できる権利
繰越利益剰余金 毎期分の当期純利益を累積した額
資本準備金 予備の資本金額(資本金に算入しなかった自己資金)

「収益」に属する勘定科目

収益とは企業が稼いだ収入のことです。収益は大きく分けて、売上のほかに営業外収益と特別利益があります。営業外収益は投資や資金運用など、本業ではない活動から得られる収益であり、特別利益は発生機会が比較的少ない収益です。収益に属する主な勘定科目は以下が挙げられます。

収益
売上 本業で自社が提供する商品・サービスの売上金額
営業外収益
受取利息 預金・貸付金から得られる利息
受取配当金 株式投資から得られる配当額
為替差益 外貨購入時の額と現在の為替換算額を比べた際の収益
仕入割引 仕入額に対する割引を受けた際に割安になった額
雑収入 上記以外のどの項目にも分類されない収益額
特別利益
固定資産売却益 固定資産を売却して得られる利益
有価証券売却益 有価証券を売却して得られる利益
保険差益 保険金が下りた際に得られる利益

「費用」に属する勘定科目

費用の分類は、企業の運営にかかる販売費及び一般管理費(販管費)や、本業以外の活動から生じる営業外費用、発生機会の少ない特別損失があります。費用に属する主な勘定科目は以下が挙げられます。

費用
仕入(売上原価) 本業で扱う商品の原料や商材の仕入れにかかった原価
販売費及び一般管理費(販管費)
給料 会社が従業員に支払う賃金給料
水道光熱費 本社や工場などにかかる水道・電気代
交際費 取引先への接待や贈答品にかかる金額
広告宣伝費 事業や商品の広告や宣伝にかけた金額
減価償却費 固定資産の価値減少を費用として計上するための金額
営業外費用
支払利息 借入金に対して支払う利息
為替差損 外貨購入時の額と現在の為替換算額を比べた際の損失
雑損失 上記以外のどの項目にも分類されない出費額
特別損失
固定資産売却損 固定資産を売却した際に発生した損失
有価証券売却損 有価証券を売却した際に発生した損失
保険差損 保険金が下りた際に発生した損失

勘定科目を用いる3つの注意点

使用する勘定科目は自由に設定できますが、会計原則に沿った処理が求められます。勘定科目の使用には、内部管理と外部報告に使いやすい使用が重要です。以下では、勘定科目を用いる際の注意点を3つ紹介します。

①取引に対する勘定科目は企業ごとに決められる

取引に用いる勘定科目は企業側の裁量で決定できます。会計処理を実施する上で、科目は自由に使ってもよい「経理自由の原則」というルールがあります。例えば、消しゴムの記帳に関して「備品」として処理しても「消耗品費」として処理しても構いません。購入頻度が少ない場合は「雑費」として処理されることもあります。ただし、社外に公開しても理解してもらえる科目を選ぶようにしましょう。また、「消しゴム」や「文具」などの一般的でない勘定科目は使用できません。

②一度使った勘定科目を頻繁に変えない

一度採用した勘定科目を頻繁に変更しないようにしましょう。簿記や会計の処理には「継続性の原則」というルールがあります。この原則のもと、継続的に同じ勘定科目を使用して仕訳・決算書類の作成をしなくてはなりません。もし前期まで使用していた勘定科目が突然変わってしまうと、事業や経営の状況が正しく把握できません。前期の数値との比較もしにくくなり、経営成績の期間比較が難化してしまいます。

③報告用の科目と仕訳用の科目は使い分ける

勘定科目は、報告用と仕訳用とで使い分けなくてはなりません。財務諸表は外部に対して報告することを目的に作成されます。そのため一部の勘定科目は、一般的とされる会計原則に沿った正式な形で記載されます。例えば、商品の売上に対して、仕訳時には「売上」として記帳しますが、損益計算書では「売上高」として記載しなければなりません。他にも表示の規則は複数あり、処理のミスが発生しないように、事前・事後の確認をすることが重要です。ソフトで自動化すれば処理を間違えないため、会計ソフトを導入することがおすすめです。

勘定科目を用いて仕訳例を解説

勘定科目は、主に仕訳の際によく用いられる概念です。仕訳の例を確認しておくと、帳簿を通して取引の流れを理解できます。以下では、勘定科目を用いた仕訳の流れを例題にて紹介します。

代金の入金など資産勘定を含む仕訳

【例題】先月発生したA社に対する50万円の売掛金について、本日付けで当社の当座預金へ入金を受けた。

(先月)

借方 貸方
売掛金 500,000円 売上 500,000円

(本日)

借方 貸方
当座預金 500,000円 売掛金 500,000円

売掛金は本来資産であり、資産の増分を示す借方科目です。本日の仕訳では、A社から50万円を受け取れる権利である売掛金が、入金を受けたことで解消されたと示しています。入金を受け資産科目の当座預金が借り方へ入り、手持ちの資産が増えたと分かります。

掛けの支払いなど負債勘定を含む仕訳

【例題】先月発生したA社に対する買掛金に対して、本日現金で50万円を支払った。

(先月)

借方 貸方
仕入 500,000円 買掛金 500,000円

(本日)

借方 貸方
買掛金 500,000円 現金 500,000円

買掛金は本来負債であり、負債の発生を示す貸方科目です。本日の仕訳では、A社から50万円を支払う義務である買掛金が支払いにより解消されたと示しています。同時に、資産科目の現金が貸方へ入り、保有資産が減少していると分かります。

経費など費用勘定を含む仕訳例

【例題】先日の従業員Bの出張に関して、新幹線代5万円と、先方の接待にかかった代金5万円を現金で支払った。

借方 貸方
旅費交通費
交際費
50,000円
50,000円
現金 100,000円

出張旅費は「旅費交通費」、接待にかかる経費は「交際費」の費用科目で仕訳します。どちらも現金での支出であるため、費用の認識と同時にまとめて10万円の保有資産減少として現金を貸方に記帳します。

勘定科目まとめ

今回は勘定科目の意味や実務で使える便利な勘定科目を紹介しました。勘定科目は日々の記帳から決算書類作成まで、会計上重要な概念です。運営側の都合だけでなく、財務諸表を見る側にも配慮した科目を選びましょう。

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

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