キャッシュフロー計算書とは~読み方、分析する方法、直接法と間接法の違いについて解説~

更新日:2021年10月13日

キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書とは、資金の流れを示す決算書です。キャッシュフロー(Cash Flow)とは「キャッシュ=資金・フロー=流れ」を意味しており、略して「C/F」と表記されることもあります。キャッシュフローは、一定の会計期間においてキャッシュイン(収入)とキャッシュアウト(支出)がどの程度あったかを示す指標のひとつです。キャッシュフローを正確に把握することは経営者にとって黒字倒産の防止策にもなります。また、キャッシュフローは、投資先企業の資金状況を客観的に測る指標として投資家に用いられます。

キャッシュフロー計算書とは?

確定申告や経営状態を測るために、すべての企業が決算書を作成します。決算書はいくつかの書類から構成されています。とくに、損益計算書、賃借対照表、キャッシュフロー計算書は重要な書類です。

キャッシュフロー計算書は企業活動を3つに分けて資金の流れを表示します。キャッシュフロー計算書を把握すれば企業が資金不足に陥っていないかを的確に判断できます。また、投資家が有益な情報を得ることも可能です。キャッシュフロー計算書により企業の大小を問わず自社がいくらプラスとしていくら現金が流入し、マイナスとしていくら現金が流出しているか把握できます。資金の流れを追うことができるキャッシュフロー計算書は、事業を活動上で重要な役割を担っています。

【キャッシュフローの算出概念】

キャッシュイン(収入)-キャッシュアウト(支出)=キャッシュフロー

損益計算書や貸借対照表との関係

キャッシュフロー計算書は損益計算書や貸借対照表と連動させることで、より正確な経営上の分析結果を得ることができます。営業活動によるキャッシュフローを損益計算書と連動させれば、売掛金の回収遅延に気づくといった補完的な役目を果たすことができるでしょう。

また、貸借対照表とキャッシュフロー計算書は密接に関係しており、互いの数値が多数直結しています。ただし、貸借対照表は期末時点における資産と負債の状況を示す書類です。前期と比較した資金の流れや発生要因はキャッシュフロー計算書でしか把握することができません。

作成が義務づけられる企業

キャッシュフロー計算書は上場企業に限り作成が義務づけられています。非上場企業は作成の義務はありません。しかし、自社資金の流れを把握するために非上場企業でも作成されています。

会社に入るキャッシュと出るキャッシュの流れを把握していないと、利益が上がっていても倒産してしまう黒字倒産に陥る可能性もあります。経営状態を正しく把握するためにキャッシュフロー計算書作成に取り組みましょう。

キャッシュフロー計算書の読み方

キャッシュフロー計算書は企業活動に伴う収支を3種類の営業・投資・財務に区分して表示します。それぞれのキャッシュフローについて読み解くことで、企業の経営状態を把握・推測が可能です。また「投資活動によるキャッシュフロー」と「財務活動によるキャッシュフロー」の計算方法は同じですが、「営業活動によるキャッシュフロー」は計算方法が異なります。その点についても解説します。

企業の資金繰りが分かる「営業活動によるキャッシュフロー」

営業活動によるキャッシュフローとは営業活動から得た収入を表した項目です。

【主な対象となる営業活動と営業C/Fへの影響】

営業活動 C/Fへの影響
商品やサービス等の販売における現金収入
売掛金の現金回収
現金での商品等の仕入れ
人件費・経費等の現金支出
買掛金の現金支払

営業活動によるキャッシュフローでは現金の売上や売掛金を現金で回収した場合に、キャッシュインフローとして売上計上しプラス(+)要素として示します。マイナス(-)要素となるのは現金の仕入や、人件費・諸経費の支出、買掛金を現金で支払った場合です。算出した結果、営業活動によるキャッシュフローの数値がプラス(+)ならば営業活動が潤滑に進んでいることを示します。一方、マイナス(-)ならば営業活動がうまく機能していない、もしくは資金操りに困難が生じていることを示します。

企業の設備投資状況が分かる「投資活動によるキャッシュフロー」

投資活動によるキャッシュフローとは、企業が自社の発展に向けてどれだけ投資をしたか表すキャッシュフローです。

【主な対象となる投資活動と投資C/Fへの影響】

投資活動 投資C/Fへの影響
有価証券の購入による支出
有価証券の売却による収入
固定資産売却による収入
固定資産の購入による支出

投資活動によるキャッシュフローでは投資を行った際にマイナス(-)要素、投資を売却または回収できた際にプラス(+)要素として示します。また、事業拡大の過渡期や新たに参入したばかりのベンチャー企業である場合、キャッシュフローがマイナスを示す傾向にあります。営業活動によるキャッシュフローに及ぼす影響を計りながら、投資に費やされた資金が回収できる期間について過去の推移を見ながら確認しましょう。

財務バランスが分かる「財務活動によるキャッシュフロー」

企業の財務状況を表す「財務活動によるキャッシュフローは、端的にいうと「銀行などからの借金と返済金、株主への配当金」を表しています。

【主な対象となる財務活動と財務C/Fへの影響】

財務活動 財務C/Fへの影響
借入金による収入 +
借入金返済による支出
配当金の支払による支出

フリーキャッシュフローについて

フリーキャッシュフローとは「自社が自由に使うことができる資金」を指します。省略化して「FCF」と表記されます。フリーキャッシュフローの計算方法は、以下の2通りです。どちらの計算方法を使用した場合であっても、フリーキャッシュフローの数値が大きいほど自社と株主にとって有益に働きます。

【フリーキャッシュフローの計算方法】

「営業活動によるキャッシュフロー」-「投資活動によるキャッシュフロー」 =フリーキャッシュフロー
「営業活動によるキャッシュフロー」-「事業展開維持に向けた投資設備等」 =フリーキャッシュフロー

【主なフリーキャッシュフロー運用先】

  • 株主への配当金
  • 事業拡大に向けた新規事業の投資
  • リスク回避に向けた借入金の返済

上記のようにフリーキャッシュフローがプラスに値していると、将来性を見込んだ資金運用展開ができます。そのため、フリーキャッシュフローの金額は「企業価値」として認識されています。

直接法と間接法の違い

営業活動によるキャッシュフローの計算方法によって、キャッシュフロー計算書の方法は2種類に分かれます。相違点は以下のとおりです。

直接法

  • 収入と支出を取引内容ごとに分けて集計して計算する
  • 間接法に比べ手間と時間がかかる
  • キャッシュフローがどういった理由から増減につながったか詳しく分かる

間接法

  • 税引前の純利益を計算し、そこから非資金損益を足し引きすることで集計して計算する
  • 直接法に比べ手間がかからない
  • 多くの会社で取り入れている

非資金損益は現金を増減させない

非資金損益とは、キャッシュフローを増減させない損益のことです。非損益費用と非損益収益に分かれます。いずれも、間接法でキャッシュ・フロー計算書を作る場合に、税引前当期純利益から非資金損益を足し引きして、営業活動によるキャッシュ・フローを計算します。

非損益費用

非損益費用は、税引前当期純利益に足します。非損益費用といえば、減価償却と各種の引当金(例:貸倒引当金)です。減価償却費は、固定資産を取得したときに資産計上し、その後に償却していくときの費用です。固定資産の取得時にキャッシュフローが減少していますので、減価償却費を計上してもキャッシュフローは減りません。引当金でよく使われる貸倒引当金は、貸倒損失のリスクにそなえて「貸倒引当金繰入」として費用計上します。引当金という名前ですが、キャッシュフローは減りません。このように、キャッシュフローを減少させない費用は、税引前当期純利益に加算することになります。

非損益収益

非損益収益は、税引前当期純利益から引きます。非損益収益といえば、売上債権(売掛金や受取手形)の増加額です。掛取引で売上を計上した場合、代金を回収するまではキャッシュフローは増えません。売上が増えれば利益も増えますが、未回収の売上債権が増えても、キャッシュフローは増えていないのです。このように、キャッシュフローを増加させない収益は、税引前当期純利益から差し引きます。

キャッシュフロー計算書を分析しよう

キャッシュフロー計算書を分析すれば経営状態の把握が可能です。キャッシュイン(収入)の状態を「+」として、キャッシュアウト(支出)の状態を「-」として考えます。例えば、投資の場合はキャッシュアウトにあたるため「-」であり、融資を受ける場合はキャッスインにあたるため「+」となります。このように+とーに分けることで各キャッシュフローがどのような状態にあるか判別可能です。また組合せパターンにより企業の経営状態を分析できます。

優良企業や成長中のキャッシュフロー計算書

企業タイプ 営業C/F 投資C/F 財務C/F
優良企業型
成長企業型

【優良企業型】
しっかりと営業成績を上げ、利益を生み、積極的に投資し借金も少なく、返済も滞っていないことが分かります。安定した財政基盤があり、長期投資の対象になり得ます。ただし、典型的な安定志向の企業だと言い換えることもできます。したがって、チャレンジ精神旺盛な企業への投資を好む人には向いていません。

【成長企業型】
本業で利益を出しつつ積極的に投資し、融資による借り入れがある企業です。この成長企業型は、成長の過渡期に位置している企業であると判断できます。株価急騰のポテンシャルを秘めている企業です。

キャッシュフロー計算書から分かる注意すべき企業

企業タイプ 営業C/F 投資C/F 財務C/F
やや注意型
要注意型

【やや注意型】
やや不安な状況下であり、企業の存続がかかっている恐れがあります。本業の利益が発生しておらず、融資を返済するために企業資産の売却に乗り出している可能性があります。ただし、積極的に先行投資を行っている企業でもあるため、快方に転じることができる企業かどうか見極めが肝心です。

【要注意型】
企業として危機的状況下にあると判断できます。本業の利益が出ていないばかりか借り入れと資産の売却に迫られており、圧倒的に企業運営資金の枯渇に陥っていると推察できます。存続のためには完全なる経営方針の改革と変更を余儀なくされている状況です。

キャッシュフロー計算書は重要

企業キャッシュフロー計算書の見方を把握しておくだけで、企業の経営状態を推測できるでしょう。ただし、すべての企業がキャッシュフロー計算書から予測されたとおりに経営が進むわけではありません。他の決算書や過去の実績、これからの経営目標等を組み合わせて、企業の将来性や安定性を推測することが大切です。

関連記事

この記事の監修者

牛崎 遼 株式会社フリーウェイジャパン 取締役

2007年に同社に入社。財務・経理部門からスタートし、経営企画室、新規事業開発などを担当。2017年より、会計などに関する幅広い情報を発信する「会計ブログ」の運営責任者を継続している。これまでに自身で執筆または監修した記事は300本以上。

無料の会計ソフト「フリーウェイ」

このエントリーをはてなブックマークに追加